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立川直樹のエンタテインメント探偵

蓮昌寺で上演した『滝の白糸』、PARCO劇場『志の輔らくご』…人の手できちんと作られ長く続いているものの大切さを実感した

隔週水曜

第43回

20/2/12(水)

『志の輔らくご ~PARCO劇場こけら落とし~』

金沢にある泉鏡花ゆかりの寺、蓮昌寺で篠井英介と新内多賀太夫の共演で上演した『滝の白糸』はとてもいい仕上がりになった。泉鏡花記念館の館長からお誉めの言葉を頂いたのもうれしかったが、東京に戻って数時間後に3年半ぶりに新たに開場したPARCO劇場で観た『志の輔らくご ~PARCO劇場こけら落とし~』も深みがあり修練された“和の芸”の素晴しさに酔わせてくれた。『こけら落とし噺』と『メルシーひな祭り』に古典落語の『八五郎出世』。1996年から休館まで続いた『志の輔らくご in PARCO』を観たことがなかった僕はそのうまさに唸らされるとともに、チケットの買えない公演になっている理由もよくわかったが、とりわけ『八五郎出世』の芸の凄味は僕に落語の世界の扉を開いてくれた。

『滝の白糸』が上演された石川県のイベント『冬の夜のマジカルセッション“出逢い”』リーフレット

その長く続いているものの大切さ。それは1月17日に京都の美術館「えき」KYOTOで観た『婦人画報と京都 つなぎ、つたえる「人」と「家」』展の会場に並んでいた宝物のような作品を観た時にも感じたことだったし、「映画前史と玩具映写機」をテーマにする京都町家の小さな博物館“おもちゃ映画ミュージアム”に保存されているものを観た時にも同じ気持になったが、そこに共通しているのはどれも人の手によってきちんと作られているものだということである。

『婦人画報創刊115周年記念特別展 婦人画報と京都 つなぎ、つたえる「人」と「家」』

年明けすぐの1月10日から12日にかけて観に行った『やんばるアートフェスティバル』も26日に横浜アリーナで観たGLAYのコンサート『HOTEL GLAY THE SUITE ROOM』も『志の輔らくご』の翌日の2月2日に東急シアターオーブで観たブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』もジャンルこそ違え、その点で完全に共通している。

そして余り予備知識を持たない状態でいいもの、よく出来たものに出会えると、本当に得した気分になる。

山原(やんばる)と呼ばれる沖縄本島北部地域のいくつかの会場にユニークな作品が展示され、usaginingen(ウサギニンゲン)という2人組が見せてくれた実に不思議な魅力を持った映像と音楽、光が混ざり合った室内のパフォーマンス。本来ならば前回のエッセイで書くべきだったのだが、日々の時間の流れからポッコリ外れていて、気温も冬とは思えないさわやかさと、場所がまたユニークなこともあり、メモがどこかにはさまっていて書き忘れてしまった。そう、メモというのはとても重要だ。横浜アリーナの暗い客席でTAKUROとTERUとキーボード奏者の3人で演奏された『Beautiful like you』や、両サイドのスクリーンにイメージ映像だけでなく、歌詞もうまくデザインされて映し出すという演出の効果が生きていた『反省ノ色ナシ』といった曲名のメモが、リリースにある「僕たちが何百本とライヴをやってきた中で、コンサートを楽しむだけでなく、その前後も楽しんでもらいたいと思った。ホテルの素晴しいホスピタリティのような、最高のおもてなしをすることで、GLAYのライヴでもたくさんの人を満足させ、笑顔にし、より多くの人に最高の時間を過ごして欲しい」というTAKUROのコメントと重なりあうと、きちんと記憶がフラッシュバックしてくるのである。

ブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』

あとは出かけた場所で手に入るパンフレットの類やチラシ類も大切だ。『コーラスライン』の振付・演出を手がけた鬼才マイケル・ベネットの遺作ともなった『ドリームガールズ』のとてもよく出来た歌と抜群の歌唱が、山原の辺土名大通り商店街にある築40年越えのホテルを見事にリノベーションした“YANBARU HOSTEL”の70年代のアメリカンヴィンテージと時空を超えてクロスするおもしろさ。1月27日の昼時に能登町の柳田植物公園の中にある“合鹿庵(ごうろくあん)”で実演してもらった農耕神事“あえのこと”も白昼夢のような世界で、僕のエンタテインメント追及の旅はますます広がっている。

作品紹介

『冬の夜のマジカルセッション“出逢い” KYOKA音・語り《「滝の白糸」より》』

日程:2020年1月31日
会場:蓮昌寺
出演:篠井英介(朗読)/新内多賀太夫(新内節)

『志の輔らくご ~PARCO劇場こけら落とし~』

日程:2020年1月24日~2月20日
会場:PARCO劇場

『婦人画報創刊115周年記念特別展 婦人画報と京都 つなぎ、つたえる「人」と「家」』

会期:2020年1月2日~20日
会場:美術館「えき」KYOTO

『やんばるアートフェスティバル 2019 - 2020』

日程:2019年12月14日~2020年1月13日
会場:沖縄北部地域

『GLAY ARENA TOUR 2019-2020 DEMOCRACY 25TH HOTEL GLAY THE SUITE ROOM』

日程:2019年11月9日~2020年1月26日
会場:三重県営サンアリーナ、神奈川・横浜アリーナほか

ブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』

日程:2020年1月29日~2月26日
会場:東急シアターオーブ
劇作・脚本・作詞:トム・アイエン
音楽:ヘンリー・クリーガー
振付:マイケル・ベネット(構想・オリジナルディレクター)/ロバート・ロングボトム
演出:ロバート・ロングボトム
出演:カディージャ・オネ/シャラエ・モールトリー/ベランド・ミラス/他

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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