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2021年の基準は『トップガン マーヴェリック』?  混乱するハリウッド映画の最新動向

リアルサウンド

21/1/28(木) 19:00

 先週末の動員ランキングは『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が土日2日間で動員11万2000人、興収1億8400万円をあげて1位。これで、興収では公開から15週連続1位となっている。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は1月27日に韓国でも公開されて、初日だけで約6万6000人を動員。同日の観客動員数全体の40%以上を占める好スタートをきっている。

 さて、そんなアジアの映画興行とは打って変わって、アメリカの映画興行はいまだ闇の中を彷徨っている。現在、アメリカでは約5400館ある映画館のうち、営業している映画館は35%に過ぎない。しかも、国内のトップ10の都市ではどこも営業している映画館がないという状況だ(Studios Hold Out Hope for Theaters’ Return to Normalcy|The Hollywood Reporter)。そして、その必然として、これまで公開延期を繰り返してきた大作映画のさらなる延期の発表がここにきて相次いでいる。

 先週だけでも、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が4月から10月に、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が4月から9月に、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』が6月から11月への公開延期を発表。いずれの作品も2度目や3度目の延期となり、映画ファンとしては「またか……」とため息をつくしかない状況だ。昨年ワーナーが公開に踏み切った『TENET テネット』と『ワンダーウーマン 1984』は、北米での成績だけではなく、世界興行全体においても今では失敗とはっきり位置付けられていて、それも他のハリウッド・メジャーの慎重な姿勢につながっているようだ。

 しかし、そこには昨年までにはなかった、二つの傾向も見られる。一つは、バイデン大統領就任を受けて、政府の新型コロナウイルス対策にこれまでになく強い期待が寄せられていること。夏までにはワクチンの接種も進むとみられていて、なんとか2021年の秋までにはトンネルを抜けるだろうという見通しのもとで映画産業全体が動き始めている。今のところ、7月2日全米公開予定の『トップガン マーヴェリック』が一つの目安になっていて、それ以降の公開作品は公開日を極力動かさない方向で準備が進められているとのことだ。

 もう一つは、昨年多く見られた中規模作品のストリーミングサービスへの売却の動きが鈍っていること。先に挙げた作品の中では『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』がそれに当たるが、先がまったく見えない中での苦肉の策としてのストリーミングサービスでの公開ではなく、ここまできたら劇場再開を待とうというムードが映画業界において生まれているという。『トップガン マーヴェリック』の7月2日を基準とするなら、それまでに公開予定の『ブラック・ウィドウ』(5月7日全米公開予定)、『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(5月28日全米公開予定)、『Venom: Let There Be Carnage(原題)』(6月25日全米公開予定)などは公開延期が予想されることになるわけだが、仮にさらに公開延期になったとしても(これまでの流れからいくと、最もありえそうなのは『ブラック・ウィドウ』のディズニープラスでの公開だが)、ストリーミングサービスで公開されることはないと見られている。

 一方、昨年11月に早々と2021年公開作品のすべてを劇場公開と同日にストリーミングサービス(HBO Max)で公開すると決定したワーナーは、5月から急遽2ヶ月間前倒しして3月26日に世界公開することになった『ゴジラ VS コング』を、今度は北米だけ5日間遅らせて3月31日に公開する、と少々混乱気味。『ゴジラ VS コング』がさらに複雑なのは、日本ではワーナーではなくゴジラの権利の関係で「東宝グローバルプロジェクト」として東宝が配給する作品であること。ただでさえ多くの作品が公開延期となっている東宝にとって、ここにきて世界公開や北米公開の急なスケジュール変更は大迷惑だろうが、果たして日本でも本当に3月中に公開されるのだろうか? 続報を待ちたい。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『トップガン マーヴェリック』
2021年 全国ロードショー
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:クリストファー・マッカリーほか
製作:ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー、デヴィッド・エリソン
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリスほか
配給:東和ピクチャーズ
(c)2021 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://topgunmovie.jp/
公式Twitter:@TopGunMovie.jp
公式Instagram:@TopGunMovie.jp

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