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上野樹里の芝居を超えた言葉に涙 『監察医 朝顔』が伝えた“生きることの尊さ”

リアルサウンド

20/12/29(火) 13:40

 上野樹里が主演を務める『監察医 朝顔』シーズン2(フジテレビ系)が、12月28日に第9話を迎えた。

 年末の2時間スペシャルとなった今回、スポットライトが当たるのは法医学教室の新たな仲間として登場した“ウッシー”こと牛島翔真(望月歩)だ。彼は実家が総合病院を経営しているという生粋のお坊ちゃまで、牛島の前任だった熊田(田川隼嗣)の代わりに見つかった法医学教室にとって待ちに待った存在。第8話では新人らしからぬ飄々とした態度が目立っていた。

 そんな牛島が大事件を巻き起こす。それは女子大生殺しの犯人と噂されている男性の解剖中の遺体写真を、SNSに流出させてしまうのだ。たちまちネットでは写真が拡散され、テレビでも報道される事態に。しかし、牛島はそれを悪気があってやったわけではなかった。

 遺体の解剖中「こんな残酷な目に遭わされて犯人が憎いです」と被害者を思い、鼻をすすって泣いていた感受性の強い牛島。被害者のプライバシーはネットでどんどんと晒され、一方の犯人は顔も名前も伏せられたまま。そんな理不尽な構図に、牛島は良かれと“みんなが知りたかったこと”を広めたのだった。

 しかし、結果的に牛島が犯人と勝手に思い込みネットに晒した男性は加害者ではなかった。一時的な感情が招いた取り返しのない過ち。通常なら罵倒され、見放されるような行為に、朝顔(上野樹里)は彼を見捨てずに、ゆっくりと諭していく。冷静に、時に感情を剥き出しにして牛島に法医学者とは何なのかを、自身の思いを持って投げかけていくシーンは、およそ10分間の長ゼリフ。シーズン1で反響を呼んだ朝顔の講義での場面を彷彿とさせる。

「今、死ぬことを踏みとどまって、頑張って生きてる人の姿、ご遺族の姿、想像できた? 思いやれた?」
「死と向き合うからこそ生きることの尊さを深く知っていなければいけないと思う」
「遺体の尊厳も、遺族のプライバシーも、法医としての秩序も、いとも簡単に奪ってしまった」

 その言葉一つひとつは、牛島に発せられたものであるが、観ている私たちの心にも響くメッセージだ。この朝顔の言葉には、2020年だからこそ届けたい、ドラマサイドの思いが込められている。セリフは制作スタッフと上野樹里本人によって練られたもの。撮影前には演出の平野とプロデューサーの金城、上野の3人で入念な稽古を行ない、本番で上野は長ゼリフを一度も間違えずに演じきったという。悲しいニュースの多かった2020年。未だ先が見えずに、誰もが抱く不安。目まぐるしく移り変わっていく日々の中で、この2020年の最後に、熱のこもった上野の演技とともに伝えられた生きることの尊さは、多くの視聴者の心を打ったことだろう。

 望月は手のひらで涙と鼻水を拭き、上野も長ゼリフが終わった後にせき止めていた涙が声とともに溢れるという切迫感のあるシーンであったが、撮影裏でも芝居を目の当たりにした制作スタッフからは、すすり泣く声が漏れていたようだ。

 朝顔の思いを受け止め、牛島がこのまま法医を目指す中、茶子(山口智子)は辞職し法医学教室を離れることを決めていた。法医学にとってのホープに、多くの言葉を残し、颯爽と去ってゆく茶子。朝顔の「またいつか会える気がする」という言葉の通りに、若林(大谷亮平)との関係性も未だ謎に包まれたままだ。さらに平(時任三郎)は朝顔との電話で「じゃあな、里子。朝顔によろしく」と告げるという胸騒ぎのする出来事も……。

 年明け放送の新春SPは、全編新撮。朝顔と桑原(風間俊介)のさらなるなれ初めから、朝顔が初めて執刀助手として解剖に臨んだエピソードが描かれる。少々重苦しい空気が流れていた『朝顔』に爽やかな風が吹き込みそうだ。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『監察医 朝顔』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~放送
(2020年秋・2021年冬2クール連続)
出演:上野樹里、時任三郎、風間俊介、志田未来、中尾明慶、森本慎太郎(SixTONES)、藤原季節、斉藤陽一郎、坂ノ上茜、田川隼嗣、宮本茉由、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、加藤柚凪、戸次重幸、平岩紙、三宅弘城、杉本哲太、板尾創路、山口智子、柄本明ほか
原作:『監察医 朝顔』(実業之日本社)
脚本:根本ノンジ
プロデュース:金城綾香
演出:平野眞、阿部雅和
制作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/asagao2/

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