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水樹奈々、声優アーティストのトップランナーたる所以ーー20年の歴史感じる過去作から辿る

リアルサウンド

19/8/6(火) 7:00

 今年12月にアーティストデビュー20周年イヤーを迎える水樹奈々が、これまでにリリースしてきた楽曲とMVのストリーミング配信を各サブスクリプションサービスにてスタートした。その全58タイトルは、20年の歴史を感じさせるボリューム感であり、彼女の楽曲の魅力とずば抜けた歌唱力に改めて驚かされ、彼女が声優アーティストのトップランナーたる所以を再確認することができる。

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■J-POPと演歌/民謡を融合した表現

 声優とアーティストという二足のわらじで、声優/アニソン界のトップランナーとしてシーンを牽引している水樹奈々。群を抜くハイレベルな歌唱力には定評があり、それは幼少期からデビュー前まで演歌/民謡を習っていたことで基礎が培われた。最新アルバム『NEOGENE CREATION』(2016年)の1曲目「めぐり逢うすべてに」の随所で聴かせる独特のビブラートは、彼女のルーツにある演歌/民謡の“こぶし”をポップスの歌唱法に取り入れることで生まれた。そうした独自の歌唱法は、各楽曲の随所で聴くことができ、特にマッチするのが歌謡曲調のメロディや和の要素のある楽曲だ。「夢幻」(2009年)や「純潔パラドックス」(2011年)「悦楽カメリア」(2009年)などは、日本的な要素と妖艶さがマッチした楽曲として人気が高い。また包み込むような温かさを持った「愛の星」(2013年)などのバラードも人気が高く、『NEOGENE CREATION』のラストに収録された「絶対的幸福論」では、バンドサウンドのミディアムバラードで新しい一面を見せた。日常感があふれる歌詞と、どんなに抑えてもどうしようもなく感情がこぼれ落ちるような表現は、実に聴き応えがある。

 彼女の歌の根幹にあるのは、応援歌であるということ。「POP MASTER」や「STARTING NOW!」などが代表的で、自身の弱さをさらけ出しながら、それでも力強く前に進む姿を見せることで、聴く者に希望の光を与えてくれる。彼女自身が声優として参加するアニメ作品のタイアップ曲では、実に巧みに物語により沿いながら、聴く者を奮い立たせてくれる。

 例えばアニメ『魔法少女リリカルなのは』シリーズは、水樹自身もフェイト・テスタロッサ役で出演し、彼女にとってのライフワークのような作品として位置づけられている。これまで関連楽曲を10曲以上手がけ、それらの楽曲のいずれも、根底には聴く人の背中を押したいという願いが込められている。中でも「ETERNAL BLAZE」(2005年)では、オリコン2位を記録して転機となった。熱さのあるサウンドとメロウなメロディラインが合わさった楽曲で、切なくエモーショナルなサビが胸を締め付ける。水樹が手がけた歌詞は、幼い少女たちが戦うことの意味や、その裏側にある友情や悲しみ、温かさなどに寄り添いながら、最後にはしっかりと前を向く姿を見せてくれて胸を熱くさせる。同様、劇場版『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』の主題歌「PHANTOM MINDS」は(2010年)、声優で初めてオリコン1位を獲得する快挙を成し遂げた。アッパーの楽曲ながら切なさと儚さが同居した雰囲気の曲で、ファルセットを多用した流麗なサビメロや聴く者を惹きつけるロングトーンなど、様々なテクニックから生み出される水樹ボーカルの魅力が詰まっていて人気が高い。

■“絶唱”を引き出す3つの要素

 歌詞は、シングル表題曲を中心に水樹自身が手がけ、アニメの物語との親和性の高さに毎回驚かされる。現在第5期『戦姫絶唱シンフォギアXV』が放送中のアニメ『シンフォギア』シリーズでは、水樹は風鳴翼役で出演すると同時にOP主題歌を毎作担当。歌詞にはキャラクター名や作品に絡めた内容が自然に織り込まれているほか、「歌詞の漢字を別の読み方で歌う”というお得意とする手法も満載され、歌詞カードを開くことでリスナーに新たな発見を与えてくれる。自分自身を作品に投影し、作品とじっくり向き合いながら、しかしその先にはしっかりとリスナーの存在を見据えていることが分かる。

 このアニメ『シンフォギア』シリーズのナンバーは、速さ、熱さ、激しさ、難易度の高さから、まさしく絶唱であるとファンの間で話題だ。サウンドもそれに比例し、ハードロックサウンドをベースにデジタルと多重コーラスがミックスされた「Synchrogazer」に始まり、「Exterminate」ではそこにオペラやストリングスが加わって、「TESTAMENT」ではハイスピードのバンドサウンドと交響管弦楽団のスケール感が融合。最新シングル曲の「METANOIA」ではメタルとデジタルがミックスされ、水樹史上もっとも高いキーのハイGを使ったメロディを歌いこなす。デビュー20年目であっても、トラックの進化は止まることを知らない。

 これらの楽曲を生み出しているのが、当時はまだ新進気鋭だった上松範康らElements Gardenのメンバーだ。初期は矢吹俊郎や本間昭光を中心にJ-POP調が多かったが、「ETERNAL BLAZE」以降は多くの作編曲をElements Gardenが手がけ、バンドとストリングスやシンセが融合した、現在の水樹サウンドを確立した。またチェリーボーイズと名付けられたサポートメンバーには、伝説的なロックバンド=FENCE OF DEFENSEの北島健二(Gt)を始めとした、重鎮級のベテランミュージシャンが名前を連ねる。水樹の歌唱力の高さを最大限まで引き出すには、並大抵のトラックやミュージシャンでは務まらないということだ。

 最後に付け加えておきたいのが、水樹奈々のパフォーマーとしてのポテンシャルの高さだ。ライブの見せ場である3Dフライングでは、微動だにせず正姿勢を保ちながら、声をまったくブレさせることなく聴かせるから驚く。3時間にも及ぶライブで会場を縦横無尽に走り回るにも関わらず、息を切らせている姿や水を飲んでいる姿は一度も観たことがない。歌うための体力とパフォーマンスするための筋力を、20年維持し続けているはまさしく努力のたまものだ。

 鍛え抜かれた肉体を資本にした圧倒的な歌唱力、心血を注いだ歌詞、それを支える楽曲と演奏。サブスク解禁を機に、様々な角度から水樹ナンバーを検証するのも面白い。きっとどの曲も実に魅力的で、その根底には、歌とアニメ作品やファンへの想いと愛を感じることができるだろう。(榑林史章)

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