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北村有起哉は観る者の身体に侵食する役者だ 映画やドラマで増す中毒性

リアルサウンド

21/2/13(土) 6:00

 役者・北村有起哉をして、二世俳優というくくりで考える人は、限りなく少ない。一定の年齢以上ならば、北村を見て、北村の父であり、文学座の看板俳優であった故北村和夫を思い起こし、「なんだか、どんどんお父さんの声に似てくるなぁ」としみじみこそすれ、それ以上でもそれ以下でもない。まったく別に、それぞれを評価しているはずだ。現在、46歳。北村の中毒性が、年々増している。

『アンナチュラル』でキーパーソン、『エール』では後半戦のMVP

 1998年、舞台『春のめざめ』、映画『カンゾー先生』で役者デビューした北村。特定の劇団には所属しないスタイルをとりつつ、コンスタントに舞台に立ち続け、役者としての力量を備え、『CLEANSKINS/きれいな肌』『BENT』といった代表作を積み上げていく。同時に、映像の世界でもキャリアを積んでいった。ドラマでは『SP』(フジテレビ系)でのテロリスト、『警視庁 失踪人捜査課』(朝日放送テレビ)の熱血刑事、『黒服物語』(テレビ朝日系)での謎めいた会長、『トッカン 特別国税徴収官』(日本テレビ系)、『駐在刑事』シリーズ(テレビ東京系)、大河ドラマ『八重の桜』(NHK総合)、時代劇『ちかえもん』(NHK総合)、連続テレビ小説『わろてんか』(NHK総合)、大河ドラマ『西郷どん』(NHK総合)ほか、そして映画では主演を務めた『太陽の蓋』をはじめ、『オーバー・フェンス』などで印象を残していく。

 記憶に新しいところでは、ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の記者・宍戸。もともと一癖ある役柄を演じることに長けた北村だが、ここでの宍戸は、本当にいやらしい人物だった。ただの悪に見えれば、こちら側も拒絶してしまえばそれまで。しかしどこかに窪田正孝演じる六郎が、隙を見せてしまう空気を持っていた。そして窪田と再びガッツリ組んだ昨年の連続テレビ小説『エール』(NHK総合)。こちらでは作曲家・古関裕而をモデルとした古山裕一(窪田正孝)が、自らの戦争体験と、多くの人たちを自分の音楽によって戦争に駆り立ててしまったことへの責任を感じ、罪の意識でつぶれそうになっていたときに現れた。劇作家・作詞家の菊田一夫がモデルの池田二郎をパワフルに演じ、「後半戦のMVP」と人気を博す。菊田は裕一だけでなく、裕一の幼なじみで歌手の佐藤久志(山崎育三郎)、作詞家の村野鉄男(中村蒼)、そして視聴者の懐にもすっと入ってみせた。

 ほか昨年は、土佐弁でイキりながら、どこか残念で愛嬌のある刑事役を軽やかに演じたドラマ『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)や、短編かつわずかな出演でも、口は悪いがハートは熱い先輩役を演じてみせた『悲熊』(NHK総合)ほか、映画では、震災にも目を向けた笑いと涙あふれる家族ドラマ『浅田家!』や、石井裕也監督の意欲作『生きちゃった』、メ〜テレによるドラマ・劇場版ともに『本気のしるし』に出演。それぞれの作品を支えた。

 2021年に入ってまだ2カ月目の現在は、ドラマ『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(テレビ朝日系)、映画『ヤクザと家族 The Family』、そして映画『すばらしき世界』も公開となった。

土曜の夜にクスっと笑わせる曲者トリオを牽引

 土曜夜に放送中の『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』は、大河ドラマ『龍馬伝』や、連続テレビ小説『まんぷく』、ドラマ&映画の『海猿』『HERO』『ガリレオ』シリーズ(全てフジテレビ系)などを手掛ける脚本家・福田靖によるオリジナル作品。

 千載一遇のチャンスが舞い込んだ、売れない脚本家で主夫の圭佑(生田斗真)を軸に繰り広げられる本作。北村が演じるのは、ベストセラー作家の妻(吉瀬美智子)と子どもたちのために家事を担ってきた圭佑に、ゴールデンドラマの脚本執筆を依頼するドラマプロデューサーの東海林だ。圭佑の才能を買ったのではなく、もともと決まっていたメインライターの降板から、急遽、圭佑に声をかけたこともあり、「明日までにストーリー案、考えてきて!」と、初っ端からひどい無茶ぶりを繰り出し続ける。第4話では圭祐の手掛ける劇中ドラマである、人気俳優(岡田将生)主演の学園ヴァンパイアもの『富豪教師Q』の放送がスタートしたが、追い詰められる圭祐を前に、東海林Pが、軽さだけではない、仕事人としての顔を見せる一面もあった。

 人気脚本家の福田が、売れない脚本家を主人公に、勝手知ったるフィールドでフィクションを楽しんでいる本作。北村も、東海林Pをとても楽しそうに演じてる。小池徹平演じる監督と長井短演じるプロデューサー補との曲者トリオによる、息ぴったりのあり得なさ加減が絶妙で、話を重ねるごとに、曲者トリオの登場がクセになりそうだ。

ひとりの人間としての弱さ、痛み、苦しみをキリキリと切なく

 リラックスタイムに放送中の『書けないッ!?』とはガラリと変わり、現在公開中の映画『ヤクザと家族 The Family』での北村は、ヤクザの若頭・中村を演じて、観る者の心に残り続ける。本作は、北村とは『新聞記者』でも組んだ藤井道人監督が、今の時代に生きるヤクザを見つめた骨太なヒューマンドラマ。舘ひろし演じる、自分を受け入れてくれたヤクザの組長・柴咲と父子の契りを結んだ、綾野剛演じる主人公・賢治の生きざまを、20年にわたり、3章に分けて描いていく。

 ある事件により、14年間の刑務所暮らしを終えて出所してきた賢治。塀の外では、暴力団対策法が施行されており、柴咲組も大きな影響を受けていた。家族のような繋がりを見せる柴咲組にあって、若頭の中村は、柴咲の女房といえる存在だ。「ヤクザの若頭を演じる、北村有起哉ね。それは似合うでしょ」などと簡単に想像してはいけない。中村からは、常に柴咲を支え、柴咲組という家族を崩壊させないために、強く立ち続けようとしているが、実はとても弱いひとりの人間の痛み、苦しみがキリキリと伝わり、切なさで胸を締め付ける。どのキャストも素晴らしい本作だが、北村の秘めたパワーにガッシリ掴まえられてしまう。中心として描かれないからこそ、中村の人生が気になって仕方のない人は多いはずだ。

ちょっとしたスパイスを振りかけ、ならではの熱を潜ませる

 『ゆれる』『永い言い訳』の西川美和監督が『復讐するは我にあり』を代表作に持つ、小説家、ノンフィクション作家の佐木隆三の小説『身分帳』を原案に映画化した『すばらしき世界』も、ヤクザ者を主人公にした人間ドラマだ。役所広司演じる元ヤクザで、人生のほとんどを刑務所の中で暮らしてきた三上が、外の世界で、市井の人として生きようともがいていく。ここでの北村は、弾かれる側ではなく、“社会”側の人間。福祉事務所のケースワーカー・井口として登場する。当然だが、ヤクザ風の匂いは微塵もない。主人公を取り巻く人として、元ヤクザの男の生活をネタにしようと近づきながら、三上の、完ぺきではないからこその人間性に触れ、絆を育んでいくテレビマンの津乃田(仲野太賀)、身元引受人の弁護士・庄司(橋爪功)、何かと気にかけてくれるスーパーマーケットの店長・松本(六角精児)、そして北村演じる井口らが登場し、交流を重ねていく。

 『ヤクザと家族 The Family』と同様、一度道を外してしまった男を受け入れない“社会”が映し出されるが、ここでは、そうした社会に属しながらも、はみ出てしまった男を受け入れてくれる“人”“個”はいることが描かれる。そして観客はラスト、『すばらしき世界』というタイトルを考え続けることになる。

 ヤクザ、刑事、テロリストにフリー記者etc.。北村は、さまざまな役を、ちょっとしたスパイスを振りかけて、北村ならではの熱を潜ませながら演じてきた。その場の空気を、作品のすべてを支配する演技とはまた違うが、その熱がどんな方向に放たれようと、作品のベースに入り込み、観る者の身体に侵食してくる。役者・北村有起哉、その中毒性にハマる人が、ますます増えていくに違いない。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■放送情報
『書けないッ!? ~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30~0:00放送
出演:生田斗真、吉瀬美智子、菊池風磨(Sexy Zone)、小野武彦、梅沢昌代、山田杏奈、潤浩(ユンホ)、北村有起哉、小池徹平、長井短、浜野謙太、岡田将生
脚本:福田靖
演出:豊島圭介、YUKISAITO
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
チーフプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)、尾花典子(ジェイ・ストーム)、宮内貴子(角川大映スタジオ)
制作:テレビ朝日、ジェイ・ストーム
制作協力:角川大映スタジオ
(c)テレビ朝日

■公開情報
『ヤクザと家族 The Family』
全国公開中
監督:藤井道人
出演:綾野剛、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗、菅田俊、康すおん、二ノ宮龍太郎、駿河太郎、岩松了、豊原功補、寺島しのぶ、舘ひろし
プロデューサー:河村光庸
制作:スターサンズ
配給:スターサンズ、KADOKAWA
(c)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
2020年/日本/136分/5.1ch/ビスタ/カラー/デジタル
公式サイト:yakuzatokazoku.com

『すばらしき世界』
全国公開中
出演:役所広司、仲野太賀、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、長澤まさみ、安田成美
脚本・監督:西川美和
原案:佐木隆三著『身分帳』(講談社文庫刊)
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
公式サイト:subarashikisekai-movie.jp

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