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伊藤沙莉、福田麻由子が“女子会あるある”を繰り広げる 『蒲田前奏曲』で自分を見つめ直す

リアルサウンド

20/9/25(金) 20:00

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、蒲田住みを一瞬だけ視野に入れたことがある大和田が『蒲田前奏曲』をプッシュします。

『蒲田前奏曲』

 中川龍太郎、穐山茉由、安川有果、渡辺紘文といった日本映画界の若手実力派の4人の監督によって、1つの連作長編として制作された本作は、売れない女優マチ子の眼差しを通して、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を描いていきます。監督が各自の手法で、マチ子と周囲の人々との交わりを介在しながら、皮肉をコミカルに描き、1つの映画で4人それぞれの作風が楽しめる作品に仕上がっています。

 本作でマチ子役を務めると同時にプロデュースを手がけている松林うららは、監督それぞれに、お願いしたいテーマ、マチ子のキャラクターの説明、蒲田を使ってほしいというお題だけを提示。監督たちは、脚本のすり合わせを全くせずに、マチ子という主軸が全ての話に通じるという形になりました。ここでは、4編の中でも特に印象に残った「蒲田哀歌」「呑川ラプソディ」を紹介していきます。

 第1番「蒲田哀歌」は、『四月の永い夢』『わたしは光をにぎっている』『静かな雨』などを手がけた中川龍太郎監督による作品です。オーディションと食堂でのアルバイトの往復で疲れ果てている売れない女優・マチ子が、ある日、彼氏と間違われるほど仲の良い弟から彼女のセツ子(古川琴音)を紹介されショックを受ける。しかし、その彼女の存在が、女として、姉として、女優としての在り方を振り返るきっかけになっていきます。

 インタビュー手法を取り入れ、ドキュメンタリー映像のようにも進む画面には、登場人物たちのありのままの姿が映し出されていきます。彼らがカメラの前で淡々と零す言葉にはどこか詩的さが漂います。また、蒲田の街並み、蒲田で暮らす人々を丁寧に捉え、移り変わりゆく街並みを記録していた映画『わたしは光をにぎっている』の時にも感じた、今と昔を繋いでいく中で、本編のテーマに迫っていく、中川監督作品ならでは映像構成の奥深さを堪能できます。

   そして長編デビュー作『月極オトコトモダチ』がMOOSIC LAB 2018 長編グランプリを受賞を果たした穐山茉由監督による、第2番「呑川ラプソディ」。本編は、マチ子が大学時代の友人5人と久々に女子会をするが、独身チームと既婚チームに分かれ、気まずい雰囲気に。そこでマチ子は蒲田温泉へ行くことを提案し、5人は仕事、男性のことなどを話し合い、次第に隠していたものが丸裸になっていくという物語。本作で、伊藤沙莉と福田麻由子が同級生役で『女王の教室』(日本テレビ系)以来の共演を果たしました。

 主婦や独身、結婚間近……とかつては学校という同じ場所、似た環境、状況下にいた面々だからこそ、今はそれぞれ己の道を歩んでいる5人により際立って感じるズレ。理解できずに戸惑う多種多様な“価値観”、時代、社会によって変わる“普通”。5人の中の、自分は誰に近いだろうか?と考えながらつい観てしまいます。そして自分だったら、相手をどう受け入れていくか、考えるきっかけをくれる作品です。

 中川監督は「大過去」、穐山監督は「現在」、安川監督は「過去、トラウマ」、渡辺監督は「未来」と、それぞれの作品にサブテーマが存在します。女性を取り巻く社会を映し、同じ題材、舞台、主人公をもとに、違った物語で紡がれる本作は、改めて自分を見つめ直すきっかけになるはずです。

■公開情報
『蒲田前奏曲』
ヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森にて公開中
10月16日(金)より、テアトル梅田で公開、ほか全国順次公開予定
出演:伊藤沙莉、瀧内公美、福田麻由子、古川琴音、松林うらら、近藤芳正、須藤蓮、大西信満、和田光沙、吉村界人、川添野愛、山本剛史、二ノ宮隆太郎、葉月あさひ、久次璃子、渡辺紘文 
監督 ・脚本:中川龍太郎、穐山茉由、安川有果、渡辺紘文
配給:和エンタテインメント、MOTION GALLRY STUDIO
企画:うらら企画
製作:「蒲田前奏曲」フィルムパートナーズ(和エンタテインメント ENBUゼミナール MOTION GALLRY STUDIO TBSグロウディア)
特別協賛:ブロードマインド株式会社 日本工学院
2020年/日本/日本語/117分/カラー&モノクロ/Stereo
(c)2020 Kamata Prelude Film Partners

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