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『東京ミュウミュウ オーレ!』はオリジナルからどう進化した? 青年が主人公になった新連載の魅力

リアルサウンド

20/4/27(月) 10:00

 月刊少女漫画誌『なかよし』(講談社)で2000年から連載が開始し、アニメ化もされて国内外から人気を集めた『東京ミュウミュウ』。今年、『なかよし』の創刊65周年を記念して、「ミュウミュウプロジェクト」と名付けられた様々な企画が進行している。そのひとつが、『なかよし』本誌で連載が開始された『東京ミュウミュウ オーレ!』だ。20年の時を超えてなお進化し続ける東京ミュウミュウシリーズが愛され続ける秘密を解く。

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■青年がミュウミュウへと変身する

『東京ミュウミュウ なかよし60周年記念版(1)』表紙
 原作の『東京ミュウミュウ』のヒロインは、中学生の桃宮いちご。同級生である青山雅也と淡い恋人関係を育む、普通の少女として暮らしていたいちごだったが、ある日、適合していたイリオモテヤマネコの遺伝子を打ち込まれ、正義の味方、ミュウイチゴとして戦うようになった。「お礼にたっぷりご奉仕するにゃん」を決め台詞とし、ハート型のベルから発する光で、環境汚染の象徴である敵を浄化する猫耳のヒロインは、20年前の少女たちに絶大な人気を誇っていた。

 『東京ミュウミュウ オーレ!』の主人公は、男子高校生の渋谷葵。誰もが放っておかないほどの美男子である葵だが、本当は目立つことを避けたい消極的な性格だ。いちごと同じくイリオモテヤマネコの遺伝子を取り込み、ミュウミュウとして戦うこととなる。遺伝子を取り込んだ時に、決め台詞も一緒にインプットされたミュウミュウたち。猫耳と尻尾をはやし、鋭利な爪を武器に戦う葵もやはり、「ご奉仕するにゃん」と可愛らしく敵に立ち向かっていく。

 ベースとなる設定は当然『東京ミュウミュウ』とほぼ同じであるが、青年がミュウミュウへと変身するようになったことで、変更された点もある。技は物理攻撃を中心とするものになり、ふんわりと広がる可愛らしい変身姿の代わりに、端正な筋肉を目立たせるバトルスーツを身にまとって戦う。エイリアンによって突然変異した化け物と戦う、殺伐とした雰囲気を醸し出しそうなページでも、戦闘と美しさが際立つ華やかなシーンへと昇華する。

 『オーレ!』の最も大きな特徴は、ヒロインの姫宮あんずの登場であろう。『東京ミュウミュウ』ではいちご視点で物語が展開していたが、『オーレ!』ではミュウミュウたちを生み出した研究者である姫宮なつめの姪で、絶滅危惧種に関する知識を豊富に持ち合わせているあんずを中心にストーリーが進行する。青山に正体がばれないように戦っていたいちごとは異なり、葵たちは、あんずのサポートがあるからこそ戦うことができる。

■アイドルのコンサートのような楽しみ方

 『ミュウミュウ』では、読者たちはいちご達と一緒に熱い戦いに身を投じているように思える描かれ方であった。関連商品も、ミュウミュウたちに扮することのできる衣装やストロベルベルを始めとした攻撃アイテムなどで、多くの読者たちは、お気に入りのキャラクターになりきって決め台詞を口にし遊んでいた。恋する少女と、世界の味方のヒロインの両面に憧れ、物語に入り込んでいたのだ。また、前作でも男性キャラクターは複数名登場していたものの、いちごの視線は雅也に集中していたため、雅也の出番が最も多かった。だが、『オーレ!』では、ミュウミュウ全員を様々な角度から存分に見つめることができる。葵たちの戦いをあんず視点で、一歩引いた場所から冷静に眺めるように描かれているのだ。

 さらに、あんずはミュウミュウたちが美形であると認識しつつも、雅也を常に気にかけていたいちごの様に強い恋心を持って誰かを見つめているわけではない。ミュウミュウのリーダーは葵だが、各メンバーの中に存在するレッドデーターアニマルズの遺伝子に魅力を感じ、全員に熱視線を送る。あんずの視点は、葵と共に戦う頭脳明晰かつ水泳が得意な代々木静、元気な江戸っ子の神田龍成、ナルシストな俳優の六本木彩人らの魅力もしっかりと伝えてくれる。そのために、アイドルのコンサートで、特に応援するメンバーを双眼鏡で追い続けるような楽しみ方もできるのだ。少女たちだけでなく、現代を生きる大人の心も、元気にしてくれる作品だ。

■誉田優
フリーライター・記者。ドラえもんと共に育った生粋の漫画好き。

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