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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

何か来るぞという気味の悪さはピカイチ!『ズーム/見えない参加者』

月2回連載

第61回

コロナ禍で撮影されたことが分かるようなエピソードにも映画愛を感じる

今回も埋もれちゃ困る作品をふたつ紹介します。まずは『ズーム/見えない参加者』。このコロナ禍の真っただ中撮影されたといういわくつきのホラーです。

舞台になるのは2020年、新型コロナウイルスの感染拡大によってロックダウンされたイギリス。自由に外出できず、悶々としていたヘイリーは、友達を誘って週一度のZoom飲み会をしています。

『ズーム/見えない参加者』

あるとき、ヘイリーは仲間たちに奇妙な提案を持ちかけます。それは、「Zoomを使って降霊会をしてみない?」というもの。ヘイリーが知り合ったという霊媒師をいつものZoom集会に呼んで、霊を降ろしてもらおう、という企画です。もちろん友達みんな大賛成。だって、ロックダウンで時間を持て余してるんだもの(笑)。

そして、その企画の当日。ヘイリーと仲間たちがZoomで勢揃いした後、霊媒師が現れます。ところが霊媒師もリモート降霊術は初めて。うまくいくかどうかは分からないとのこと。とにかく試しに、と始めてみると、早速異変が。ずっと自宅で過ごすことに飽きていた彼らは大盛りあがり。ところがその後、とんでもないことが……。

『ズーム/見えない参加者』

リモートワークが当たり前になった2020年。急速に普及したWeb会議アプリ・Zoomを使ったシチュエーションホラーです。似た題材ではサスペンス映画『search/サーチ』がありましたよね。あれとブラムハウス製作のホラー『透明人間』を足した感じといえばいいでしょう。

とにかくアイデアが良くて、ワンシチュエーションで、しかも怖い。ZoomのWeb会議の画面だけで進行していくので、各ウインドウで参加者の自宅が映し出されます。その各々の画面で何かが起こる。

『ズーム/見えない参加者』

これだけだと、Skypeを使ったホラー『アンフレンデッド』でも使われた手法なんですが、この作品で起きることは想定外のことばかりです。詳しくは観てからのお楽しみなんですが、何かが起きるというのも、元を正すと実は……のせい、という理由づけも納得できるものですから。何か来るぞ来るぞ、っていうイヤな予感がずっと続く気味の悪さはピカイチですね。

『ズーム/見えない参加者』

しかもこの作品、1時間ちょっとという短い尺! これもZoomの無料サービスの時間内という設定を活かしていて見事です。物語が終わってからの数分に、おまけの映像があるんですが、これまた面白い。本当にコロナ禍で撮影されたことが分かるようなエピソードなんですよ。

劇中でも、あるキャラクターが外に飛び出すシーンがありますが、そのときもゴーグルとマスク着用をしていて、こういう気遣いを見せて映画作りをしたというところに、映画愛を感じちゃいますね。

集団心理や自己暗示によって人が変わっていくことは、実際にも起きること

さて、もう1作品は『聖なる犯罪者』。第92回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたポーランド映画です。

少年院に服役しているダニエルは、ひそかに神父になることを夢見ている青年。でも、前科がある者は聖職には就けないことも知っていて、叶わぬ夢と思っています。

『聖なる犯罪者』

やがて仮釈放され製材所で第二の人生を歩み始めた彼は、ふらり立ち寄った教会で新任の司祭と勘違いをされ、司祭の代わりを命じられます。村の人は司祭らしくないダニエルに戸惑うものの、次第に彼を受け入れ、溶け込んでいくことに。

実はその地では以前、悲惨な事故が起きており、その事故を知ったダニエルは、村人たちの心の傷を癒そうと頑張り始めるのですが、そんなときダニエルの過去を知る男が現れ……。

『聖なる犯罪者』

『ズーム…』はテクノロジーと超常現象をミックスしたホラーでしたが、こちらは小さなコミュニティが醸し出す薄気味悪さを描くスリリングなヒューマンドラマ。

いや、人って本当に怖い……。この作品では、ダニエルが「なりたい自分になるチャンスを得た」ときに、そのイメージに合わせて自分を変えていくんですが、これまた村人も信じてしまうんですよ。これがとても気味悪いんですよね。身近なところだと、タイプじゃない映画だったとしても、ひとつ好きなところがあったらなんとなくそれを好きになっちゃうみたいな。

『聖なる犯罪者』

この映画で描かれるネガティブな方向だけでなく、ポジティブな方向でも人の心理が動くことは誰にでもあるでしょう。『ミッドサマー』もそうでしたが、集団心理や自己暗示によって人が変わっていくってことは、実際にも起きることですからね。

『聖なる犯罪者』

※次回は2月12日(金)に更新予定です!

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己
(C)Shadowhouse Films and Boo-Urns 2020
(C)2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ.- WFSWalter Film Studio Sp.z o.o.- Wojewodzki Dom Kultury W Rzeszowie - ITI Neovision S.A.- Les Contes Modernes

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中

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