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BOYSぴあSelection 第43回 崎山つばさ

崎山つばさ Part1「僕を見て『大丈夫』と思ってもらえたら」

全2回

第1回

21/3/12(金)

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大学卒業後、2014年に舞台作品で俳優デビュー。10代で才能をきらめかせる者も多くいる芸能界で、それは決して早いスタートとは言えなかった。

焦りに揺れる日もあった。悔しい想いを何度も味わった。だけど、今、彼は言う──デビューが遅かったことは今の自分にとってプラスになっている、と。

舞台から映画・ドラマまで。キャリアを重ねるごとに活躍のフィールドを広げる崎山つばさ。誰にも選ばれなかったあの日の自分は、もういない。

それでも彼は慢心することなく、「もっともっと自分の花を咲かせたい」と情熱を燃やす。その生き様を通じて、あの日の自分のように壁にぶつかっている誰かの勇気や力となれるように。

── 初主演ドラマ『140字の恋』がいよいよスタートしました。

僕の演じる粒谷脩平は交通事故によって車椅子生活を余儀なくされた青年。もともとは明るい性格だったんですけど、事故のせいで塞ぎ込んでしまったところがあって。そんな脩平が見つけたひそかな楽しみがTwitter小説。140字で綴られるストーリーから空想を広げ、毎回、いろんな物語の主人公としてその世界を生きるんです。

そんな妄想世界の脩平の物語と現実世界の脩平の物語が並行して進んでいくところが、この作品の面白さ。しかも題材となるTwitter小説も実際にあるものを使っていて。それをつなげてドラマにしているところが新しいなと感じました。

── 演じる上で難しかったところはどこですか。

車椅子を使う役が初めてで。衣装合わせのときに一度乗せてもらったんですけど、やっぱり扱い方が難しいなと。慣れていない感じが出ちゃうと実際に車椅子に乗って生活をしている方が見たときにどうなんだろうというのがあって。それで、車椅子をお借りして、自宅で練習をしました。

── 家で使ってみたんですね。どうでしたか。

やっぱり難しかったですね。目線が違うし、距離感がつかめなくて。方向を変えたときとか、すぐぶつけちゃうんですよ。馴染むまで時間はかかりましたけど、使ってみないとわからないことに気づくこともできたし。おかげで撮影のときも最初の頃に比べたらスムーズにできたかなと思います。

── 心理描写の面で難しかったところはありますか。

もともと不自由なく生活していた人が、ある日突然車椅子生活になったときの塞ぎ込み方って普通じゃないと思うんですね。そうしたとき、人はどれくらい落ち込むのか。そこから時間が経つにつれて、気持ちにどんな変化が生まれるのか。その心情を表現するのが難しかったです。

── どうやってその気持ちに近づいていったんでしょうか。

自分なりに想像することもそうですし、あとは車椅子ユーザーの方の動画を観て参考にしたり。同じように車椅子を使っている人が出てくるものが観たくて、『パーフェクトワールド』はドラマも映画も観ました。観てみると重なる部分や勉強になる部分もあって。そういうところから少しずつヒントになるものを見つけ出していったという感じです。

── 崎山さんと言うと、どの作品でも一貫して役をつくる準備作業をすごく大切にしていらっしゃる印象です。

大切にしますね。今回の粒谷もそうですけど、その役自身は何十年という人生を生きてきて。だけど、僕はその長い人生の中のほんの数ヶ月、あるいは数日という期間で役と寄り添っていかなくちゃいけない。だから、しっかりつくりこんでいかないと役と僕の間に誤差が生まれる気がして。そうならないように、ちゃんと僕と役の間にある空白の埋め合わせをしたいんです。性格的なところもあるんでしょうけどね。何となくでできないんです。

── 真面目ですよね。

そうなんです(笑)。もともと舞台をやってきて。舞台って時間をかけて稽古ができるから本番で緊張しないですむんですね。その感覚が映像でも残っているのかもしれない。ただやっぱり瞬発力も大事だから、あまり準備しすぎるのも良くないなとも思うし。僕にとっての役づくりは、現場で予想していなかったことが起きたときにちゃんと対応できるように、あらかじめ装備をしておくという感じです。

── そうした演技への姿勢のベースになったのは何でしょうか。

やっぱり舞台でアンダー(本役が何らかの理由で出演できなくなった際に代役を務める人のこと)をやっていたのが大きいかもしれないです。役をいただけるのは当たり前じゃないという意識が自然と根づいたというか。

── 当たり前じゃないからこそ、どんな役にもできる限り準備をして臨むんですね。

そうですね。あそこで培った仕事に対するスタンスや気持ちはどれだけ時間が経っても忘れちゃいけないなと思っています。

ずっと演じ続けてきた石切丸が、オリジナリティを出す勇気をくれた

── 一方で、今は〝崎山つばさ〟として多くの人に求められるようになりました。そうした中で生まれた演じることへの意識の変化はありますか。

何年か前から、自分のオリジナリティを少しずつ出していけたらと考えるようになりました。たくさんの役者がいる中で、僕を応援したいと思ってくださる方や、僕にこの役を任せたいと選んでくださる方がいる。その期待に応えるためにも、作品ごとにどう自分のオリジナリティを見せられるかについて考えることが増えた気がします。

── たとえば、今回の『140字の恋』で見られる崎山さんならではのオリジナリティはどんなところでしょうか。

粒谷脩平の妄想によって、回ごとにいろんなキャラクターを演じるんですけど。中には空想が行きすぎみたいなところもあるんですね(笑)。そういうコミカルな部分をちゃんと楽しんでもらえるように、リアルっぽさは残しつつ、アクセル全開にできるところはアクセル全開にしてオモシロを入れてみたりとか。

── じゃあ、ちょっと突き抜けたシーンなんかは、崎山さんならではのアイデアや個性が光っているわけですね。

そうですね。ドライ(カメラを回さずに行うリハーサルのこと)のときにまず試してみて。そこから監督といろいろお話をしながら決めていきました。1話で別れ代行屋として電話をするシーンは、僕からいろいろアイデアを出して。体勢ひとつとってもそうですけど、自由にやらせていただきました。

── なるほど。そう言われると、また1話を観たくなります(笑)。

はい。ぜひまた観てください(笑)。

── とは言え、崎山さんのバックボーンである2.5次元舞台は原作に忠実であることが第一。なかなか自分の色を出すのが難しいと思うんですけど、オリジナリティを出していこうと思えるようになったのはいつ頃ですか。

やっぱり(ミュージカル『刀剣乱舞』で演じている)石切丸は大きいですね。最初に演じた頃はまだPCブラウザ版のゲームしかなくて。限られた画と声だけを参考にして石切丸というキャラクターをつくっていったんですけど。

トライアル公演から5年以上が経って、石切丸というキャラクターもだいぶ自分に馴染んできて。もちろんみなさん一人ひとりの解釈があるので、あくまでキャラクターの範囲を超えないさじ加減でですけど、僕なりの遊びやオリジナリティを少しずつ出せるようになってきた。そこから意識の面でも変わってきたのかなと。

── 具体的にはいつ頃からですか。

「真剣乱舞祭2017」の頃からかな。ライブ公演である分、通常のお芝居より自由度が高いというか。そういうのもあって、自分のアイデアを混ぜやすかったのはあると思います。

── 今や『刀ミュ』の石切丸はこういう解釈なんだと、ファンのみなさんも受け入れてくれているようなところはありますね。

そうだといいですね。『刀剣乱舞』はお客さんの考察がすごいんですよ。僕の気づかないところで、そういった解釈があるんだというものをファンの方が教えてくださるので。

だから、あの石切丸をつくったのは僕だけじゃないんですよね。演出の茅野(イサム)さんもそうですし、応援してくれるファンの方もそうですし。関わってくださったみなさんのおかげでできたのが、今の石切丸。いろんな人の声にふれることで、少しずつ『刀ミュ』の石切丸のキャラクターが育っていった感覚はあります。

みんながちゃんと生活している中、僕は家賃すら払えなかった

── では改めてですが、崎山さんの役者としてのルーツを聞かせてください。崎山さんは、大学卒業後に本格的に芸能活動を始めました。途中まで就活もされていたと聞いています。

周りが大学3年生になって就活を始めるから、自分もその流れでやるという感じで。最初は説明会も普通に受けてて、めっちゃメモとかとってたんですけど。そのうちそういうのが全部流れ作業になってきて、あまりピンと来なくなっていたんです。

そんなとき、ふっと浮かんだのが芸能の仕事で。高校の頃、エキストラの仕事をしたり、大学に入ってからも読者モデルみたいなことをやらせていただいて。それがすごく楽しくて、自分のやりたいことってこれなのかもしれないなって。

── でもそのタイミングで就活を全部スパッとやめて、芸能の道を志すのって勇気のいることだなと思うのですが。

もともと持っている根本の性格もあるとは思うんですけど、なんか周りに流されたくなくて。今のまま何となく就活の流れに飲まれていくのはダメだって思っちゃったんですよね。そこからみんなが企業に履歴書を送る中、僕は事務所に履歴書を送っていました(笑)。

── とは言え、周りはどんどん内定を得ていくわけですよね。その中で自分は進路がわからない。メンタルは大丈夫でしたか。

いや、大丈夫じゃなかったです(笑)。ゼミで、「この会社に内定をもらいました」とか「次が最終面接です」とか一人ひとり報告する場があって。自分の番が来たらどういうテンションで「僕は芸能事務所に所属しようと思います」って言おうかなとかすごく考えましたし。

幸い僕のキャラクターが何でも笑いにするタイプだったので、冗談っぽく言って難を逃れましたけど、内心はすっごい言いづらかったですね。

── しかも卒業後、社会に出た同級生は研修を受けて配属が決まって、どんどん活躍しはじめるわけじゃないですか。そういうのを見たらわーってなりませんか。

なりましたね(笑)。僕の場合、地元の友達がすでに就職をしている子が多くて、その時点で社会人3年目とか4年目だったんですよ。みんながちゃんと生活をしている中、自分は家賃すら払えない状態。「大丈夫か? 俺」というのは感じていました。

── 友達と会うのとかしんどくなりますよね。

しんどかったですね。年末年始に帰ったりすると、「今、何やってるの?」って聞かれるじゃないですか。そのときも「いや、バイトしながらやっているよ」みたいな感じで、うまく答えられないというか。

── そういう複雑な気持ちの中で、どうやってその時期をやり過ごしていたんですか。

自分がやりたいと決めたことなので、あまり悲観的になりすぎないようにはしていました。あとは、ひたすら映画を観ていましたね。仕事もあんまりなくて、オーディションもほとんど受からなかったので、暇な時間はとにかくバイトと映画漬け。でもそうやって映画を観ながら、いつか芽が出る瞬間が来ると信じて、その想いだけで過ごしていました。

── 当時観た映画の中で特にルーツになっているものはありますか。

作品というよりも人なんですけど。僕は役所広司さんの存在が大きかったです。

── それはなぜでしょう。

役所さんも一度区役所に勤めてから無名塾に入られていて。役者としてスタートが遅いことに焦りを感じていた僕は、役所さんの存在に勝手に勇気づけられていたんですね。もちろんお芝居も素晴らしいですけど、そういったバックボーンも含めて憧れで、役所さんの作品はたくさん観ていました。

── そうやって映画を観て勉強していた自分に、今の自分から声をかけるなら、何と言ってあげたいですか。

「続けることに意味があるよ」とは言いたいですね。でも、僕もまだまだ花を咲かせられたわけじゃない。もっともっと自分の花を咲かせられるように、これから先も勉強して、ちゃんと芽を育てていきたいです。

年齢は関係ないということを、自分の姿を通じて体現したい

── 今やスタートが遅かったというハンデも感じさせないほど活躍されています。以前は地元の友達に会いづらかったところもあったようですが、いつ頃から胸を張って会えるようになりましたか。

胸張って会う、か…。それは今も無理かも。

── え! どうしてですか。

何て言うんですかね。昔は確かにそういうことを気にしていたこともあるんですけど。ある時期から年齢とかそういうことじゃないよなと思うようになって、そこからすごく気持ちが楽になったんです。

そもそもですけど、別にこの仕事しているからって他の仕事をしている人よりエラいなんてことはないですし。あんまりアピールする必要もないのかなって。だから今地元に帰って小中の頃の友達に会っても、「こういう仕事してるんだ」というようなことは自分からは言わないし、ひとりの友達として会いたいなという感じです。

── なるほど。じゃあ、地元のお友達も崎山さんの出演している舞台は観たことがないんですか。

仲の良い友達を一度招待したことがあるんですけど、残念ながら来られなくて。だから僕が知る限りはまだ観てもらっていないです。

── いつか観てもらいたい気持ちはありますか。

そうですね。そのときが来たら。でもこっそりチェックしてるみたいですけどね。紅白歌合戦に出場したときも、実は地元の友達とかめっちゃ観てて。僕からは誰にも知らせていないのに、終わった後、「観たよ」って連絡をくれて。みんなちゃんと気にしてくれているんだなと思いました。

── 結果的に、デビューが人より遅かったことは、役者・崎山つばさをつくる上で大きいものになっていますか。

大きいですね。

── それはプラスの意味で? それともマイナスの意味で?

プラスだと思っています。もちろん体力的にも精神的にも若いときにやった方がいいものもあったりしますけど、でもそれだけじゃないということを誰より僕自身が実感しているので。だから、何を始めるにしても年齢は関係ないということを自分の姿を通じて体現していきたい。

それこそ大学を卒業して仕事が全然なかった時期に僕が役所広司さんの存在に励まされたように、昔の僕と同じような境遇にいる人が、僕を見て何か少しでも「大丈夫だよ! いけるいける!」と思ってもらえたらという気持ちがすごくあります。

そのためにもこれからもジャンル限らずにいろんな分野のお仕事がしたいし、常に新しい自分を見せていきたいですね。何よりそういう新しい自分を僕自身が見たいんです。

PART1では歌手としての崎山さんに迫ります!サイン入りチェキのプレゼントもあるので公開をお楽しみに!!

撮影/須田卓馬、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/SUGA NAKATA(GLEAM)、スタイリング/OBU-

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