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『テセウスの船』竹内涼真が母の思いを知る 31年前の音臼村は、想像以上の闇の深さ

リアルサウンド

20/1/27(月) 6:00

 平成元年にタイムスリップした田村心(竹内涼真)は2か月後に起きる無差別殺人を防ぐため、音臼村のどこかに潜んでいる真犯人を探るが、それによって心は警察から疑いの眼を向けられる。

参考:『テセウスの船』で見せる竹内涼真の真価 持ち前の“共感力”と“熱さ”を武器に一回り大きなヒーローへ

 『テセウスの船』(TBS系)第2話では、事件の謎につながる手がかりが徐々に明かされた。音臼小の臨時教員になった心は元県議会議員の田中義男(仲本工事)の自宅で1冊のノートを目にする。それは、田中がボランティアで来る村人たちに口述した詩を記録してもらうためのノートだった。ノートに描かれていたのは涙を流しているウサギと2人の女の子の絵。1人は黒く塗りつぶされ、もう1人は塗りつぶされた子の手を握って、その眼から涙がこぼれている。

 翌日、不吉な予感を抱いて登校した心は、飼育小屋で死んだウサギを見つける。心はその場にいた新聞配達員の長谷川翼(竜星涼)を犯人ではないかと疑う。ノートに描かれたウサギの絵は犯行を予告するもので、田中の家を定期的に訪れていた翼が絵を描いたと考えたのだ。未来から持ってきた新聞記事によれば、翌日は三島医院の長女・明音(あんな)が行方不明になる日であり、もし少女の絵も犯行予告なら、それを描いた人間が犯人という推理がはたらく。

 すべてが起きた後の未来からやってきた人間にとって、過去はたやすく変えられるもののように見える。これから起きることを知っていれば、先回りして防ぐことで全てが解決するとも思われるが、必ずしもそうはならない。『テセウスの船』では、真犯人は佐野(鈴木亮平)に罪をなすりつけたまま行方をくらましており、村で起きた一連の事件の真相も依然として謎のままだ。

 手つかずのまま放置された未解決事件に挑む心にとって、唯一の拠りどころは亡き妻・由紀(上野樹里)が残した新聞記事のスクラップだ。しかし、そこには佐野が逮捕された記事も含まれていた。第1話で、未来から来たという心の告白を受け入れた佐野だったが、心が自分の息子であることも、自分が無差別殺人事件の犯人にされてしまうことも知らずにいた。屈託のない佐野を前にして心は本当のことを言い出せずにいた。

 佐野と心の間にそびえ立っているのは31年という時間の厚みだ。音臼小事件以来、見る影もなく変わり果てた家族を知る心にとって、佐野や妻・和子(榮倉奈々)の笑顔はあまりにもまぶしく、思わず「そんなに強くいられるものかな」と和子に本音をもらしてしまう。「家族なんて信頼し合っていても、もろいもんだなって」とつぶやく心に和子は語りかける。

 「嫌な目に遭っている子どもたちが少しでも救われるなら、『お父さんなんていないと思いなさい』って言うかも。そりゃあ辛いけど、お父さんならきっとわかってくれる」。母の思いに触れ、バラバラになった家族が見えない絆でつながっていたことを知る心。信頼する佐野とともに、明音の跡を追って山中の小屋にたどり着いたのだが……。

 予想を裏切る結末によって、手繰りかけた真実は闇の中に消えた。心の身にふりかかった危機に佐野はどのように立ち向かうのか。ワードプロセッサに犯行計画を打ち込む男の正体も気になる。翼が犯人でないとすると、村人の中に真犯人が隠れていることになるが、誰が、どんな動機で犯行に及んだのか。そして、佐野の身に起こる出来事を、心は実の父親に伝えることができるのか。画面の向こうで吹く風の冷たさと闇の深さに思わず身震いした。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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