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『この恋あたためますか』は充電期間に寄り添う暖かいドラマに 今こそ欲していた甘い時間の安心感

リアルサウンド

20/10/21(水) 6:00

 大勢で集まることも、遠くへ遊びに行くことも、まだまだパーッとできない2020年秋。「今年はいろんなことがありました。 甘いものは、人を幸せにします。」のキャッチコピー通り、そんな鬱屈とした日々を過ごす視聴者に、甘い幸せを届けてくれる新ドラマが始まった。

 火曜ドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)は、コンビニのスイーツ開発をきっかけに、恋が生まれるラブストーリー。神森万里江(『相棒season18 元日スペシャル』)、青塚美穂(映画『伊藤くん A to E』)によるオリジナル脚本作品だ。

 アイドルで人を幸せにするという夢に破れ、コンビニでアルバイトをする主人公・井上樹木を演じるのは森七菜。うまくいかない人生にふてくされ気味で無気力な言動を繰り広げながらも、ふとしたときに見せる透明感のある眼差しから繊細な心が震えているのを感じさせる。そんなフレッシュでピュアな演技でグイグイと視聴者の心を引き込んでいく。

 そして、樹木の勤務先であるコンビニチェーン『ココエブリィ』の社長・浅羽拓実を演じるのは中村倫也だ。浅羽は周囲から反感を買ってでも、目的を果たすために強硬手段に出る超合理主義者。しかし強気な態度とは裏腹に、スイーツが嫌いになる悲しい過去もありそうで……。何を考えているか全く読めないサイコキャラと、寂しそうで放っておけない子犬感を両立させてしまう、これぞ中村倫也に適役といえるキャラクターだ。

 “イケメン社長(しかも中村倫也)が、どん底にいるヒロインにチャンスをくれる”というシチュエーションを聞くだけでもう「絶対おいしいやつ!」と叫ばずにはいられないあらすじ。王道と言えば王道だが、むしろそれがいいのだ。いつものコンビニにあるスイーツと同じように、火曜10時になれば甘い時間が待っている。その安心感を今こそ欲していたのだと思わせてくれる第1話となった。

 印象的だったのは、樹木と浅羽の中に鬱積しているもの。アイドルとして芽が出なかった樹木は、スタッフから“味のしなくなったガム”だと例えられ、グループから卒業を余儀なくされる。頑張ったのに誰にも選ばれなかったという挫折から「自分なんか頑張っても……」と自己肯定感を低下させる思考スイッチが強烈に根付いてしまった。夢を追いかけ続けることもできず、かといって次に目指すべき姿も見い出せない。そんな自分は、蛇口のセンサーにも感知されないほど存在感の薄い人間なのだとガッカリする日々を過ごしていた。

 一方、浅羽もまた外資系ネット通販会社『エクサゾン』の本社から、グループ傘下に入った『ココエブリィ』の社長を急に任されるという、不可抗力に翻弄されている1人だ。優秀だからこそ脅威に感じた者による体の良い左遷にあった……そんな噂話が囁かれ、悔しい思いをひとり噛み殺す。早期に結果を出して本社に返り咲こうとするも、『ココエブリィ』メンバーからの協力が得られない。ついには退職届を提出するという波乱の展開に。

 「頑張ってもどうせ自分なんて……」「なぜ自分がこんな目に……」状況は違えど、この2人が持つどこにもぶつけられない思いに、近いものを感じている視聴者は少なくないのではないか。自分ではどうしようもない大きな流れを前に、モチベーションを失い、新たな道を進もうと思っていても頑張ることが大きな一歩だという人もいる。また、負けてたまるかと歯を食いしばるも空回りしてしまっている人も。

 でも、そんな2人が作ろうとしているのは、誰もが幸せを感じられるスイーツであり、その姿を通して誰かの心をあたためるドラマが生まれようとしている。偶然の出会いをきかっけに、スイッチが切り替わり、動き出すのが人生。きっとこのドラマを観る人にも、再起動するタイミングがいつか訪れるはず。だから今は、思わず笑顔になってしまうスイーツのようなドラマを味わいながら、一歩を踏み出すための充電期間でもいいと、そっと包み込んでくれる作品になりそうだ。

 ちなみに、樹木がスイーツ開発に夢中になる姿を見て、思わずコンビニに走り出しそうになった方に朗報だ。『セブンイレブン』で、タイアップスイーツが続々と登場するという。現実社会でも甘いスイーツを片手に、ホクホクとした時間が過ごせるかと思うと、さっそく元気が湧いてくる。

■放送情報
『この恋あたためますか』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:森七菜、中村倫也、仲野太賀、石橋静河、飯塚悟志(東京03)、古川琴音、佐藤貴史、長村航希、中田クルミ、佐野ひなこ、利重剛、市川実日子、山本耕史
脚本:神森万里江、青塚美穂
プロデュース:中井芳彦
演出:岡本伸吾、坪井敏雄
主題歌:SEKAI NO OWARI「silent」(ユニバーサルミュージック)
製作著作:TBS
(c)TBS

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