Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

稲葉友の「話はかわるけど」

レコメンド×トーク×スクラップ【中編】

毎週連載

第140回

続きを読む

コンテンツから得る気づきは、家の中から一歩も出なくても、頭の中で無限に広がっていくものです。稲葉さんが現在進行形で楽しんでいる知の面白さ、ぜひ共有してみましょう!

今の時代エンタメに触れて生きていると思わずお勧めしたくなるコンテンツに出会ってしまうことがあるはず。面白いもので溢れてるものね。で、ふと思ったのが、人とご飯や飲みに行けた頃はこういう話をしょっちゅうしていたなと。この人が勧めるものは間違いないって人が僕の周りには何人かいる。そういう審美眼に信頼が置いている人と会うと毎回「なんか面白いのあった?」「おれはこれが面白いと思ったんだけど」なんて話をしていたものだ。そしてお互いのお勧めを既に見ていたら、何が面白かったとかここが分からなかったとか、そういう話を延々としていたなと懐かしくなった。今思うと僕の中ではそういう会話をすることがとても楽しいことだった。

僕はこんな状勢になる前から観劇や映画鑑賞は一人で行っていた。価値観が合ってスケジュールも合う人と行くのは難しいから。ただ演劇にいろいろ関わらせてもらっていると、客席に結構な頻度で知り合いがいる。終演後にはどちらともなく「せっかくだからちょっと飲みに行こう」というのが定番だった。食べながら飲みながら近況報告をしたり、「あの芝居のここが良かった」なんて話をしたりして。出演していた人と飲むことも勿論あったけど、ネタバレを気にすることなくあそこが好きとかあそこが分からないとか話す心地よさは、何にも代えがたいものだった。

前回に引き続きコンテンツのお勧めに戻るけど、次はYouTubeチャンネルから。ピースの又吉さんの『ピース又吉直樹【渦】公式チャンネル』というYouTubeチャンネルが観ていて楽しい。その中の『インスタントフィクション』を取り扱うシリーズがとにかく面白い。

『インスタントフィクション』とは「自由な発想と気軽なノリで書かれた文章。読書しない人でも遊びで挑戦できる。」と定義されていて、唯一のルールが「原稿用紙1枚=400文字の中に自分の思う『面白い』を入れる」というもの。それを又吉さん演じる髑髏万博先生が勝手に妄想で解釈していくのだが、その読み解き方がとても自由かつ腑に落ちて気持ちがいい。

「この文や台詞はどういう意味なんだろうか」というのを詰めていく作業が、台本を読み解いていく作業に似ている気がしてそこにまず親近感を持った。作業としては似ていても、ゴールは違うものという認識はあるのだけど。これに関しては「違うけど似ている」という感覚は新鮮だったし、他人がそういうことをやっているのはあまり見られるものでない。

全体を読み通してみて、そこからひとつずつ分解していき「これはこういうことを指しているんじゃないか」「こういう意味が含まれるんじゃないか」「実はラストシーンのここにつながるんじゃないか」というのが浮き上がってくる。ただそれも合っているかどうかは分からない。作者ではないから。

しかし読み手が書き手の「たぶんこういうことを書きたかったんだろう」という解釈を広げていくのは、実は自由なんだということを教えてくれる。見ながら一緒に「へえ~」と思うこともあれば「僕はこう読んだ」と思うこともあるのもまた楽しい。学生が見ても楽しいだろうし、大人でも文章を読むのが好きなら別角度からの刺激になると思う。芸人さんがやっている企画だから笑えるうえ、芥川賞作家の解釈が見られるのも贅沢な話。

最近はいろいろな準備で文字や文章や脚本と向き合いまくっているのだが、息抜きにこのチャンネルを選んで見てしまう。孤独な作業に広がりと癒しを与えてくれるのでお勧めであります。

次回の更新は9月15日(水)です。お楽しみに!

プロフィール

稲葉友(いなばゆう)

1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。
2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー後、ドラマ、映画、舞台と幅広く活動。
主な出演作に、ドラマ『仮面ライダードライブ』(‘14~’15 EX)、『MARS~ただ、君を愛してる~』(’16 NTV)、『ひぐらしのなく頃に』(’16 BSスカパー!)、『レンタル救世主』(’16 NTV)、『将棋めし』(’17 CX)、映画『ワンダフルワールドエンド』(’15)、『HiGH&LOW』シリーズ、『N.Y.マックスマン』(’18)、『私の人生なのに』(’18)、舞台『すべての四月のために』(’17)、映画『春待つ僕ら』(’19)『この道』(’19)など。
J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30~16:00生放送)ではレギュラーパーソナリティ―を務める。

撮影/奥田耕平、取材/藤坂美樹、構成/中尾巴、ヘアメイク/速水昭仁、スタイリング/添田和宏、衣装協力/カットソー¥19,800/アタッチメント(シアン PR TEL:03-6662-5525)
中に着た半袖シャツ¥10,780/バンクス ジャーナル(ジャングルジャム TEL:03-6452-5282)
パンツ¥39,600/クティス(クティス info@cutistokyo.com)
サンダル¥3,630/ベンチ(リアルスタイル TEL: 0745-43-6355)
ネックレス¥8,800/モリーヴ(チャコールグリーン トーキョー TEL: 03-5410-8186)
メガネ¥55,000/ルノア(グローブスペックス エージェント TEL:03-5459-8326)
その他スタイリスト私物

アプリで読む