「護られなかった者たちへ」の舞台挨拶が宮城・イオンシネマ石巻で9月13日に行われ、主演の佐藤健、監督の瀬々敬久が登壇した。

中山七里のミステリー小説を原作とし、東日本大震災から10年目の宮城・仙台で起きた不可解な連続殺人事件の裏に隠された真実を描く本作。過去の放火事件で服役して出所したばかりの利根泰久を佐藤が演じ、利根を追う刑事・笘篠誠一郎に阿部寛が扮した。

舞台挨拶の前、佐藤と瀬々は映画のロケ地ともなった石巻南浜津波復興祈念公園へ。「がんばろう！石巻の会」事務局長・黒澤健一氏の案内のもと園内を巡り、「祈りの場」で献花して被災地へ思いを馳せた。「一丁目の丘」からは映画に登場する防潮堤も見え、佐藤は「公園側の景色を見るお芝居だったのですが、撮影時はほとんど更地で何もないような状況でした。今日こうして訪れ、こんなにも美しい公園になったのを見て、震災から10年経ち、ゆっくりではありますけど前に進んでいるんだなと感じました」と1年前の撮影を振り返った。

イオンシネマ石巻での舞台挨拶では、佐藤が「石巻の皆さまのご協力があったから、我々は最後まで撮影を終え、映画を完成させて、皆さんに届けることができました」と感謝を述べる。撮影エピソードを尋ねられると、防潮堤でのロケについて「すごく印象に残っています。今回、監督が水にこだわって演出されていると感じたのですが、（防潮堤での撮影では）芝居のうえで初めての感覚があって。“海を見る”感覚が変わったというか。非常に複雑な気持ちで撮影させていただき、映画としても意味のあるシーンになりました」と述懐。瀬々は「劇中では架空の都市という設定にして、石巻、気仙沼、塩釜などいろいろなところで撮影しました。印象的だったのは佐藤くん演じる利根が途中でフェリーに乗って、浦戸諸島に行くところ。風景的にほっとするような部分です」と答えた。

最後に佐藤は「この映画に描かれていることがすべてだとは思いませんし、きっと観る角度、目線によって、その数だけ正義や真実があるんだと思います。ただ、自分の大切な人を“護れる”社会であってほしい。そういった社会を作るために、1人ひとりが声を上げるんだとか、どうやって生きていくんだと考えることが重要なんじゃないかと。そんな願いを込めて作られた作品です」と改めて本作について語る。瀬々は「大変な状況でも人々は日常の生活を営み、そこには美しい瞬間や、楽しい瞬間があったりする。そういったものが壊れされていくことに対して、なんとかしたいという思いを持って撮った映画です。今後も未来へ希望が持てればと思っております」とメッセージを伝え、温かな拍手に包まれながら舞台挨拶は幕を閉じた。

「護られなかった者たちへ」は10月1日に全国で公開。

(c)2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会