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King Gnuが見せつけた、熱量剥き出しのロックバンドとしての佇まい 時代を根から揺らす初武道館ワンマンをレポート

リアルサウンド

20/12/7(月) 0:00

 King Gnuのライブにある熱っぽい空気が好きだ。バンドの演奏を前にした観客が「今、すごいものを目撃している」という実感を得る。そこからさらに「近い将来、もっとすごいものを目撃することになる」と予感する。ハイになった誰かの上げた声や歌が複数集まり、歓声やシンガロングになる。曲が始まるたびにわあっと歓声が上がり、シンガロングが会場の温度をさらに上げる。こういった具合に、King Gnuのライブでは、「彼らと同じ時代に生きている」という目撃者の興奮がいつも会場を覆っている。

King Gnu

 11月25日、日本武道館2デイズの2日目。本来は今年2月からスタート予定だったが、一部の公演を中止したり、一時は全面的に開催を見合わせたり、その分、振替公演や追加公演を設定したり……と、細かい調整を重ねながら、ようやく実現した全国ツアーの一公演。感染症対策のため、観客が発声できない今の状況では、熱狂の立ち上がり方はかつてと違っていたが、熱源がステージであることには変わりなかった。本編中、MCは一度のみ。ひたすらに4人の演奏で観客の視線を惹きつける、ストイックなライブだった。シンガロングは起こらずとも、観客はそれぞれリズムに合わせて身を揺らしたり、ステージをじっと見つめたりしながら、バンドの演奏を楽しむ。その視線の熱さはメンバーにも伝わったらしく、前半11曲の演奏後、井口理(Vo/Key)は「いいバイブス出てきてますね。みなさんの熱さと温かさにあてられて、集中できるというか。楽しくできてます」と語った。MCは、普段のような飾らないテンションではなく、井口と新井和輝(Ba)が(個人的な話ですが、と前置きしながら)武道館のステージに立つにあたっての想い、恩師への感謝などを言葉にする。今日はMCですらも真っ向勝負だ。

 セットリストはアルバム『CEREMONY』収録曲だけでなく、これまでのディスコグラフィを網羅したもの。例えば、「破裂」が常田大希(Vo/Gt)のギターのみのアレンジになっているなど、音源とは異なるライブアレンジもふんだんに。加えてステージ上では、一人のプレイに誰かが呼応し、という演奏上での化学反応が次々と起こっていく。また、アンコールでは、12月2日リリースのシングル収録曲で、現在ドラマ『35歳の少女』主題歌としてオンエア中の新曲「三文小説」を披露。緊張感を伴いながら、光へ向かい、やがて溢れ出すこの曲は、ライブだとなお映える。そのドラマティックさゆえ歌劇のような感触があり、観る側の集中力も引き出される。

 こうしてライブを観ていると改めて思い知らされる。King Gnuは、極めて特異なバンドだと。

 まず、たった4人にも関わらず、広い会場を豊かに鳴らす交響楽団のような佇まいをしている。特に印象に残っているのは「Hitman」の厳かさ。常田が鍵盤で鳴らすピアノ風の音色と井口が鍵盤で鳴らすオルガン風の音色が重なり、上物がグッと厚くなるのだが、それを支えるリズム隊も頼もしい。神々しいサウンドに、この2日間がKing Gnuにとって初の武道館ワンマンである事実を忘れそうになるほどだった。そして、熱量を剥き出しにするロックバンドとしての佇まいが人々を熱狂させる。「Teenager Forever」はまさにその象徴だ。さらに、楽曲には、歌を堂々と響かせる歌謡曲としての佇まいも。井口の歌は年々存在感が増しているため、あえて“歌手”と呼びたくなる感じがある。特に「Vinyl」や「The hole」における歌唱は素晴らしく、中音域のふくよかさに進化を見た。加えて、ブラックミュージックやジャズから、腰から揺らすグルーヴや即興芸術の感性も吸収。それら多様な要素から成るマーブル模様の構成比が曲ごとに変化していく。

King Gnu

 こんなバンド、他にいるだろうか。本編ラストに演奏された「Flash!!!」はライブで何度も演奏されてきた曲だが、いつ観ても刺激的だ。サンプリングパッドを駆使しながら勢喜遊(Dr/Sampler)が放つビートは一聴すると無定形だが、新井のベースや常田のギターがそこに絡むうちにテンポが生まれ、イントロへとなだれ込む。目が眩むほどの激しさで照明が明滅するなか、ときにはユニゾンで、ときには掛け合いで、声を張り合うツインボーカル。エキセントリックな音色のギターソロ。アウトロではもう一山生まれそうな雰囲気にもなる。最後まで何が起こるのか分からない空気を漂わせながら、振り返らずに、走り抜けるように本編を終える。アンコールを含めても演奏時間は2時間弱という潔さ。客席に取り残された私たちの手元には、やはり「今、すごいものを目撃している」という実感、「近い将来、もっとすごいものを目撃することになる」という予感が余韻とともに残る。私たちはとんでもないバンドとともに生きている、という高揚と畏怖が。

 乗りに乗っているこのバンドの前にも、武道館の魔物は例外なく現れ、途中には常田のギターの音が出なくなる場面もあった。しかし勢喜と新井が即興セッションで繋いでいる間、いつの間にかギターも復活。4人揃って次の曲に臨んだ。トラブルをトラブルと感じさせないナチュラルさ、鮮やかさにも、このバンドの「まだ化けそう」という余裕、底知れなさが表れていたように思う。規格外でありながら時代を根から揺らす、このバンドの凄まじさを見せつけられたのだった。

King Gnu

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

■見逃し配信情報
『King Gnu Live Tour 2020 AW “CEREMONY” Tour Final in Makuhari Messe』
見逃し配信期間:見逃し配信公開から~12月8日(火)23:59まで
※見逃し配信公開までは、 しばらくお時間をいただく場合がございます
チケット販売期間:12月8日(火018:00まで
チケット料金:3,500円(税込)
チケット販売ページはこちら

■放送情報
M-ON! LIVE King Gnu『King Gnu Live Tour 2020 AW “CEREMONY”』
放送日時:12月26日(土)20:00~22:00
『King Gnu Live Tour 2020 AW “CEREMONY”』から11月25日の日本武道館公演をMUSIC ON! TV(エムオン!)にて独占初放送

■リリース情報
Double A Side NEW SINGLE 
『三文小説 / 千両役者』
発売ゆう
【Blu-ray Disc付き初回生産限定盤】3900円+税 BVCL 1110 / 1111
【通常盤】1000円+税 BVCL 1112 

<CD収録内容> ※初回・通常共通
01.三文小説(日本テレビ系 土曜ドラマ『35歳の少女』主題歌)
02.千両役者(NTTドコモ 5G「希望を加速しよう2nd篇」CMソング)

<初回生産限定盤 特典Blu-ray Disc
King Gnu Live Tour 2019 AW 2019. 10. 22 日比谷野外大音楽堂(約90分収録

■配信情報
「三文小説」
ダウンロード / ストリーミングはこちら

「千両役者」
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King Gnu 公式HP

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