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『呪術廻戦』究極メカ丸の生き様とは? 「渋谷事変」で果たした役割を考察

リアルサウンド

21/3/20(土) 6:00

※本稿にはネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

 アニメ版も好調で、名実ともに「週刊少年ジャンプ」の看板作品に成長した『呪術廻戦』(集英社)。本誌の連載では一年以上続いた「渋谷事変」が終了し、新たな展開を見せているが、その「渋谷事変」の鍵を握る人物が与幸吉こと究極メカ丸だ。一部では「戦犯だ」とも言われている究極メカ丸だが、彼の心情や行動に思いを馳せてみると、その生き様は実に切ない……。

 生まれながらにして右腕と膝から下の肉体、腰から下の感覚が無く、肌は月明かりにも焼かれるほど脆く、常に全身の毛穴から針を刺されたように痛みを感じているという幸吉。全身を包帯に巻かれ、普段は建物の地下で多くのチューブに繋がれた状態でいる。だが、そんな肉体で生まれた天与呪縛として、広大な術式範囲と実力以上の呪力出力を与えられている。幸吉は術式・傀儡操術で人型ロボットを遠隔操作し、周りとコミュニケーションや戦闘を行なう呪術師。その人型ロボットは「究極(アルティメット)メカ丸」と名付けられており、京都校メンバーたちからイジられつつも愛されている。

 そんなメカ丸の夢は、直接京都校の仲間たちと会うこと。その夢を叶えるために、夏油傑サイドの内通者となっていた。条件は、真人の無為転変で自身の体を治すこと、京都校メンバーには手を出さないことの2つ。この条件からも、京都校メンバーたちへの思いの強さが伝わってくる。縛りに則って体を治してもらい、自由に動けるようになったメカ丸。五条悟に連絡を取り、夏油たちが計画している渋谷事変について伝えようするが、もちろん簡単にはいかない。真人を窮地に追いやったかと思いきや、念願叶わず殺されてしまう。

 真人との戦闘の最中、傀儡のメカ丸は「眠る」と言って幸吉の意識が通っていない状況にあったのだが、その隣には三輪霞の姿が。「今度お見舞い行っていい?」、「私はメカ丸とももっと仲良くなりたい」、「いつか会いに行くからね」と三輪が語りかけた頃には、すでに幸吉は絶命してしまっていた。三輪もメカ丸に会いたいと思っており、夢が叶う状態だったにも関わらず、無念の最期を迎えてしまったのだ。

 だが、まだメカ丸の活躍は終わらない。渋谷事変で五条悟が(偽)夏油に封印された後、「保険」と称した小さな傀儡となって虎杖悠仁をサポートするのである。離れた場所にいた虎杖が五条の封印をいち早く知り、高専関係者たちと情報共有できたのはメカ丸のお陰に他ならない。途中、脹相と戦って窮地に追い込まれている虎杖にアイデアを出すなど、良い働きもして見せている。

 そして、渋谷事変の決着が着く頃、「不発のリスクを低減させるため 事前にこの傀儡を忍ばせるのも3箇所までとしタ」という内の1体が、新幹線で東京に向かう三輪を説得していた。

 これまで、メカ丸が過去を振り返る際、出てきていたのは三輪。メカ丸が三輪に好意を寄せていたのは間違いないだろう。メカ丸にとって最期だからこそ、必死で渋谷に向かう三輪を止めようとしたのだ。しかし、頑なな三輪を見て時間が足りないと感じたのだろうか。メカ丸は「大好きな人がいたんダ どんな世界になろうと俺が側で守ればいいと思っていタ」、「その人が守られたいのハ 俺じゃなかったかもしれないのニ」と自分の思いを吐露する。そして、幸吉として「三輪 幸せになってくれ」「どんな形であれオマエが幸せなら俺の願いは叶ったも同然だ」と伝え、この世を後にする。

 最期の言葉はカタカナが混ざっていないことからも、幸吉として三輪に送った言葉なのだろう。ここまで用意周到に傀儡を残していたということは、無為転変で体を治したあと、どこかで「自分は殺される」と想定していたということ。一縷の望みを託して仲間を裏切る選択をしたメカ丸だが、そのすぐ先には常に絶望があったのかもしれない。

 振り返ってみると、メカ丸と三輪の2人のシーンは、いつも以上に映像のごとく描写されている。まだアニメ化されていないパートでも、余裕で脳内再生ができるぐらいだ。だからこそ、この2人の印象が強く、関係性が切ないと思えてくるのかもしれない。原作ファンの方はもう一度味わいながら読み返してみてはいかがだろうか。

 

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