Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

園子温が語る、コロナ禍での映画製作と作品に及ぼす影響 「人に優しい映画を撮りたい」

リアルサウンド

20/10/3(土) 10:00

 オムニバス映画『緊急事態宣言』がAmazon Prime Videoにて配信中だ。新型コロナウイルス感染拡大防止を徹底した状況の中で撮影、制作された本作は、園子温、中野量太、非同期テック部(ムロツヨシ、真鍋大度、上田誠)、真利子哲也、三木聡の5組の監督たちが、「緊急事態」をテーマに、それぞれが全く異なるアプローチで撮り下ろしたオムニバス映画。“緊急事態”の記憶、あるいはそれがもたらした変化や意味を、「映画」として刻み込んだ。

 今回、リアルサウンド映画部では、本作において『孤独な19時』を手がけた園監督にインタビュー。主演を務めた斎藤工との関係性、コロナ禍の影響、今後の映画製作についてまで語ってもらった。

「回答が一個だけの時代じゃない」

ーー『緊急事態宣言』はコロナウイルスが大きなテーマになっています。園監督としてはコロナウイルスをどう捉えましたか?

園子温(以下、園):今回、『孤独な19時』では“コロナウイルスよりさらに凶暴なウイルス”が蔓延した世界が設定になっています。“凶暴化したコロナウイルス”だと少しリアリティが強すぎると思ったんです。物語に寓話性を持たせたかったんですよね。イソップ童話じゃないけど、「昔々あるところに〜」と始まるような。自分の声をダイレクトに張り上げるんじゃなくて、童話みたいな世界にしようとは最初から考えていました。

ーーあえて自分の意見を強く主張するのではないと。

園:これまでの僕は、原発の問題の際もオブラートに包まないで映画にしてきました。ただ、今回は少し対象との距離を置きたかった。この現実、そしてコロナウイルスという存在の姿や形が未だ分からないんですよ。今は、何もかも不透明すぎて、全体が掴めない不思議な状況だと思っていて。だから、その中でも確かなことだけを映画にしようと。

ーー園監督としては、その作り方の変化は題材によるものが大きい?

園:どうなんでしょう。「回答が一個だけの時代じゃない」とだんだん思えてきたんですよね。だから、最後に斎藤工が言うセリフも、これが正解だと思って書いているかというとそんなことはない。「こういう言い方もあるよ」と提示するようなイメージです。

ーー園監督から見る、斎藤さんの役者としての魅力は?

園:やっぱりストイックってことですね。そして何よりも映画が好きだということがすごく感じられる。当然といえば当然なのかもしれないですが、やはり今の日本の映画界ではそういう人はなかなかいなくなってきているので。これからも一緒に何かやりたいです。

ーー園監督は今回のコロナ禍をどのように受け止めていますか?

園:津波や原発と違って、世界中の人が等しく、この災難の被害に今も遭っているわけじゃないですか。『ヒミズ』や原発を扱った『希望の国』を撮ったときは、「よくわかりもせずに」みたいな言われ方もしていたんですが、今回のことに関しては、分かっているフリも何もなく、自分も平等にコロナウイルスというものの影響を受けている。その意味では、自分が感じている空気感を映画にすればいいという分かりやすさはありました。僕は、去年心筋梗塞を患って、お医者さんから「今コロナウイルスに罹ったら命やばいよ」って言われているんです。だから、気を付け方や捉え方も、普通より少し敏感かもしれません。

ーー着想から制作までどのぐらいの期間を要したんでしょうか?

園:すごく短くて、オファーを受けてから1カ月後にはほぼ完成している状態でしたね。今の気持ちを全て映画に乗せればよかったから。自粛している間のたくさんの記憶を、オブラートに包みながらまとめて書いたという感じですね。

ーーそのアイデアを38分という短編〜中編程度の時間に詰め込んでいます。

園:今回は分数が自由だったので、キツさはなかったですね。逆にもっと短編にしようと思っていたのが、台本が膨らんできて、中編になってしまったという(笑)。真利子くんの作品は1時間あるって後で聞いて、僕も1時間ぐらいやればよかったと思いました(笑)。

「人に優しい映画を撮りたい」

ーーほかの作品との違いを出そうという意識はありましたか?

園:それはないですね。ほかの監督の方々がどんな作品を作るのかは、皆目見当もつかなかったので。とはいえ、コロナウイルスというテーマ、緊急事態宣言というテーマに、自分は真っ直ぐ向き合おうとは考えていました。ちょっとだけコロナウイルスというモチーフを取り入れて、あとは自分のやりたいことだけやるような映画じゃなくて、完全にコロナウイルスをメインテーマに据えた作品で、みんなに語りかけたかったんです。

ーー園監督のこれまでの作品との変化は感じますか?

園:それもないですね。本当に題材がコロナウイルスということだけ。ただ最近は、自分の年齢のせいもあるのか、人に優しい映画を撮りたいと思っています。今回の作品はそういう自分の素の状態が反映されているから、自然に書けた作品ですね。バイオレンスが僕の十八番だと思っている人が多いんですが、そういうことを言われる度に、「いや、そうでもないんだけどな」と思っています。

ーーもしかしたら、園監督のファンとしては意外に思われるかもしれないですね。

園:これからの作品は、より優しくなってくると思います。自粛期間も長くて、やることもないから、今はシナリオがどんどん出来ているんですよ。本作を作り終えた今も、コロナウイルスはまだ過渡期ですし、今後、いろんなメッセージを僕からも投げかけていきたいです。

■配信情報
『緊急事態宣言』
Amazon Prime Videoにて独占配信中
(c)2020 Transformer, Inc.
Amazon Prime Video:www.amazon.co.jp/primevideo
公式Twitter:@KINKYU_JITAI

『孤独な19時』
監督:園子温
出演:斎藤工、田口主将、中條サエ子、関幸治、輝有子、鈴木ふみ奈

『デリバリー2020』
監督:中野量太
出演:渡辺真起子、岸井ゆきの、青木柚

『DEEPMURO』
監督:非同期テック部(ムロツヨシ+真鍋大度+上田誠)
出演:ムロツヨシ、柴咲コウ、きたろう、阿佐ヶ谷姉妹

『MAYDAY』
監督:真利子哲也
出演:各国の人々(日本パート:岩瀬亮、内田慈)

『ボトルメール』
監督:三木聡
出演:夏帆、ふせえり、松浦祐也、長野克弘、麻生久美子

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む