『絶対零度～未然犯罪潜入捜査～』（フジテレビ系）が、来週の放送でいよいよ最終回を迎える。第8話のラストには、長嶋秀夫（北大路欣也）より、シーズン3の最大の謎である桜木泉（上戸彩）の死について生きているような言動があったが、第9話ではついに桜木が再登場。ドラマはセミファイナルにして最高潮の盛り上がりを見せている。

参考：本田翼のアクションの背景にある信念とは？　『絶対零度』小田切のキャラクター像を振り返る

　桜木の再登場により、焦点が向けられるのが、井沢の妻子を殺された事件との関係性だ。過去に井沢は、事件の犯人である宇佐美（奥野瑛太）に向け発砲し、ミハンシステムに危険人物としてリストアップされている。「宇佐美洋介は、単なる実行犯にすぎない。つまり真犯人がいる。井沢さんは一線を越えるかもしれない」とは山内（横山裕）の言葉だが、“反社会的サイコパス”、“罪をもみ消した元公安の魔物”とも言われた井沢に眠る深い闇は、過去に何度も顔を覗かせてきた。桜木の遺留品である手帳に、井沢の事件との関係性が残されていたことは第7話で明かされていたが、第8話の危険人物・石塚辰也（高橋努）の事件を追う桜木の姿が二度も映り込んでいたことにより、事態は急変していく。

　桜木を追うことにより、妻子を殺された井沢の事件の真犯人にたどり着く。人を殺したという感覚が今も残っている井沢は、これから犯罪を犯そうとしている石塚に「今は自分の中に化け物がいる。警察官でありながら、最も憎むべき人殺しが自分の中に……いる」と一線を越えた先の苦しみを打ち明けていた。小田切（本田翼）が話しかけるのを躊躇するほどに、井沢は思い悩んだ表情を見せる。どちらを選んでも後悔する“正義の選択”。ミハンチームは、常にこの選択と葛藤し戦ってきた。憎しみにとらわれ復讐という選択をした井沢が、真犯人を目の前にどのような正義を見せるのかが大きなポイントとなってくる。

　そして、第8話のラストにて登場した桜木の行動も不可解だ。元部下でありバディを務めていた山内と対峙し、どこか安堵した表情を浮かべる桜木の姿は、2人の関係を思えば感慨深いシーンである。しかし、その後に現れる井沢には、一瞬たじろぎ、拳銃を向けるのだった。最終回の予告では、危険人物として桜木がリストアップされ、「ベトナムで起きた事件が彼女を変えた？」（小田切）、「そのために妻と娘を巻き込んだのか」（井沢）というセリフとともに、血だらけの井沢が何者かに向けて拳銃を向ける様子が。拳銃を向けた桜木が井沢に「あなたはミハンに組み込まれた人間」という謎の核心を突くセリフが続々と登場している。

　また、「未然犯罪潜入捜査」というサブタイトルがついたシーズン3において、ミハンチームの存在も重要なポイントであり、桜木のセリフとも密接にリンクしてくる。ミハンの存在の秘匿性を維持し続けるのが難しくなってきたことを受け、国家公安委員会で意見をまとめ、法制化に働き掛ける動きもあった。先日、2019年度、警察庁が高度な捜査や犯罪の防止に役立てるため、AIを活用した3種類の実証実験に取り組むことが報じられている（参考：毎日新聞｜警視庁 捜査にＡＩ活用、システム開発へ実証実験）。現実社会においても、少しずつAIの導入、実用化が始まっている中、『絶対零度』ではどのような決着を果たすのか。（渡辺彰浩）