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黒沢清が“極めて現代的な映画”「マンディンゴ」を語る、「フライシャー天才!」

ナタリー

21/3/6(土) 18:00

「マンディンゴ」フランス版ポスタービジュアル

リチャード・フライシャー監督作「マンディンゴ(デジタルリマスター版)」の公開にあたり、場面写真13枚が到着。映画監督・黒沢清らが本作に寄せたコメントも公開された。

1975年に製作された「マンディンゴ」は、「海底2万マイル」などで知られるフライシャーが、カイル・オンストットによる同名ベストセラー小説を映画化した歴史スペクタクル。19世紀半ばの米ルイジアナ州を舞台に、“奴隷牧場”を経営する父子の栄光と没落が描かれる。その人種差別的な設定に、公開当時は全米の批評家が本作を「最悪の映画」と酷評した。のちにクエンティン・タランティーノが、本作にインスピレーションを受けて「ジャンゴ 繋がれざる者」を手がけたことでも知られる。

黒沢は「これは極めて現代的な映画でもあるだろう。フライシャー天才! ゴシック・ホラーのごとき暗黒の映像が最高!」とコメント。以下には映画評論家の蓮實重彦、ミュージシャン・作家の中原昌也、スチャダラパーのSHINCO、RHYMESTER宇多丸らのコメントも掲載している。

なお劇場来場者に、本作のB4オリジナル解説ポスターリーフレットが無料配布されることも決定。表面には「マンディンゴ」フランス版ポスターが、裏面には黒沢らのコメントやフライシャー語録、解説が掲載されている。

「マンディンゴ(デジタルリマスター版)」は3月12日より東京・新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。キャストにはジェームズ・メイソン、スーザン・ジョージ、ケン・ノートン、ペリー・キング、 リリアン・ヘイマン、ブレンダ・サイクス、ポール・ベネディクトが名を連ねた。

蓮實重彦(映画評論家)コメント

幼い黒人の子供たちが扇を緩やかに揺らし、年輩の奴隷たちが穏やかに料理を配膳してゆく薄ぐらい食堂での白人たちの晩餐シーン。そこで驚くべきは、今日の合衆国が抱えている人種問題をいまから四〇年近くも前に描ききっていたことではない。ここにあるのは、問題による問題の廃棄、頽廃による頽廃の廃棄、あるいは褐色による褐色の廃棄ともいうべき美学の実践なのだ。それが今日までアメリカで評価の対象とならなかったことこそが問題なのである。聡明なリチャード・フライシャー監督の真の評価はいま始まろうとしている。誰もがその評価に加担する権利を旺盛に行使しようではないか。

黒沢清(映画監督)コメント

黒人と白人、親と子、妻と夫、およそあらゆる人間関係が最悪の結末へと至る、震えがくるような歴史暴露映画。と言うか、これは極めて現代的な映画でもあるだろう。フライシャー天才! ゴシック・ホラーのごとき暗黒の映像が最高! そしてスーザン・ジョージ凄まじい!

中原昌也(ミュージシャン / 作家)コメント

エンタメでもなく社会派でも芸術でもなく、ただただフライシャーは映画の本質を把握しているという揺るぎない真実が、ここに息を殺して潜んでいる。マディとスーザンとメイスンとペリキンらの影と陰に。

SHINCO(DJ / スチャダラパー)コメント

1975年の公開当時の社会情勢と今では比べるのも難しいですが、色々考えさせられながらも、間違いなく心に突き刺さる映画でした。

RHYMESTER宇多丸(ラッパー / ラジオパーソナリティ)コメント

「マンディンゴ」が鋭く暴きたてるのは、人種差別のおぞましさだけではない。その裏側には、女性を都合よく利用し尽くす家父長制~マチズモの欺瞞と病理が、ぺっとりと張りついているのだ。どちらも人を人として見ようとしない思想であること、そして残念ながら、2021年現在の人類が決して脱却できてはいない問題であるという点で、共通している。そしてそこにこそ、本作がいままた観返されるべき理由がある……たとえどれだけ不快な鑑賞体験となろうとも。

荏開津広(DJ / 執筆 / 京都精華大学非常勤講師)コメント

アメリカ合衆国南部、1800年代半ば。人種差別と性差別が蔓延る野蛮と迷信の支配下。物議に満ちた映画に描かれた暴力とセックスと愚かさ。でも、2020年代の世界にその欠片も残っていないと私たちは言えるでしょうか? 「マンディンゴ」を観ることは、世界と映画について考えさせる何か事故のような体験だと思います。

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