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「ドライブ・マイ・カー」は21世紀の「羅生門」、映画研究者・北村匡平が絶賛

ナタリー

「ドライブ・マイ・カー」トークセッションの様子。左から北村匡平、濱口竜介、伊藤亜紗。

「ドライブ・マイ・カー」のトークセッションが8月16日に東京・文喫 六本木で行われ、同作の監督を務めた濱口竜介、美学者の伊藤亜紗、映画研究者の北村匡平が出席した。

村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録されている作品をもとにした「ドライブ・マイ・カー」。妻を亡くした俳優・演出家の家福が寡黙な専属ドライバーのみさきと出会い、喪失感と向き合っていくさまが描かれる。家福を西島秀俊、みさきを三浦透子、家福の妻・音を霧島れいか、物語を動かすキーパーソン・高槻を岡田将生が演じた。

濱口と伊藤は大学のゼミの同級生として、学部は違うながらも同じ授業を受けた間柄。濱口と北村は今回が初対面だという。「ドライブ・マイ・カー」の感想を、伊藤は「3時間の映画ということで大丈夫かなと不安でしたが、びっくりするくらいあっという間。時間が流れていくというよりは、自分の中に時間がたまってシンクロしていくような不思議な感覚でした」と語る。

北村は濱口の過去作「ハッピーアワー」を「間違いなく2010年代映画のナンバーワン」と称賛しつつ「『ドライブ・マイ・カー』は『ハッピーアワー』の一歩先を行っている」と述懐。「思い出したのが、黒澤明の『羅生門』という作品なんです。主題は違えども芥川龍之介の『藪の中』を『羅生門』や『偸盗』を組み合わせて黒澤明が独自解釈したのと同じように、『ドライブ・マイ・カー』では『女のいない男たち』の中の『ドライブ・マイ・カー』『シェエラザード』『木野』もあわせて村上春樹的観点を抽出したうえで濱口ワールドが繰り広げられているという点で、“これは21世紀の『羅生門』だ”と感じました」と絶賛する。

濱口作品での他者とのコミュニケーションの描き方について、伊藤は「人間関係というより“存在関係”を描いている。人と人の関係がまるでたばこの煙のような……人が吸っていると自分も吸いたくなるような、誰かの行動によって自分にもつながっていくという点で共振、共鳴を感じます」とコメント。これを受けて濱口は「自分の映画を人間ドラマだと言われるとどこか違和感があったんですが、人間が関係することで、その存在が影響を及ぼすものをずっと見ている。役者とテキストの関係もそうだと思うし……今までいただいた感想の中でも一等うれしいです」とはにかんだ。

最後に北村は「自分の体と同化した車を手放し、委ねることによって自分の感覚が開かれていくという感覚をぜひ体験していただきたいと思います。可能であればぜひ2回観たほうがいいと思います」と熱弁。伊藤は「人と単にわかり合う、共感するということではなく、自分の心の傷に向き合うということ。大学時代の作品を観たときはもっと実験的な監督になると思っていたが、人間の心を描くというスタンスに同世代としてとても感銘を受けます」と語った。

濱口は「同級生だった伊藤さんとこうやって再会ができてとてもうれしかったです。また、北村さんがおっしゃった“委ねる”というテーマに関しては正直意識していなかったのですが、今まで撮影したドキュメンタリーの中で自分が撮ったものの編集を人に委ね、手放すということで新鮮な作品作りができた経験を思い出しました。また違った観点から映画を楽しめるようなお話が聞けたと思います。ついに20日公開なのでぜひ楽しみにしていただければ」とメッセージを送った。

「ドライブ・マイ・カー」は8月20日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。

(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

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