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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

執着、未練、後悔って、必ずしも悪いものじゃない

毎週連載

第121回

21/3/20(土)

男の人は昔好きだった人のことを「ああ、そんな人もいたね」なんて思うことは少ないと思う。むしろ好きになった人のことはずっと忘れないでいるし、特別なまま。たぶん口には出さないまでも、仮にその後、別の誰かと付き合ったり、結婚したりしても、やっぱり頭から消えないんじゃないかと思う。倫理的なこととかを抜きにして、もう脳味噌の問題と言える。一度愛したものを「別れたから」っていう理由で、急に脳味噌のデータがゼロになるわけではないからね。ずっと残っているものだと思う。

たださ、こういう過去の恋愛のことで言うと、僕の場合はわざと意識的に思い続けるように、忘れないようにしているところもある。なぜなら、それが歌詞になるからね。付き合っていた彼女と過ごした景色とか、初めて会ったときに彼女がどんな服を着ていたとか、あの場面で「こんなこと言ったな」とか、そういうことを付き合っている間からいつも心の中に細かくメモしている自分がいる。どうも自分と彼女とか恋愛の様子を俯瞰で見ちゃう癖があるんだ。

だから、付き合っていた人から「峯田くんは人間味を感じられない」「何を考えているのかサッパリわからない」とか言われることにもなる。ただ、しょうがないんだよ、こればっかりは。普通なら「この人が好き」だけで良いかもしれないけどさ、「僕自身の、この人に対する『好き』という感情は、どういうメカニズムで起こっていて、どんな条件で成り立っているのか」とか、すごく客観的に分析しちゃう癖があるんだから。だから「心が感じられない」みたいなことを言われるんだ。

ただ、このせいで付き合っていた人に対する記憶も薄れないし、その思いが簡単に色あせることもないっていう良い効果もあるよ。

確かにさ、うまくいかなかった恋愛を曲にする作業は本当にキツいんだ。でも、曲が出来上がると、本当に好きだった彼女に対する気持ちを成仏させることができたようなスッキリした気持ちになる。こうなった後はすごく楽で、出来上がった曲を歌っていても、正直それほどキツくはない。『東京』って曲もさ、あの歌詞の世界の自分に戻ることもあまりないかな。せいぜい「ライブで歌詞を間違えないようにちゃんと歌おう」ってくらいで、歌っててもキツくないし。昨年出したアルバム(『ねえみんな大好きだよ』)のラストの『アレックス』っていう曲もさほどキツくないよ。

よくさ、こういうかつての恋愛の曲を書いて歌うことで「昔の恋愛を引きずってるんじゃないですか?」「執着が強いんじゃないですか?」なんて言われることもあるけど、それはまったくその通り(笑)。たぶん他の人に比べれば執着、未練、後悔……そんなんばっかりだもんね、僕は。

でもさ、こういう執着とか未練とか後悔って、言葉だけで言えばネガティブに捉えられがちだけど、僕にとっては必ずしも悪いものではない。余韻が残るものってすごく大事だよ。

心のどこかに残っているもの、自分で消そうと思ってもどうしても消えないものって、その人にしかないもの。どれだけ文明が進んでも、執着、未練、後悔って人間からはなくならないものだと思う。これを「良くない」と思うから苦しくなるんだと思うけど、「悪くはないし、良いものかもしれない」と思えたらさ、少しは楽になれるかもしれないよね。

執着、未練、後悔って別に悪いものではないと思います。

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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