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赤い公園が『THE PARK』で体現したバンドのポップネスーー津野米咲の音楽家としての感性にも注目

リアルサウンド

20/4/18(土) 8:00

 赤い公園にとって2度目の“1stアルバム”とも言える『THE PARK』は、10年後、20年後にも金字塔として語り継がれる最高傑作だ。豊潤なイマジネーション、沸き起こる衝動。赤い公園はいつだって想像の遥か先を走っている。

 赤い公園は今年で結成10周年。新体制になり5月で3年目を迎える。新ボーカルとして石野理子が加入した初めてのステージは『VIVA LA ROCK 2018』だった。事前告知なしにバンドボーカルとして登場した彼女が、まだ10代だということにその場の目撃者は驚いていたが、今振り返ると幾分の初々しさもあったように思える。

 その初々しさが徐々に消えていったのが、新体制初のワンマンツアー『Re: First One Man Tour 2019』。毎週末、東京に通い音楽制作をしていた石野が、このタイミングで広島から上京。全国を巡るツアーでの時間も相まって、一気に津野米咲(Gt)、藤本ひかり(Ba)、歌川菜穂(Dr)との距離が縮まっていく。また、このツアーでは、新体制初の新曲として発表された「消えない」のほかにも、多くの未発表曲(後にリリースされる『消えない – EP』収録「凛々爛々」「HEISEI」など)でセットリストが構成されていた。フェスやイベントへの出演、2019年に2度行われたYouTube Liveでの配信ライブ、後の『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』にも共通して言えることだが、完成した楽曲をライブで躊躇うことなく披露する赤い公園は、ライブの中で成長してきたのだ。

 忘れられないのが『消えない – EP』のリリース後に開催された『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』でのバンド全体のアップデート。そこに初ステージ、前回のワンマンツアーの面影はなく、オープニングからステージの真ん中に凛として立つ石野の姿は衝撃的だった。バンド全体が纏う雰囲気と演奏面でのグルーヴは、目に見えて大きく、強さを増し、バンドと一緒に楽曲自体も格段に変貌を遂げていた。たとえば、「消えない」Aメロ冒頭のブレイク、「Yo-Ho」ではシンセパッド、シンセベースにて、石野も演奏に参加する打ち込みビートなど、大胆なライブアレンジ。つまり、未発表曲としてライブで披露していた楽曲がリリースを迎えたとしても、その型にハマることなく、歩みを進めるのが今の赤い公園なのだ。

 今作『THE PARK』もまた、ライブで披露してきた多くの楽曲が収められている。前述の『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』で言えば、「ジャンキー」「夜の公園」「曙」の3曲。リズミカルな「ジャンキー」は、エレクトロニックで少しチャイニーズ色のあるサウンドに。「夜の公園」では、高鳴る鼓動をイメージさせる、煌びやかなシンセサイザーの音色が際立つ。

 不思議なのは、『THE PARK』には多彩なジャンル、サウンドが11の楽曲に詰め込まれているが、しっかりと一本の芯が通っていることだ。「chiffon girl feat. Pecori (ODD Foot Works)」はODD Foot WorksのPecoriをフィーチャリングに迎えたヒップホップ。これまでも「Yo-Ho」、「sea」とヒップホップの流れはあったものの、ここまでドープなサウンド、本格的なラップが登場するのは初めてだ。一方では、春の訪れを感じさせる爽やかな「紺に花」、ジャジーで微睡むようなイントロから始まる「Unite」、スタートから鋭利な爆音で疾走する3分間の「yumeutsutsu」と、それぞれのカラーはまるでバラバラ。けれど、どの楽曲も石野の真っ直ぐなボーカルが中心にあり、津野の描く主人公の心情に寄り添っていく。「Mutant」での独白も、「chiffon girl feat. Pecori (ODD Foot Works)」のラップもそう。さらに、キャッチーなポップスにも変態性が際立つオルタナティブにも振り切れる記名性の高い津野の音楽家としての感性(「絶対零度」はその両面を兼ね備えた楽曲)、ツアーを経てグッと近寄っていったバンドのグルーヴによって、一つひとつのピースの形は違っていても自然とパズルが形成されていくように奇跡的なバランスで表現された『THE PARK』の形、それが赤い公園が表現するポップネスだ。

 津野が描く曲には主人公がいる。受け手のそれぞれの解釈に間違いはなく、きっと正解もないだろう。中でも「ソナチネ」は、2人の登場人物が並んで歩くその情景、時間の経過が巧みに描かれていつつも、その歌詞の“余白”が美しい楽曲。津野の優れたソングライティングの才を感じさせる。

 時に、その主人公は赤い公園でもある。〈こんなところで消えない/消さない〉と綴られた「消えない」は、ボーカルが脱退した赤い公園と歌い手として行き場をなくした石野の思いが合致した、新体制のスタートを切るのに相応しい楽曲だった。そんな新たな誓いにも似た津野の思いは、石野と出逢うために、4人で鳴らす今日のために、今までずっと取っておいた“さくら”の花を咲かせてくれたという「紺に花」、“赤い公園”というエンブレムのもと〈一人じゃないのさ〉と叫ぶ「KILT OF MANTRA」、〈行こうぜ/うつくしい圧巻の近未来/絶景の新世界〉と導く赤い公園からの招待状「yumeutsutsu」にも、強く表れている。

 津野が毎年、赤い公園のホームである立川BABELで主催してきた『こめさくpresents もぎもぎカーニバル復刻版2020』。アンコールで津野は、今年、赤い公園は10周年であるけれど、0歳の気持ちでもう一度赤い公園を始めるのだと話し、バンドは「曙」を披露した。〈スタートラインを踏み出す/ぼくらのように〉。まだまだ赤い公園の物語は始まったばかり。この道の先には、絶景の新世界が待っている。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter



『THE PARK』通常盤の画像
『THE PARK』通常盤

■リリース情報
『THE PARK』
発売:2020年4月15日(水)
予約

<初回生産限定盤>
仕様:CD 2枚組(Disc 2:2019年に行われたYouTube Liveの音源全8曲を収録)
品番:ESCL-5383~4
価格:¥3,273(税抜)

<通常盤>
品番:ESCL-5385
価格:¥2,727(税抜)

収録曲:
01. Mutant
02. 紺に花
03. ジャンキー
04. 絶対零度
05. Unite
06. ソナチネ
07. chiffon girl feat. Pecori (ODD Foot Works)
08. 夜の公園
09. 曙
10. KILT OF MANTRA
11. yumeutsutsu

<Disc2> ※初回限定生産盤のみ

2019年に行われたYouTube Liveの音源を収録
2019.07.04 at TUPPENCE HOUSE I’S STUDIO / 2019.11.27 at SHIMOKITAZAWA GARAGE
01. 衛星 (broadcast edition)
02. Beautiful (broadcast edition)
03. 未来 (broadcast edition)
04. 石 (broadcast edition)
05. おそろい (broadcast edition)
06. Unite (broadcast edition)
07. Highway Cabriolet (broadcast edition)
08. 輝き (broadcast edition)

<赤い公園「THE PARK」購入特典情報>
対象店舗/特典内容:
・赤い公園応援店 ・・・ オリジナルステッカー(Type.A)
対象店舗はコチラ
・TOWER RECORDS全店(オンライン含む/一部店舗除く) ・・・ オリジナルステッカー(Type.B)
・楽天ブックス ・・・ オリジナルステッカー(Type.C)
・Amazon.co.jp ・・・ メガジャケ

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