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『テセウスの船』変わり果てた未来で上野樹里と再会 それでもぶれない鈴木亮平の家族愛

リアルサウンド

20/2/10(月) 6:00

 音臼神社で霧に包まれて現代に戻った田村心(竹内涼真)。しかし、そこは心の知らない世界だった。

参考:鈴木亮平のズッシリとした安定感 『テセウスの船』で見せる演技の頼もしさ

 『テセウスの船』(TBS系)第4話の舞台となるもう一つの未来で、佐野(鈴木亮平)と家族はさらに悲惨な運命をたどっていた。心は母・和子(榮倉奈々)が一家心中を図り、長男の慎吾(番家天嵩)とともに亡くなったことを知る。拘置所で佐野と再会した心は、姉の鈴(貫地谷しほり)の消息を聞き、早速訪ねることを決断する。

 タイムスリップ・ミステリー『テセウスの船』では、過去を変えることによって時間の流れが変わり、未来も影響を受けることが前提となっている。それはプラスにもマイナスにも作用するもので、変わってしまった未来で一人娘の未来(みく)が生まれていないという事実は示唆的だ。一方で、心は自身が元にいた現実で何が起きるかを知っており、過去と照らし合わせながら、間違い探しのように事件の真相と向き合うことになる。

 第4話で心が新たに出会うのは姉の鈴と内縁の夫である木村みきお(安藤政信)、そしてみきおの義理の母・木村さつき(麻生祐未)。音臼小の教員だったさつきは、身寄りのないみきおを引き取って育てていた。また鈴は養護学校を出た後整形し、村田藍に名前を変えていた。さつきたちが自分の正体を知らないと思っている鈴は、贖罪の念から、事件によって足が不自由になったみきおと結婚し面倒を見ている。

 変わってしまった未来は、まったく別のものではなく、やはりどこかその人を思わせる要素が垣間見える。鈴やさつきの他に心が出会ったのが岸田由紀(上野樹里)。本来なら夫婦になっているはずの由紀は妻ではなく、週刊誌の記者として心の前に姿を現す。由紀の場合、ミルクティーが好物であることや、元の世界でも心の父である佐野のことを調べていたように、もう一つの未来でも音臼小事件の真相を追っていた。有罪を覆すため必要な新証拠を探す心にとって、真実を追い求める由紀の記者魂が大きな力になる。第1話で「心のお父さんだから信じてみたい」と言い残してこの世を去った由紀は、別の未来でも「裁判では明かされなかった真実が絶対にないと言い切れるでしょうか」と叫ぶ。実質的に一人二役を演じ分ける上野樹里の演技が見事だった。

 そしてどんな時も変わらない人間がもう一人。面会に来た鈴と心の姉弟に「ダァー!」と笑顔でポーズを取る男。時を超える家族の絆、と書くといかにも単純に見えてしまうが、過去と未来をつなぐ別々の時間軸の上でも、佐野の家族に対する思いだけはぶれない。その思いに触れた鈴は「今度は私たちが頑張る番」と決意。父の笑顔は結果的にあきらめかけていた鈴の心に闘魂を注入することになった。

 また、アントニオ猪木が「1、2、3、ダー!」を観客の前ではじめたのは、1990(平成2)年2月10日の新日本プロレス第2回大会からであり、平成元年を舞台とする本作の設定にそぐわないという指摘がある。この点、筆者は、心がタイムスリップしたことによって時間軸にねじれが生じ、佐野も何らかの方法によって事前に闘魂注入を知り得たと考える。

 第4話では、音臼小事件の真犯人に直接つながる手がかりは見つからなかった。何かをつかんでいたような金丸(ユースケ・サンタマリア)は、崖から突き落とされて死亡し、佐野によると無差別殺人は形を変えて発生。ただし、ラストシーンでは新たに証人が名乗り出たという会話もあった。また、ここに来て事件の被害者であるさつきとみきおの木村親子がクローズアップされている。さつきは由紀の被害者家族に対する訴えを聞いて舌打ちするような表情を浮かべており、そこには何か不都合な真実が隠されているようにも思える。被害者の中には真実を知るものがいる可能性があり、新証言をめぐってさらなる展開が待ち望まれる。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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