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KinKi Kids「KANZAI BOYA」のインパクト ファンクの神髄と恩師への愛情を表現した、二人の記念碑的な楽曲に

リアルサウンド

20/5/11(月) 12:00

 KinKi Kidsが新曲「KANZAI BOYA」を、5月2日放送の『MUSIC FAIR』(フジテレビ系)で地上波初パフォーマンス。さらに5日にMVのショートバージョンが公開されると、「#KANZAIBOYA」がTwitter上でトレンド入りした。本格的なファンクサウンド、そして、昨年7月に逝去したジャニー喜多川氏への思いに溢れた歌詞がひとつになった「KANZAI BOYA」、ここ最近のKinKi Kidsの楽曲のなかでも、際立って注目を集めている。ここでは「KANZAI BOYA」の制作エピソードと音楽的な特徴、さらにこの楽曲の背景にある堂本剛、堂本光一の思いを紐解いてみたい。

(関連:KinKi Kids、「KANZAI BOYA」誕生秘話明かす 堂本剛「一番最初に僕たちを見て付けてくれた名前が急に愛おしくなっちゃって」

 「KANZAI BOYA」が初めて披露されたのは、昨年末に行われたKinKi Kidsのコンサート『KinKi Kids Concert Tour 2019−2020 ThanKs 2 YOU』のステージだった。ライブ中盤、二人が1997年のCDデビュー前に歌っていた「たよりにしてまっせ」「買い物ブギ」(2曲ともジャニー氏の勧めでカバーした楽曲だ)に続いて演奏された「KANZAI BOYA」は、剛の作詞・作曲によるファンクナンバー。この曲に関して剛は、ステージ上でこんなふうに語った。

「僕らがKinKi Kidsになる前は、KANZAI BOYAという名前だったんです(「恥ずかしい名前です(笑)」という光一のツッコミが入る)。ただ、いま考えてみると、KANZAI BOYAってめちゃめちゃイケてる名前だなと。それに気づいて、KANZAI BOYAというファンクを作ったんですよ」「ジャニーさんが僕らに最初に付けた名前だし、大々的に鳴らすべきじゃないかなって。みなさんもKinKi Kidsのファンならば、KANZAI BOYAという名前に敬意を表して、このワードを声高らかに、ジャニーさんに届くように叫んでほしい」

 ライブで披露されたバージョンは、剛がメインボーカル。光一は楽曲のエンディングに登場、VANSONのキャップとサングラスでジャニー氏に扮し、「YOUたちにカッコいい名前を思いついたよ。KinKi Kidsだよ!」と語ると、「そんなに!変わって!ない!?」というコーラスがオチを付けた。この曲を初めて聴いたはずの観客も笑顔で大歓声。ライブ全編を通してジャニー氏への思いに溢れていた2年ぶりのドーム公演のなかでも、もっとも印象的な曲の一つだった。

 前述した通り「KANZAI BOYA」は、剛の作詞・作曲によるファンクナンバー。アーティスト/ソングライターとしての剛のスタイルが強く表れている楽曲だ。

 2002年にシングル『街/溺愛ロジック』でソロ活動をスタートさせた剛。当初は叙情的なバラードやシンプルなロックチューンが中心だったが、2005年に始動したプロジェクト・ENDLICHERI☆ENDLICHERI(244 ENDLI-x名義)で、彼のルーツであるファンクミュージック路線にシフト。その後、美 我 空(剛 紫名義)、SHAMANIPPON、ENDRECHERI(堂本剛名義)とプロジェクト名や名義を変えながら活動を継続してきたが、ベースになっているのは一貫してファンクだ。特にParliament、FunkadelicをはじめとするPファンク系やSly & The Family Stoneからの影響はきわめて大きく、彼の音楽の基盤になっている(ENDLICHERI☆ENDLICHERIの2ndアルバム『Neo Africa Rainbow Ax』収録の「ENDLICHERI☆ENDLICHERI 2」に、元Sly & The Family Stoneのラリー・グラハムが参加しているのも有名だ)。

 新曲「KANZAI BOYA」もまた、オーソドックスなファンクに根差している。シンプルな16ビートにしなやかなベースライン、軽快なギターのカッティングが絡み、力強く解放的なホーンセクションが鳴り響く構成は、まさにファンクの神髄。〈KANZAI BOYA 無敵なname〉〈KANZAI BOYA 素敵だね〉というフレーズを繰り返すボーカルも、伝統的なファンクのスタイルだ。

 歌詞もきわめて個性的。「KANZAI BOYA」には、ジャニー喜多川氏に対する深い愛情と思わず笑ってしまう“ネタ”が共存しているが、そこには深いメッセージ性と楽しさや遊び心が一つになった剛のソングライティングセンスが強く作用している。〈Please hot green tea〉から始まる「KANZAI BOYA」の歌詞には、この名前に関する由来とジャニー氏への思いがたっぷり。〈信じらんないよ〉〈最悪だよ〉といった口癖、そして、〈いまじゃもう魂となりました 誰にも名前つけらず暇よ〉というラインを含むリリックは、言うまでもなく、ジャニー氏と剛、光一の深い関係性がなければ成立しない。

 KinKi Kidsとジャニー喜多川氏の四半世紀を越える関係に裏打ちされた「KANZAI BOYA」。作詞、作曲、アレンジ、演奏を含め、すべてが剛の色で彩られたこの曲がKinKi Kidsのシングルとしてリリースされるというニュースは、かなり意外だった。もともと剛は、自身のソロ活動とKinKi Kidsを完全に切り離していたからだ。おそらく彼のなかには、“KinKi Kids=エンターテインメント/人から求められるもの”、“ソロワーク=アートの追求/自身の内面世界に根差したもの”という住み分けがあり、筆者も“その両方が混じることはないんだろうな”と思っていた。しかし、二人はこの曲をシングルにして、より多くの人に聴かれることを望んだのだ。

 剛の音楽的志向が反映された楽曲が“KinKi Kidsのポップス”として成立している大きな要因は、光一のボーカルとダンス。『MUSIC FAIR』の出演時に光一は、剛が楽曲の背景やジャニー氏への思いを話した後、「そんなに真剣に話すようなことでもなくて(笑)、エンタメとして素晴らしい曲なんですよ」という趣旨の発言していた。深いメッセージ性を持った作品を誰もが楽しめるものに昇華するセンスもまた光一の持ち味であり、KinKi Kidsをエンターテインメントして成立させている大切な要素でもあるのだ。

 マーク・ロンソンの「Uptown Funk ft.Bruno Mars」(もしくはレキシの「KATOKU」)のように80年代オマージュ満載のMVも話題。剛のアーティスト性、光一のエンターテインメント精神が一つになり、二人の育ての親であるジャニー喜多川氏への愛を真っ直ぐに、楽しく表現した「KANZAI BOYA」。この曲はまちがいなく(「愛のかたまり」と並び)KinKi Kidsの記念碑的な楽曲になるだろう。(森朋之)

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