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「劇場を包み込むような空気を作れる親獅子に」歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』出演片岡仁左衛門&片岡千之助会見レポート

ぴあ

右より、片岡仁左衛門、片岡千之助

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来月1日に幕を開ける歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」。第二部の『連獅子』では片岡仁左衛門が親獅子の精を、孫の片岡千之助が仔獅子の精を勤める。仁左衛門と千之助が本興行の『連獅子』で共演するのは3度目だ。また仁左衛門は本興行においては最高齢の喜寿77歳で、親獅子の精を勤めることになる。

「(十七世)中村屋のおじさまが、今の私と同い年のころに当時の(中村)勘九郎(十八世中村勘三郎)と踊られたのを拝見して、いつか自分もこんなふうに倅や孫と踊りたいと思っておりました。私も若いうちは必死になって元気一杯に踊っておりましたし、その年代相応の親獅子を追求してまいりました。ですが正直申しまして、この年齢ですから以前と同じようには動けません。でもあのときのおじさまの親獅子が持っていた貫禄、仔獅子との対比、そして劇場を包み込む雰囲気がとても素敵でしてね。自分もおじさんのような空気を作り出せる役者になりたいと。長年の願いがかないました。そして自分への挑戦でもありますね」。

千之助にとっては祖父と『連獅子』を踊ることは目標だったという。
「子供の頃にオーパ(仁左衛門)に手紙を送ったことがあります。『連獅子』を一緒に踊らせていただきたいと。念願がかない初めて踊ったのは11歳のときです。いつもは優しい祖父ですが、この稽古から急に大先輩の役者という存在に変わり、厳しく稽古してもらいました。僕自身が谷底に落とされた仔獅子のように、そこから這い上がり追いつきたいという思いを抱き始めたことを覚えています」と語る。

後シテの勇壮な毛振りの場面でよく知られる『連獅子』だが、仁左衛門はこう語る。
「親獅子が仔獅子を鍛える場面や、後シテの部分は、お客様が歌詞を追わなくてもご覧になれば内容はわかりますよね。ですが踊りの難しさという点では、その前の場面が大変。(幕が上がり)出て参りまして、清涼山という霊山の風景、空気の冷たさ、それらをどれくらい表現できるのか。お客様が歌詞をご存じでなくても伝わるのか。踊りとしてはそこが難しい。そして後シテになってからは、兄弟ではなくあくまでも親子の雰囲気であること、そして親の子に対する愛情が大事です」

仔獅子を勤める千之助に対しても期待を込めて語る。
「(千之助が)初めて勤めた11歳のときにはよく頑張ったなと。14歳で2度目に勤めたときには成長を感じた分、歯がゆさもありました。今回はもう成人した役者です。これまではあえて作らなくても仔獅子に見えましたが、今回は逆にあどけなさを表現しなくてはならない。難しさがひとつ加わりました」

その千之助は、仁左衛門から常々「人に求められる役者になってほしい」と言われると語る。
「これは僕の役者としての目標であり、人生のモットーとなりました。そしてもうどんな形であれ、祖父から受け継げるものなら全部を受け継ぎたい」と口元を引き締める。

仁左衛門はその思いを引き取りこう語る。
「主役でも主役じゃなくても、あの人が出てきたらなんだか楽しい、見たくなる、お客様にそう思っていただける役者です。そして先輩方にはかわいがってもらい、使ってもらえる存在。たとえ気の合わない間柄でも、”この芝居を成立させるためにはなくてはならない”と思ってもらえるかどうか。そうなるためには自分を磨く、アンテナを張る、何でも吸収する、先輩方の芝居を何度も見たり研究をすることが大切ですね」

そして「自分は説明が下手なので伝わるかどうか」と言いつつこう締めくくった。
「芸は積み重ね。”なんかええな”と思ってもらえることが大事なんです。今、このように語りながら私の頭には大先輩方の数々の素晴らしい舞台がフワーッと浮かんでおります。私自身、思っていたような親獅子が踊れるかはまだまだ未知数ですが、千穐楽が済んだ時、自分なりに満足するものが踊れたと思えるよう、精いっぱい勤めたいと思います」

3度目となる祖父と孫の、親獅子と仔獅子の、そして俳優同士の芸のぶつかりあいを目に焼き付けたい。

取材・文・五十川晶子

【衣装クレジット】片岡仁左衛門丈 スーツ、シャツ、ネクタイすべてエルメネジルド ゼニア/シューズ:パラブーツ/その他スタイリスト私物 問い合わせ先:ゼニア カスタマーサービス 03-5114-5300・パラブーツ 03-5766-6688 片岡千之助丈 スーツ、シャツ、ネクタイ すべてルイ・ヴィトン/その他スタイリスト私物 問い合わせ先:ルイ・ヴィトン クライアントサービス 0120-00-1854



歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』
2021年11月1日(月)~2021年11月26日(金)
会場:東京・歌舞伎座

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