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『呪術廻戦』第20話は“色”に注目! 五条悟と東堂葵、メンターとしての違いとは

リアルサウンド

21/2/27(土) 12:10

 現在『週刊少年ジャンプ』で連載中、芥見下々原作のアニメ『呪術廻戦』(MBS/TBS系)。2月26日に放送された第20話「規格外」ではついに東堂葵の術式が開示され、特級呪霊・花御との戦いも大詰め。校内では真人の仲間である呪詛師と高専側が睨み合う中、戦いに五条悟がケリをつけた。

 第19話「黒閃」は、MAPPAの作画威力の真骨頂を見せられたと言っても過言ではない“神回”だったが、今回もそれに負けず劣らずであった。前回の加茂・伏黒・狗巻戦から伏黒・真希戦、そして東堂・虎杖戦にかけて室内から屋内へと全体的に移動が多く、フィールドを広く使ったものだった。だからこそのダイナミックな、まるで映画のような映像表現に魅せられたが今回は打って変わって東堂の術式「不義遊戯(ブギウギ)」の細かな入れ替わりと二人のコンビネーションファイトを魅せる、ミニマルだがディテールの細かいアクションシーンが描かれた。

 「不義遊戯」は一定呪力を持つものであれば、それが生物でも無生物でも位置をすり替えることができる術式。交換する対象は決して、術式保持者と何かというわけでもなく、シンプルだが非常に応用の効くものだ。そのスイッチシーンはやはりアニメーションで見る方が、何が起きているのかわかりやすく、躍動感が映える。アニメで映える術式といえば、実際に聞こえるギターサウンドがあってこその楽巌寺学長の術式、奏でた旋律を増幅させ呪力として撃ち出したものも今回登場した。しかしどうしても、その後の一人の男の術式を見てしまうと、印象がかなり薄くなってしまうものだった。ご尊顔も呪力も規格外の男、五条悟だ。

 先ほど、今回の動きがより細部を意識したものだったことに触れたが、“色”というディテールにもこだわりのある回だった。まずは虎杖が4連続も打ち出すことのできた「黒閃」。前回初めてお披露目されたそれは、黒と赤の閃光として描かれる。そして東堂の「不義遊戯」も、手を叩いた瞬間画面全体が白くなることで、何と何が入れ替わったのか画面の向こうの私たちにも一瞬わからない仕組みになっている。そして、花御が大地から呪力を吸収するシーン。周囲の草木が緑から灰色に変わる色によって、モノクロの漫画ではわかりづらかった“生命力の枯れ”がしっかり描かれていた。何よりも、術式そのものが“色”である、術式順転「蒼」と術式反転「赫」が合わさった虚式「茈」のアニメーションは凄まじいものだった。そして五条悟自身も、その瞳の書き込みは異常なぐらいきめ細やかで、空を閉じ込めたような色が美しい。技を間近で見ている虎杖の顔も、ただの紫色になっているのではなく、あくまで赤と青が混在した色に照らされているのが、やはり細かい。

五条悟と東堂葵、虎杖のメンターとしての違い

 花御や呪詛師が注意を引く間、手薄な警備になったところを狙った真人に宿儺の指を奪われてしまった。そんな状況でも、最強の五条が唯一、今回の襲撃で手放しに喜べることがあるとしたら、それは虎杖の成長ぶりだ。大幅に呪力が増幅した彼を見つけ、その横に東堂がいることから「葵とは相性がいい」と納得する。

 なぜ、虎杖と東堂は相性がいいのか。もともと、二人は同じ近接型で体術をメインにした、言ってしまえばゴリラみたいな戦い方をする点では似ている。しかし、それ以上に東堂は虎杖を高みに導く先輩として五条よりも適任だったのだ。

 振り返ること、東堂葵の幼少期回想シーン。彼は自分が小学3年生であろうと、年齢差というものを一切気にせずに、勝てるなら勝つという考えの持ち主だった。血の気も多く、普段からなめてきた相手には片っ端から拳を振り上げていたことだろう。そんな彼の目の前に現れた女、九十九由基。東堂が伏黒や虎杖に投げかけた「どんな女がタイプか」という質問の原点が彼女であったことが明かされ、九十九が彼にとってのメンターだということもわかった。本来祓うべき呪霊を従えている女。年齢差という固定概念を無視した東堂少年が、呪術師としてはアナーキーな彼女の言うことに聞く耳を持ったことは、決して不思議ではない。そして、吉野順平のエピソードでも描かれたが、虎杖もまたそういった“普通”みたいなものに同調するのではなく、“自分がどう思ったか”ということを信じるタイプである。だから、二人は好みの女だけでなく、そういった思考や己の哲学的にも似ているのだ。

 そして、東堂は一見ただの変態に見えて(それは決して間違いではないが)とにかく頭が切れる。自称IQ53万も、まんざら嘘ではないのかもしれない。すぐに体を動かす直感というセンスが抜群にある中で、その直感を裏付けるロジックがしっかりしているのだ。対して虎杖は、まだ直感だけの部分がある。前話でようやく呪力の“味見”をした、見習いコック状態なのだ。高専に入学してすぐに“死んでしまい”、授業を通して呪術の基本的な知識を身につけられていない彼のことだから、無理もない。

 死んだことにして隠れていた時、虎杖は五条の特別レッスンを受けていた。それは基礎的で、ある意味より直感的な呪力のコントロール方法を身につける趣旨のもの。五条の教えを受けるには、少しまだ早い段階だったのだ。なぜなら、 “最強”すぎて彼自身、基礎的なことを教えるのが難しいからではないだろうか。よく、ちゃんと説明していない節もあるし(七海談)。虎杖がさらなる高みに上がるために必要だったのは戦闘の動きにおけるロジックであり、その点ロジックなんてものが存在しない程強い五条よりも東堂の方が敵役だったわけだ。そのおかげで、虎杖は黒閃を4発連続で打てるほどコツを掴んだのである。ただのゴリラより、思考するゴリラの方がよほど強い。

 とにかく、五条=最強という結論で幕を閉じた20話。花御が祓えたかどうかが重要ではなく、なぜ彼が呪霊に恐れられている存在であるか、その力を刮目することが目的だった。ちなみに花御は帳が上がったとしても、そのまま領域展開で二人を巻き込めばよかったと思うかもしれない。しかし、帳への侵入は意外と簡単であること(真人戦で虎杖が証明)、そして五条が侵入した時点で、領域内の呪力の押し合いになると負けが確定しているため花御は瞬時に逃げることを選択したのだ。それほどまでに、五条は強い。

 襲撃によって中断された京都姉妹校交流会。決着は来週、野球の試合で決まる。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。InstagramTwitter

■放送・配信情報
『呪術廻戦』
MBS/TBS系にて、毎週金曜深夜1:25〜放送中
Amazon Prime Video、dTV、Netflix、Paravi、U-NEXTほかにて配信中
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:朴性厚
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
副監督:梅本唯
美術監督:金廷連
色彩設計:鎌田千賀子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:兼田美希、木村謙太郎
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:堤博明、照井順政、桶狭間ありさ
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:dugout
制作:MAPPA
(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp/#index

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