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『エール』古山家が借金を抱える 才能を認められた裕一の運命が急転

リアルサウンド

20/4/14(火) 12:00

 オリジナル曲に取り組む裕一(窪田正孝)だったが、ハーモニカ倶楽部会長の舘林(川口覚)の顔がちらついて作曲に集中できない。『エール』(NHK総合)第12回で、憧れの先輩に対抗心を燃やす裕一を見て、同じハーモニカ倶楽部に所属する史郎(大津尋葵)は「裕一らしくねえよ」と声をかける。

参考:『エール』窪田正孝×中村蒼らは幼少期編とどうリンク? 石田星空ら子役たちの名演を振り返る

 「怒っとか、負けないとか君には似合わねえ」。かつてのいじめっ子は裕一の優しさに気付いていた。「音楽ってその人の個性が出るもんだろ。今の君は君じゃない。君じゃねえから書けねえんじゃねえかな」とズバリと核心を突いてみせる。後年の裕一の作風を示唆しているようなシーンだ。史郎にインスパイアされてできた「想ひ出の径」は、バスパートから始まる斬新な一曲。ハーモニカ倶楽部の決戦投票は当初、舘林が優勢だったが、卒業した先輩の票を加えた最終結果で裕一の曲が選出された。

 実は卒業生に投票を促したのは舘林だった。音楽を愛するが故に、エゴを捨てて「本当にいい曲が選ばれっことを望んでた」舘林は、誰よりも裕一の才能を認めていた。舘林は倶楽部の会員の前で裕一を次期会長に指名し、「君は才能を授けられた。その才能を無駄にしてほしくない」と激励。さらに「もし夢を実現したいなら東京へ行け」と指針を与える。年下の後輩に向かって「僕は君に嫉妬している」と言える舘林は格好良い。恩師である藤堂(森山直太朗)や史郎もそうだが、知らないうちに自分を応援する人間が現れるのは、裕一の人柄のなせる業だろう。

 その頃、古山家では、三郎(唐沢寿明)が次男の浩二(佐久本宝)に喜多一を継がせることを決意していた。音楽家になりたい裕一は実家の呉服屋を継がなくてよくなり、跡取りになりたかった浩二にとっては願ってもない結末。一家の懸案を解決した三郎は、義兄の権藤茂兵衛(風間杜夫)に、息子を養子にはやれないと断りの電話を入れる。

 禍福はあざなえる縄のごとしと言われるが、なんの前触れもなく運命が暗転するのがこの世の常。吉野(田口浩正)の話に乗って連帯保証人になった三郎は、吉野が「とんずらした」ことで一夜にして莫大な借金を抱えてしまう。先刻縁を切ったばかりの茂兵衛の元に赴き、土下座して援助を請う三郎とまさ(菊池桃子)。融資の条件は二人の息子のどちらかを養子に出すことだった。

 まさが発した「全部の幸せが叶えばいいんでしょうけど」という言葉は、子どもを手放さなくてはならない自分を無理やり納得させているようであり、あきらめに似た複雑な感情がにじんでいた。わずかな間に運命が急転した裕一にエールは鳴り響くか。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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