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朝ドラ『エール』を輝かせる親子の結びつき 唐沢寿明と窪田正孝が見せた息の合った芝居

リアルサウンド

20/5/9(土) 6:00

 一度は夢を諦め、家族のために権藤家を継ぐことを考えた裕一(窪田正孝)だったが、音(二階堂ふみ)と鉄男(中村蒼)からの“エール”を受け、再び音楽の道へ歩みを戻す。『エール』(NHK総合)第6週は「ふたりの決意」と題され、様々な葛藤を乗り越え夢を追う裕一と音の姿が描かれた。

 ふたりの決意の裏では、ひっそり決意を固めた男もいただろう。最後まで裕一を支え続けた三郎(唐沢寿明)だ。思えば三郎は、音を追って福島に行った裕一をすぐに見つけ出し、「俺に任せとけ」と啖呵を切った。裕一の役に立つべく、まさに東奔西走。そんな三郎の胸には、裕一の夢を叶えてやりたいという小さな“決意”があったのではないだろうか。

【写真】登場した野田洋次郎

 裕一の結婚や、留学が中止になってからの作曲家としての夢も、本人すら諦めモードにも関わらず、三郎はあの手この手で裕一を救おうとする。まさ(菊池桃子)や浩二(佐久本宝)の反対を正面から押し切ることこそないものの、音と積極的にやり取りを交わしつつ影から援護射撃を送る。最終的には音が裕一とレコード会社との契約を勝ち取り、裕一を苦しみの世界から救い出すことになるが、そんな音が東京に戻っていく列車を見守ったのも三郎だった。三郎はまさや浩二の手前、自らの手で救うことができなかった裕一をどん底から引きずりあげる手助けをし、音のことも裕一のことも東京へと送り出す。

 最終的に裕一は「家族を捨ててきた」と言って音を追いかけ東京を目指す。裕一は自分のために三郎がどれだけ手を尽くしていたかを知る由もない。しかし、旅立ちのとき、音の家の住所をつつがなく聞いておき、裕一に渡したのもまた三郎なのだ。そして裕一に対して「おめえが捨てたって、俺はおめえを捨てねえ」と声をかける。

 東京に旅立つ裕一にとって、三郎はもう簡単に顔を合わせられる存在ではなくなってしまった。そんな父親の別れ際の言葉に、思わず目頭が熱くなった視聴者も多いのではないだろうか。三郎は喜多一の4代目だが、三男坊。商才があまりないにも関わらず、長男次男が相次いで亡くなったことで店を継ぐことになった。自身が家業を継ぐ環境にいたからか、裕一が夢を追うことに対しては寛大な様子を見せる。そんなバックボーンが見え隠れする裕一への愛は、父親が息子に送る最大の愛情表現だっただろう。三郎は影から裕一を支え、裕一に夢を託した男なのだ。

 そんな三郎を演じる唐沢は、裕一を演じる窪田を実の父親のように可愛がっている。窪田もまた唐沢を敬愛しており、2人の公私に渡る熱いコミュニケーションが父子のシーンを彩っていた。裕一は悩んだり苦しむたびに三郎に素直にその気持ちを吐露してきた。それらのシーンがより色濃く親子の結びつきを表現できたのは、唐沢と窪田の信頼関係があったからこそだ。息の合った芝居と、信頼関係は『エール』をより魅力的に輝かせただろう。

 ここから本作は舞台を東京へと移す。しばらく三郎の姿が見えなくなるかと思うと、なんだか寂しい気もする。

 しかし、裕一と音は夢へと歩みだしたばかり。家族の心配をよそに、新居探しで大忙しだった。やっと結ばれた2人は弾けんばかりの笑顔で寄り添い合う。次週はいよいよ久志(山崎育三郎)との再会が描かれるようだ。既に音は東京で久志と出会っている。音と久志、そして裕一と久志を巡る再会がどう描かれるかにも注目だ。

(Nana Numoto)

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