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“ダサくて最高のラッパー”主演「追い風」に心地いい追い風が吹く瞬間とは、初日レポ

ナタリー

20/8/8(土) 12:05

「追い風」初日舞台挨拶の様子。左から片山享、DEG、安楽涼。

「追い風」の初日舞台挨拶が8月7日に東京・UPLINK吉祥寺で行われ、主演を務めたラッパーのDEG(出倉俊輔)、監督の安楽涼、脚本を手がけた片山享が登壇した。

DEG本人の実話をベースに、人生どん詰まりを迎えたミュージシャンの姿を描いた本作。アーティストとして評価されない毎日を送っている28歳の彼は、かつて好きだった人が来る友人の結婚式でライブをすることになる。MOOSIC LAB 2019の長編部門では、DEGが最優秀男優賞とミュージシャン賞のダブル受賞を果たした。

DEGとは幼なじみであり、劇中にも友人役として出演している安楽。前作「1人のダンス」では同じく幼なじみであるRYUICHIとの実際の喧嘩を題材に映画を撮った。安楽は「DEGは小学生からの同級生でずっと本当の友達。僕は映像の監督で彼はラッパーをやっていて、僕は彼のミュージックビデオを撮ってるんです」と関係性を明かす。20年以上の付き合いだが、つらいときも悔しいときも常に笑顔を絶やさないDEGに疑問を抱くこともあったそう。「それがDEGのよさで、ずっとそれを尊重してきた。でも頭の片隅には疑問があって。映画でも描いてるんですが、ある瞬間を自分が目の当たりにした。すごくつらい状況でも必死に笑う出倉を見たんです。その姿に感動してしまって。もらったものを返そうという気持ちもあって、この映画を撮ろうと思いました」と映画の着想を語る。

劇中ではミュージシャンとして日の目を見ないDEGが、周囲との関わりの中で自分自身と向き合わざるを得ない状況に追い込まれていく。脚本を読んだときの印象を「ただただきちー!という感じでしたね」と笑って振り返るDEG。「読むだけでもキツい。フィクションも織り交ぜながらだけど、ほぼ実際に起きた話。お前ら、あのときそんなことを思ってたのかよ!って思いました」とはにかむ。安楽と共同で脚本を書いた片山は「確かに直接言わなかったことも脚本では書いてますね」とよりDEGを追い込む脚本に仕上げたことを補足する。

片山から「どういうDEGを撮りたかったの?」と問われた安楽は「僕らって今、(人生が)うまくいってないんです。僕は映画監督として、出倉はラッパーとして成功したい。彼のよさは十分わかってるから、それを撮ってもしょうがないんです。だからこの映画では、絶対に観たことのない出倉を撮らなくちゃいけなくて。それがさっき言ったDEGのダサくて最高の姿。DEGが自分と闘う姿を撮りたかったんです」と語った。

見どころを聞かれたDEGが「とにかく自分を見てください。それだけです」と胸を張ると、片山は「DEGしか映ってないので、DEGを見る羽目になります」と笑って応答。さらに「いろんな向かい風が吹きまくってる昨今。この映画は『追い風』というタイトルですが、実は向かい風の映画。でもすごく心地いい追い風が吹く瞬間もあって。生きててよかったな……僕はそんなふうに思えた」と続けた。

コロナ禍で宣伝活動にも苦労が多かったが「この夏に絶対上映する」と決めていたという安楽。「この映画がDEGの追い風になってほしかった」と作品の根底にある思いを述べながら、「DEGの追い風だけど、DEGがうまくいったら僕の人生もうまくいく。そしたら一緒にやってる片山さんもうまくいく。どんどん離れていく仲間もいて、いろんなことが変化して進んでいく。劇場もコロナ禍でいろいろあるけど、この夏に上映することから逃げたくなかった。『追い風』は観たあとに、これからのことが考えられる映画。これからを迎えられるのは、今生きてる僕らだから。一緒にDEGから追い風をもらいましょう」と観客に呼びかけ、舞台挨拶を締めくくった。

「追い風」は兵庫・元町映画館、愛知・シネマスコーレ、新潟のシネ・ウインドでも順次公開。UPLINK吉祥寺では、8月13日まで監督とキャストによる舞台挨拶とDEGの生配信ライブが連日行われる。また物販ではDEGのニューアルバム「追い風」を先行リリース。主題歌の「Shot!!!」に加え、DEGとギターの藤田義雄が即興でセッションする劇中シーンの音源も収録された。

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