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杉咲花、『おちょやん』で体現する王道朝ドラヒロイン像 泣き笑いの演技で新たなステージへ

リアルサウンド

21/1/9(土) 8:00

 “朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説は、放送5週目あたりからグッと面白さが増す。多くの作品は主人公の幼少期から始まることもあり、主演を務める俳優が本格登場するのは第3週目からが定番となっている。主人公を取り巻く人物と時代に視聴者も慣れ、物語の方向性がはっきりしてくるのも、大体5週目頃。現在放送中の『おちょやん』もまさにそうで、ヒロイン千代が自分の夢に向かって一歩を踏み出したところだ。

 毎日放送される朝ドラは、ほかの作品と同じように「視聴する」というよりも、「生活の一部」に組み込まれている視聴者も多いことだろう。朝ドラに何を求めるかは人それぞれだとは思うが、毎日放送される作品だからこそ、朝の活力になるような物語を観たい視聴者が大多数のはず。自ずと、主人公は明るくポジティヴ、逆境にも果敢に立ち向かっていくキャラクター像がこれまで多かった。『おちょやん』の主人公・千代は、まさに王道の朝ドラヒロイン像を具現化したようなキャラクターとなっている。

 そんな千代を演じているのが杉咲花。本格登場してからまだ3週だが、毎話ごとに感嘆してしまう演技をここまで見せてくれている。朝ドラには『とと姉ちゃん』に高田充希演じるヒロインの妹役で出演、ドラマ・映画に主演作もあり、その演技力の高さは疑いようがなかったが、『おちょやん』竹井千代は今までのどの演技とも違う、まさに新境地と言えるものになっている。

 もちろん、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』、主演ドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』、『無限の住人』、『パーフェクトワールド 君といる奇跡』、『十二人の死にたい子どもたち』、『青くて痛くて脆い』など、どの作品でもそれぞれ違う顔を見せてくれてはいた。ただ、どこか“陰”を背負った、多面的な人物というのが、これまで杉咲が演じてきたキャラクターの共通点としてあったと言えるだろう。

 一方、『おちょやん』千代はとことん“陽”の人物。千代が悩み、泣き、苦しむシーンもあるのだが、どこかカラっとした爽やかさ、その後にすぐに立ち直り前に進んでいく強さがある。千代の魅力、杉咲の芝居の凄さが溢れていたのが、第4週の第19話。天海天海一座の千秋楽に急遽役者として出演することになった千代が、自身の本音を役の台詞としてぶつけるシーンだ。

 このシーンの杉咲は千代を演じながら、劇中でさらに千代として役を演じるという2重の芝居をしている。千代として芝居が巧み過ぎても駄目で、演技素人として光るものがなさ過ぎても駄目。千代は緊張のあまり台詞が飛んでしまい、自分の本音をそのまま役の言葉として発する。

「嫌や! うちはどこにも行きとうない! ずっとここにいてたい。岡安にいてたいんや! もう一人になんのは嫌や……」

 芝居を超えた千代のまっすぐな思いが観客の心を動かしたと同時に、『おちょやん』を観ている視聴者の心も動かした。泣き芝居でありながら、どこか滑稽さもあり、それでいて芯の強さを感じさせる芝居。過去の杉咲の出演作の中でもここまで感情をむき出しに、しかもまっすぐに届ける演技はこれまでなかったように思う。

 随所に挟まれるドスの利いた関西弁、アドリブ(?)と思われるコミカルな動きもこれまではあまり見ることができなかったもの。まだ始まって5週だが、ここまで喜劇をものにできる役者だったことに驚くばかりだ。

 第5週を終えて、いよいよ千代は本格的に女優への路を歩みだす。劇中劇が増えていくと思われる中盤・後半、さらなる杉咲の凄さが見られそうな気がしてならない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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