Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

『アイマス』シリーズ、Trident、平野綾……独自のユーモアセンス光るヒゲドライバー楽曲の魅力

リアルサウンド

20/8/19(水) 6:00

 Pastel*Palettes(『BanG Dream!』)の氷川日菜役や、オルタンシア(『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』)の伊津村紫役などで人気の声優・小澤亜李と結婚したことを発表した、ミュージシャン/音楽クリエイターのヒゲドライバー。リズムゲームでも人気の「回レ!雪月花」をはじめ、高橋李依が歌った「Stay Alive」や『アイドルマスター』シリーズなど、キャラクターソングを数多く手がけていることでも知られている。本稿では、ヒゲドライバーがこれまでにどんな楽曲を手がけてきたのかを振り返りながら、その音楽性の魅力を考える。

リズムゲームとの相性は抜群

 ヒゲドライバーは、家庭用ゲーム機に内蔵される8bitの音源チップを使った、チップチューンと呼ばれるサウンドを得意とすることで知られている。原点となったのは2008年にニコニコ動画で発表した楽曲「Hello Windows」で、Windows XPの効果音だけで作った楽曲としてネット界隈で話題となった(結婚後、同曲の映像には「結婚おめでとう」の文字が追加され、8月19日現在まで170万回以上の再生数を記録)。これまでに『ヒゲドライバー4UP』などのオリジナルアルバムをはじめ、『オバケものがたり』などのコンセプトアルバム、さらにトリビュート盤やベスト盤など数多くの作品がリリースされている。そうした自身の楽曲制作と並行して行われているのが楽曲提供であり、ゲーム、アニメ、声優、アイドルなど提供先の幅広さと同時に、チップチューンとはまた違った表情を見せる、多彩な音楽性にも驚かされる。

 ヒゲドライバーの楽曲は、ハイスピードのビートと早口の歌い回し、癖になる繰り返しのメロディが特徴とされている。その筆頭が、冒頭でも少し触れたTVアニメ『機巧少女は傷つかない』(2013年)EDテーマとして、同作のキャラクター=いろり(茅野愛衣)、夜々(原田ひとみ)、小紫(小倉唯)によるユニット=歌組雪月花が歌った「回レ!雪月花」だ。『BEMANI』シリーズや『CHUNITHM CRYSTAL PLUS』など多くのリズムゲームにも実装され、可愛らしい歌声とは裏腹に高速メロディで多くのゲーマーを苦しめてきた超難度の楽曲だ。

 この「回レ!雪月花」を代表に、キャラソンやゲーム関連楽曲において、その独自のユーモアセンスを発揮した楽曲でファンを楽しませてきた。それだけにリズムゲームへの登板も多く、スマートフォンゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』(以下『デレステ』)に収録された「あんきら!?狂騒曲」は、ハードコアなイントロやセリフを交えた怒濤の展開が特徴の、キラキラポップなアイドルソング。諸星きらり(松嵜麗)、双葉杏(五十嵐裕美)によるでこぼこユニット=あんきらが歌っている。

【アイドルマスター】「あんきら!?狂騒曲(M@STER VERSION)」(歌:双葉杏、諸星きらり)

 『アイドルマスター』シリーズでは他にも、シャイニーカラーズが歌う爽やかで青春感いっぱいのギターロック「シャイノグラフィ」や、切なさ溢れるダンスチューン「Dye the sky.」を手がけており、さらに『デレステ』では神谷奈緒(松井恵理子)、荒木比奈(田辺留依)、安部菜々(三宅麻理恵)による虹色ドリーマーが歌う、明るく元気なナンバー「オタク is LOVE!」などもヒゲドライバーが手がけており、人気を博している。

【アイドルマスター】「オタク is LOVE!(M@STER VERSION)」(歌:荒木比奈、神谷奈緒、安部菜々)

大胆さと緻密さが魅力なヒゲドライバーの楽曲

 他にも、ゆよゆっぺらと組んだクリエイターユニット=Heart’s Cry名義でも活動し、『Re:ゼロから始める異世界生活』第2クールのEDテーマとしてエミリア(高橋李依)が歌った名バラード「Stay Alive」が有名だ。このHeart’s Cryは、TVアニメ『蒼き鋼のアルペジオ ‐アルス・ノヴァ‐』(2013年)のキャラソンも数多く担当した。メインヒロインを務めた渕上舞、沼倉愛美、山村響によるユニット=Tridentが同作EDテーマとして歌った「ブルー・フィールド」は、スケールの大きなテクノサウンドとクールなボーカルから、アニメ界のPerfumeとして話題を集め、今も衰えぬ人気を博している。

『ブルー・フィールド』Trident Music Clip

 また、声優自身への楽曲提供も多く、平野綾のミニアルバム『FRAGMENTS』(2012年)収録曲「Sunday」は、疾走感溢れるソリッドなロックサウンドの楽曲。ヘヴィなキメのサウンドや爽快なサビ、ゆったりとした世界観のDメロなど展開の豊富さで、楽曲にドラマを与え、耳を引くファルセットがたまに出てくるのも印象的だ。

 東山奈央のソロデビューシングル『True Destiny/Chain the world』(2017年)では、収録曲3曲を手がけた(「True Destiny」はHeart’s Cry名義)。勢いのあるビートがドラマチックなナンバー「True Destiny」、熱さと切なさが同居した「Chain the world」、エレクトリックで美しいサウンドのダンスチューン「I WILL」と、ヒゲドライバーの多彩な表情がこの1枚には詰め込まれている。

東山奈央 「True Destiny」 Music Video (2chorus)

 上坂すみれの8thシングル『踊れ!きゅーきょく哲学』(2017年)収録の「最先端△ガール feat. 内田真礼」では作詞作曲を担当。〈ツン!ツン!ツン!先端!〉というかけ声や曲中でのかけ合いも楽しいナンバーで、どこか昭和的な懐かしさを感じさせるサビメロ、間奏の会話パートなど、上坂と内田それぞれのキャラクターが全編から感じられる。

 声優の声とチップチューンをベースにした音楽を組み合わせ、そこに独自のユーモアセンスをプラスすることで、数多くの人気キャラソンを生み出してきたヒゲドライバー。一方で声優への楽曲提供では、ヒゲドライバーらしさはエッセンスに留められ、曲を歌う声優本人の持ち味を充分に考慮した形で携わっている。時にギミック満載のサウンドで聴くものをアッと驚かせ、時にシンプルなメロディの力で聴く者の心を掴んで離さない。大胆さと緻密さの絶妙な塩梅が、ヒゲドライバーを人気クリエイターたらしめている。

■榑林 史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む