ユーミン自身が語る“アルバムとその時代”
『SURF&SNOW』1980年
全8回
第3回
18/12/5(水)
アルバム『紅雀』(1978年)からは「松任谷由実」として活動するようになったのですが、実は結婚直前まで「このまま活動を続けることはできない。もう辞めよう」と思っていました。ところが結婚式で仲人の方が「これから新婦は松任谷由実として活動します」と言ってしまったものだから、続けざるを得なくなってしまって(笑)。考えてみたら、荒井由実としてのキャリアもそこまでボリュームがあったわけではないし、音楽業界にもアーティストが自分の意志で引退するという考え方はなかったですからね。“引退”という言葉が使われたのは、都はるみさんが一度、お辞めになったときが初めてじゃないかと思います。
結婚後、最初に出したシングルは「潮風にちぎれて」ですが、その時点では活動を再開するという明確な自覚はありませんでした。そのせいもあって「辞められないんだな。ここから逃れらないんだ」と気分が落ち込んでしまって。「一度名前が出てしまったら、この世界から逃げることはできない」と、赤い靴を履かされたような気分だったというか。ちょっと怖いかな(笑)。でも、本当に怖いですよ、ショービズ(の世界)は。
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