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須田景凪が「刹那の渦」に込めた願い 本人インタビューから紐解く、バルーン時代から一貫する表現への眼差し

リアルサウンド

20/12/25(金) 18:00

 須田景凪が、新曲「刹那の渦」のMVを公開した。

 2021年2月3日に発売するメジャー1stフルアルバム『Billow』に収録されるこの曲。「渦を巻く」というアルバムタイトルの持つ意味に照らし合わせて考えても、新作を最も象徴する一曲と言えるだろう。

須田景凪「刹那の渦」MV

 先日筆者が行ったインタビューでは、須田はアルバム制作過程で「最初に思い浮かべていたコンセプトをもう一度考え直さなきゃいけないと思った」と語っていた。COVID-19のパンデミックによってがらりと変わってしまった世界に対して、彼が見たこと、感じたことを、音楽を通して形にする。そういう表現者としての強い欲求が彼を突き動かしたのだという。

「いろんな価値観が表に出てきている。いろんな人がいろんな価値観を見直すことになっている。自分も家にいるときにそういうことを考えざるを得なくて。その中で一番しっくりきたタイトルが『Billow』だったんです。『渦を巻く』という意味なんですけど、今はいろんな状況の中で、いろんな考え方が渦を巻いている状態だと思って。そういうところで、今、形にできるアルバムはこういうものになると思って作っていきました」

 アルバム収録曲の中でも、特にそれが前面に出ているのが、10月に先行配信リリースされている「飛花」と、この「刹那の渦」だ。「失われてしまったもの」を散りゆく花に喩えて描き、疾走感あふれるビートと絞り出すようなシャウトが印象的な「飛花」。過去を振り返る描写が気だるい浮遊感のある曲調とあいまって不思議な余韻を残す「刹那の渦」。この2つは、同じモチーフをもとにした、いわば呼応する関係を持つ2曲になっている。

「聴いた人の解釈におまかせはするんですが、『飛花』はコロナの影響を受けて、コロナに関して思うことを書いた曲です。いろんなものが崩れてしまって、いろいろなことを考え直す必要があった。その考えを全て詰め込もうと思って書きました。意思表明のような位置づけになったかもしれないと思います。『刹那の渦』に関しては、『飛花』よりも冷静にアルバム全体やいろんな状況を俯瞰で見ながら書いた気がします。表題曲と言っていいかはわからないですけど、すごく意味のある曲だと思います。『飛花』の時は、なるべくそういう感情は入れないようにしてたんですけど、どうしても『この世界が悪い方向に変わってしまっていることがすごく悲しい』みたいな気持ちが含まれていたかもしれなくて。『刹那の渦』に関しては、いつか状況が落ち着いた時に今の状況が思い出になることを願っているようなところがあると思います。渦中が過ぎたあとに聴いたら意味があるんじゃないかなと思って書きました」

 〈嗚呼 いつまでも後悔と愛憎が渦を巻いて この牙の矛先を探し彷徨って歩いている〉という「刹那の渦」の歌詞のフレーズもとても印象的だ。他にも〈魔物にでも獣にでもなろう〉と歌う「ゆるる」など、“獣”や“牙”や“爪”といったモチーフがアルバム『Billow』には頻出する。

「昔から少しずつ使っているモチーフではあるんですけど、2016年くらいからずっと思ってることがあって。自分はもともと、根本的なところで『常識を持っていなければならない』とか『いい人でなければならない』とか『誠実でなければならない』とか、いわゆる素晴らしい人間像みたいなものに対しての疑いのようなものを抱えて生きてきた気がするんです。果たしてそれが正義なのか、と。2016年の頃は主にVOCALOIDを軸に活動していたんですけど、その時はまだ事務所にも所属しなかったし、一人きりで活動していて、仕事も少しずつもらえるようになって。自分の中でキャパがいっぱいになって、人生で初めてぐらい肉体的にも精神的にも限界を迎えてしまった時があった。その時にすごく思ったことで、いろんなものを我慢したり、正しさのもとで生きていったり、いわゆる一般的な人間らしさみたいなことを考えていたら、自分は生きていけないなと考えたことを今でも覚えているんです。自分の中では、命の在り方として、獣のような生き方が一番美しいなと思うんです。ただ単に好きなことをやっているという意味ではなく、自分の信じるものに従順に、本能のままに生きるというか。そういうことをしようと決めたことを今でも覚えていて、自分の中で使う『獣』という言葉は、そういうイメージを持つものが多いんです。本当に大切な何かがあったら、人目なんて気にしていられないというか。そういう意味が含まれている言葉です」

 「バルーン」の名でVOCALOIDを軸に活動していた頃も、映画やドラマ主題歌を数多く手掛けシンガーソングライターとして活躍する今も、「獣のような生き方が一番美しい」という彼の価値観は何も変わっていない。先日には、バルーン名義でボーカロイドflower が歌うバージョンのMVも公開された。2017年6月の「レディーレ」から約3年半ぶりとなるボカロ曲となる。

刹那の渦/flower

 MVを手掛けたのはこれまで須田景凪の数々を手掛けてきた盟友とも言えるイラストレーター/映像作家のアボガド6だ。

 アルバムのアートワークも、アボガド6が大きな役割を果たしている。ブックレットにはアボガド6が各楽曲をイメージして描き下ろしたイラストが収録され、その全てがうねり渦のようになったデザインが施されたビジュアルがジャケットになっている。

「そもそも、この『Billow』というタイトルの通り、いろんな思想やいろんな価値観を曲にしようと思って書いたアルバムなので、ひとつの曲に対して一つのキャラクターを描いていただいたんです。今回のテーマとして、同じ物事にもいろんな捉え方があるというものがあって。ブックレットのアートワークでは1曲ごとにキャラクターのイラストがあるんです。ある動物とある物体が合体して新しい生物になっていたりするような、いろんなモチーフを二人で話し合いをしながら描いてもらっていって。で、デザイナーさんにお願いして、ジャケットはその15体を全て一つにして、渦にしてもらいました。それがジャケットとして一番あるべき形だと思って、作ってもらいました。アボガド6さんのアートワークを見ることによって腹に落ちる部分があると思うので、一緒に見ながら聴いてもらえれば、もっと楽しめると思います」

 アルバム収録曲をいち早く聴かせてもらった身から言うと、優しいメロディを漆黒の低音が塗りつぶす「Vanilla」を筆頭に、他にもゾクゾクするような興奮をもたらしてくれる曲は多い。「はるどなり」や「Alba」などすでに発表されている曲も多く収録されているが、新たなクリエイティブの扉が開いた一枚であるのは間違いない。

 考えてみれば、コナン・グレイ、アーロ・パークス、ボーイ・パブロ、サブ・アーバンなど、新世代の “ベッドルーム・ポップ”の潮流がここにきて世界的にも勃興している。須田景凪も、期せずして、その一翼を担う存在と言えるかもしれない。

■リリース情報
『Billow』
2月3日(水)リリース
配信リンク

須田景凪「刹那の渦」配信リンク

初回生産限定盤
CD+DVD+80Pアートブック
三方背BOX・デジパック仕様
価格:¥4,800(+税)

通常盤
CD Only
価格:¥3,000(+税)

WMD盤 ※受注生産限定
CD+DVD+アートリリックパズル+カラビナキーホルダー
*豪華BOX仕様
価格:¥6,900(+税)
受注期間終了

<CD収録曲>
1.Vanilla
2.飛花
3.刹那の渦
4.Alba 
5.veil 
6.Carol 
7.メメント
8.MUG
9.迷鳥
10.風の姿
11.MOIL 
12.はるどなり 
13.welp
14.色に出ず
15.ゆるる 

[DVD(初回生産限定盤&WMD盤)]
Live Video
須田景凪 ONLINE LIVE 2020 “催花”
1.couch
2.メーベル
3.パレイドリア
4.MUG
5.Carol
6.MOIL
7.シャルル
8.veil
9.Alba
10.飛花

Exclusive Live Video
1.はるどなり
2.青嵐
3.ゆるる

Music Video
1.パレイドリア
2.veil
3.MOIL
4.はるどなり
5.MUG
6.Alba
7.Carol
8.飛花

<先着購入者特典情報>
TOWER RECORDS(オンライン含む、一部店舗除く):「飛花 -Rearranged ver.-」CD
ヴィレッジヴァンガード:「Alba -Rearranged ver.-」CD
楽天ブックス:「はるどなり -Rearranged ver.-」CD
amazon.co.jp:メガジャケ
HMV(HMV&BOOKS Online含む/一部店舗除く): A4アートクリアファイル(HMV ver.)
アニメイト(オンライン含む):A4アートクリアファイル(アニメイト ver.)
TSUTAYA RECORDS(オンラインは予約分のみ):A4アートクリアファイル(TSUTAYA RECORDS ver.)
サポート店:A4アートクリアファイル(サポート店 ver.)
サポート店 店舗一覧:https://wmg.jp/suda-keina/news/85872/
※特典は無くなり次第終了
※特典の有無は各店舗にて
『Billow』先着購入者特典:サポート店 店舗一覧

『Billow』特設サイト

■ツアー情報
『須田景凪 HALL TOUR 2021 “Billow”』
2021年2月11日(木・祝)
福岡:福岡国際会議場 メインホール
OPEN 17:00 / START 18:00
INFO:BEA 092-712-4221

2021年2月25日(木)
愛知:愛知県芸術劇場 大ホール
OPEN 18:00 / START 19:00
INFO:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100

2021年3月7日(日)
大阪:フェスティバルホール
OPEN 17:00 / START 18:00
INFO:キョードーインフォメーション 0570-200-888

2021年3月12日(金)
東京:LINE CUBE SHIBUYA
OPEN 17:30 / START 18:30
INFO:SOGO TOKYO 03-3405-9999

プレイガイド一般発売:1月9日(土)
チケット代:4,800円
(税別・ドリンク代別・指定席)

■関連リンク
須田景凪公式サイト
須田景凪/バルーン Twitter
須田景凪/バルーン スタッフTwitter
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