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音楽の使い方はドランらしさ全開!? 村尾泰郎が『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』を解説

リアルサウンド

20/3/9(月) 12:10

 3月13日に公開される映画『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』のトークイベントが3月6日に都内で開催された。

参考:ジェシカ・チャステインが出演していた!? 『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』本編削除シーン公開

 『わたしはロランス』『Mommy/マミー』のグザヴィエ・ドラン監督初の英語作品となる本作は、ドランによるレオナルド・ディカプリオへのファンレターから生まれた物語。孤独を抱えた俳優と彼に憧れる少年の“秘密の文通”によって明かされる死の真相を描き出す。

 トークイベントには、映画・音楽評論家の村尾泰郎と女性ファッション誌『FIGARO』の編集長代理、森田聖美がゲストととして登壇。本作について、森田は「ドランは良い意味でも悪い意味でもすごく私的なことを描く監督。それに共感できるかできないかが好きか嫌いかの分かれ目になるのかなと。この作品は、物語の構造がちゃんと練られているから、誰が何を考えているのか、一体何が起きているのかといったことが、観客にしっかり伝わるようになっているんです。ドランが作品に込めたメッセージを伝えるということに前向きだなと思いました」と感想を述べる。一方の村尾は「これまでの作品の多くが複雑な母と息子の人間関係を描いているんですけど、カメラの位置もすごく人物に近いし、一体その2人の間に何があったのかはちゃんと説明されないんです。観客はその中に入っていって、観ながら自分で気付いていかなければならない。でも、本作は物語をもっと俯瞰で描いているから、それがちゃんと分かる構造になっているんですよね」と過去作と本作の描き方の違いを解説した。

 さらに、これまでの作品とは違いドランが新たな挑戦をしていることに対して、村尾は「ドランの作品は基本的には“闘い”の作品なんですよ。愛に対してどう闘っていくか、そして生きづらい世界を自分がどう生きていくかという、いわゆる人間関係における“闘い”が多かったと思うんです。でも、本作は自分を取り巻く社会との“闘い”を描いていると感じました」と本作が内ではなく外に向かっていくようなメッセージ性の強さを持っていると語り、森田も「これまで描いてきたLGBTQの問題だけでなく、映画界で叫ばれているダイバーシティについても観客に意識させていたと思います」と昨今の映画界における多様性の問題についても言及。

 ドラン作品の魅力の一つでもある劇中の音楽について、村尾は「ドランはすごくメロドラマが好きだと思うんですけど、これまではあまりにも濃密な人間関係を描き過ぎていて、そういうことができなかったんですね。でも、終盤であの有名な『Stand by Me』が流れるところは最大級のメロドラマだし、本作における名シーンの一つだと思いますね。歌詞がそのシーンとリンクし、呼応し合っていて本当にドランらしいと感じました。オープニングではアデルの曲『Rolling in the Deep』を使っているんですが、ここも歌詞とこれから始まる物語をリンクさせているんじゃないでしょうか。ドランは過去にアデルの『Hello』のPVを監督していて、アデルには映画にも出てほしいと思っていたらしいんです。だから、重要なオープニングのシーンでアデルの曲を使ったのは彼にとってはとても大事なことだったんじゃないかと思います」とドランらしさが溢れる音楽の使いを絶賛した。

 最後に村尾は「ドランは本当に映画に対してすごく情熱的。映画が好きで好きで、彼の人生においてすごく重要なパートだと思うんですよね。今回も随所に自分が影響を受けてきた映画へのオマージュが散りばめられているんですよね。特に『マイプライベート・アイダホ』へのオマージュはとても分かりやすいですね。この作品は外の世界に向けてのメッセージでもあるし、これまで自分が影響を受けてきたすべての映画に対してのラブレターだと思う」とドランの映画に対する愛が溢れた本作の魅力を語った。また、本作のタイトルに込められた意味について、「この作品は邦題が“生と死”ではなく、原題の直訳で“死と生”になっているんですが、色々な解釈ができると思うんですけど、ジョン・F・ドノヴァンの死から物語が始まって、ルパートが前にむかって生きていく、希望が溢れる未来を魅せるラストが用意されている点が、“死と生”が示す作品ならではのメッセージだと解釈しました」と、タイトルの“死と生”に込められた意味を語り、イベントを締めくくった。(リアルサウンド編集部)

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