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TOWA TEIが語るポップの定義「ほんの一瞬でもテイ・トウワっぽさが耳に残るようにしたい」

リアルサウンド

14/9/16(火) 12:01

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 TOWA TEIが、ソロ活動20周年を記念したリミックスベストアルバム『94-14 REMIX』を7月23日にリリースし、9月3日に20年間に発表してきた楽曲の中からセレクトしたオリジナルソングのベストアルバム『94-14』と、カヴァーソングのベストアルバム『94-14 COVERS』をリリースした。今回リアルサウンドでは、TOWA TEIの他に例を見ない音楽キャリアをたどるロング・インタビューを実施。前編で語ったソロ活動前史を語った前編に続き、後編ではCD全盛期から現在までの音楽シーンの変遷と自身の制作方法、さらには長年の活動の中で見出したポップ論についても語ってもらった。聞き手は小野島 大氏。(編集部)

「ラウンジ・ブームの先駆者みたいに祭り上げられた時はびっくりした」

ーーそれがファーストアルバムの『Future Listening!』(1994年)ですね。ところでDJという仕事は、お客さんを楽しませることが第一義だから、いわば職人的な面も強く求められますよね。

テイ・トウワ:僕ら職人だと思いますよ。一種のサービス業。アートフォームに昇華してる方もいますけど、僕はそんなおこがましいことは言えない。

ーーでもそうした頼まれ仕事的なリミックスワークをこなすうち、サービス業だけではない、自分の中のアーティスティックな衝動のようなものを確認したということですか。

テイ・トウワ:いや、そのその時点でもぼんやりとしかわかってなかったですね。とりあえず目先のファーストアルバムを出すことになって。ちょうど29歳ぐらいの時だったと思うんですよ。なんとなく30歳までに完成したいなあと、よくわかんない目標を自分で作って、ぎりぎり間に合ったんですけど。でもディー・ライトのDJのソロ・アルバムって、みんなキアーのソロは期待するだろうけど、一番寡黙な東洋人がソロだしても相手にもされないんじゃないかと、ちょっとビビってたんです。ところがヨーロッパ、特にドイツ、フランスあたりでラウンジ・ブームの先駆者みたいに祭り上げられちゃってびっくりしました。日本では小西(康陽)さんとかサバービア橋本(徹)君とか、ああいう人たちみたいなのを聴いてる人たちが10人ぐらいーー100人かもしれないけどーー買ってくれるかもしれないなあ、と思ってたんです。

ーーそりゃ謙虚すぎです(笑)。

テイ・トウワ:そういえば、昔岸野君に言われたことがあって。”テイ君、絶対100枚以上売れるようなアーティストになったらダメだよ”って(笑)。100枚売れるようなセルアウトだけはやめてくれって(笑)。

ーー(笑)岸野さんにそんなこと言われたんですか。100枚どころか何百万枚…

テイ・トウワ:ディー・ライトの日本公演のあとに岸野君に会ったんだけど、700万枚売れてどう思ったのかなあ…。

ーー今度聞いてみてください(笑)

テイ・トウワ:僕もびっくりしましたけどね。なんでソロになっても思ったよりもうまく行っちゃって、現在に至ってる感じですね。

ーーちょうどディー・ライトでテイさんが出てきた時期は世の中がいわゆるバブル好況の時代に突入する時期でした。そしてセカンド・アルバムの『SOUND MUSEUM』がリリースされた1997年に日本国内のオーディオソフトの総生産実績はピークに達して、その後はずっと音楽業界の売り上げはシュリンクし続けています。つまりテイさんは音楽業界が景気が良かった時期と悪くなった時期の両方を経験されているわけですが、そうした経済動向は音楽の制作現場で感じることはありますか。

テイ・トウワ:10年前ぐらいから、あれれれ、こりゃ厳しくなっていくな、というのは感じてたし、教授とかも“CDはもうなくなる”って断言してましたね。僕は、なくなりはしないだろうなとは思ってて。希望も含めて、パッケージを作るのが好きなんで。もともと、好きな音楽のグラフィックに関わりたくて美大にいこうと思ってたんです。

ーーYMOのベスト盤のジャケットデザインをやられてましたね(『YMO GO HOME!』1999年)。

テイ・トウワ:ええ。それは僕が周りの経済状況などとは関係なく音楽をやり続けていたおかげだと思うんです。いつもジャケットを自分でやっているのを見てくれて、テイ君にって細野さんが言ってくれたから。音楽やっててよかった、音楽を好きになってよかったと思いますね。

ーーテイさんは「Sweet Robots Against The Machine」やその後の『FLASH』が自分の音楽のあり方のひとつの変わり目だったとおっしゃってますが、それはそうした経済動向と関係していますか。

テイ・トウワ:そもそも<関係ない>ことってないと思うんですよ。いろんなことが関わり合っている。26歳の時にディー・ライトを始めて、今50歳じゃないですか。26の時に50の気持ちなんてわからない。50になった時に、26のころの何も考えてないことは、なんとなく覚えてますけどね。ステージがどんどん変わっていくわけで、ずっと同じ面にいたいと思う人もいると思うんですけど、なんとなく僕は流されて面が変わっていってるのかなあ、と。それから、ぶっちゃけ35歳の時に軽井沢に家を建てて。それもひとつの変わり目ですね。僕がそれまで住んでたところって横浜、東京、ニューヨークと都会しかなかったから。引っ越そうと思ったのは子供の体調ですね。小さい子はアトピーとか喘息とか、そういう発作がいつ起きてもおかしくない。子供は元気でさえいてくれればいいから、受験なんてどうでもいいしね。で、同じころに税理士に、スタジオ兼事務所と自宅の家賃だけですごい額を払ってますよって言われて。

「なんかわからないけど、ひっかかるようなものを作りたい」

ーー軽井沢に家を越したのが2000年の4月だということですが、ちょうどその時期がいろんな時代の節目だったと思うんですよ。

テイ・トウワ:そうそうそうそう。

ーーまりんや小山田君、バッファロー・ドーターの山本ムーグさんあたりと話していると、だいたいそのあたり(2000年前後)に時代の変わり目があって、音楽制作に関する考え方や姿勢が変わってきたという話になりますね。それまでは中古盤屋で誰も知らないネタを血眼でディギングするような、情報の処理の仕方や消費の傾向や速度によって個人のアイデンティティが規定されていたけど、1997年にCD売り上げが頭打ちになって、そういう情報に振り回される情報万能主義的な時代が終わって、ごくふつうの生活者としての内発的でミニマルな感覚が重視されるようになった、と。彼らの音楽もそこらへんを境に大きく変わっていく。同様な変化がテイさんにもあったのではないかと。

テイ・トウワ:なるほどなるほど。ちょうど僕がそうでしたね。僕は1999年から準備を始めて2000年の4月に引っ越したんですけど、ちょうどSWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINEの『TOWA TEI』の制作途上だったんです。ほぼ完成していて、軽井沢に行って仕上げだなと思っていたんですけど、いざ軽井沢で作業を再開したら、どうも違和感があって。当時使ってたREAKTORというアプリがバギー(バグが多い)なこともあって、そこから修正するのに結構時間がかかっちゃって。でも当時はバブルの残り香があったので、当時の事務所もどんぶり勘定で、”まいっか”って(笑)。結局2002年に出ることになりましたね。

ーーでもそれを境目に、よりシンプルな方向に。

テイ・トウワ:そうそう。その反動で、REAKTORを捨てて、倉庫からアナログのマシンを出してきて、ツマミをグリグリするようなフィジカルな方向に立ち戻ったんです。そしてそこで制作用のPCを初めてノートブックにしたんです。新幹線の中でも制作が可能な態勢になった。それがすごく大きかったですね。

ーーより日常に密着したような制作態勢になった。

テイ・トウワ:あとその時、長年使ってたDAWのアプリを変えたんです。メインのシーケンサーを。もう既になくなってしまったメーカーなんですが、僕はそれしか使えないからしつこく使ってた。NY時代はアドバイザーもやってたぐらい使いこなしてたアプリだったんですけどね。で、変えてみたら、それまで使えてた機能がいろいろ使えなくなってた。

ーーああ、それは結構大きいですね。

テイ・トウワ:大きいですよ!

ーーでもそれはある意味諦めがついて、ふんぎりがつけやすくなりますね。

テイ・トウワ:そうですね!かといって『FLASH』(2005年)が『Last Century Modern』(1998年)に比べて打ち込みが貧弱になってるとか、そういうこともないでしょ。

ーー制作環境がフィジカルに、ミニマムに、シンプルになることで、音楽制作に対するアプローチもシンプルに、無駄のないものになったんじゃないでしょうか。実際の音の印象も変わってきてる。ちょうどコーネリアスが『FANTASMA』(1997)から『POINT』(2001)で激変したときと同じような印象がテイさんにもあって。どこかシンクロしてるようなところもあるのかなと思ってました。

テイ・トウワ:そう言っていただけると嬉しいです。

ーー時代の変わり目において、音楽はそれを敏感に反映するものだなと。

テイ・トウワ:そうですね。それはあるんじゃないですかね。僕の場合、人生初田舎っていうのもあると思いますけど(笑)。

ーーそんな中でずっと変わらないテイさんのテイストってありますよね。モダンで都会的でソフィスティケイトされてるし、何よりポップで。

テイ・トウワ:そうですね。インタビュアーの人はみんな聞くんですよ。”近い将来は○多郎みたいになるんですかね”って(笑)。

ーーなんすかそれ(笑)。

テイ・トウワ:シンセパッド音楽みたいになるんですかね、って。なんねえよそんなもん!(笑)。

ーー(笑)そのテイさんのポップ・センスなんですが、ポップであろうという意識は常にあるんでしょうか。

テイ・トウワ:ポップっていうか僕は…“ファンク”でもいいんですけど…たとえば大滝詠一さんとかたまに聞くと、ポップスであろう、王道であろうという強い意志を感じるじゃないですか。山下達郎さんしかり。マニアックなようで最終的には王道のポップスであるという。僕はそういうのとは全然違ってーー今や特殊音楽家だと思ってますけどーー特殊音楽家なりに、TVCFなどで15秒の勝負になった時、ほんの一瞬でもテイ・トウワっぽさが耳に残るようにしたい。なんかわからないけどひっかかるようなものを作りたいんですよ」

「<テイ・トウワ印>を押せそうなものが、手際よくできるようになってきた」

ーーそれがテイさんのポップの定義。

テイ・トウワ:うん。“ポップ・アップ”というか。昔そういうのを(海外では)ファンクって言ってたらしいですね。耳にひっかかること。

ーーその「ひっかかるポイント」は、別にメロディでもいいしリズムでもいいしフレーズでもいいし音色でもいい、なんでもいい。

テイ・トウワ:そうです。そのセットというかミックスというか。ダブ処理かもしれない。でもダブ処理にしても、その元となる音楽が良質じゃないとつまらないですよね。

ーーリミックスがいくら良くても原曲がつまらないと意味がない、のと同じですね。

テイ・トウワ:そうそう。昔はよく頼まれましたよ。箸も棒にもかからないようなつまらない曲を、どうにかしてリミックスでクラブ・チャートに入れてくれ、って(笑)。お金ならいくらでも出しますから、って(笑)。こりゃできないよ無理ですよ、みたいな(笑)。

ーー昔エイフェックス・ツインにインタビューした時、リミックスを引き受ける時の基準は何か尋ねたら、良い曲はいじらない方がいいからやらない、ダメな曲をリミックスで聴けるものにするのが面白いんだ、みたいなことを言ってました。

テイ・トウワ:ああ、それもあるかもしれないなあ。

ーーま、それはたぶん冗談で言ってたと思うんですけど(笑)。

テイ・トウワ:でも、やっぱりマルチ開けた時に“ひでえなあ”っていうのは関わりたくないですよ(笑)。関わりを持ちたくない。苦手な人と仕事したくないって心理と同じですよ。音の場合顕著で、空気の振動ですからね。ヴァイブですからね。”なんでもいいから金なら出すんで、とにかく売れるものにしてくれ”みたいな悪いヴァイブに関わったらまずいんですよ。

ーーなんでもかんでもやってる人っていますけどね。

テイ・トウワ:そういうのって…なんか患ったりするんじゃないですか(笑)。

ーー確かにそれで才能が浪費されていくっていうのはあるかも。

テイ・トウワ:だから…ブームになっちゃうとみんな持ち上げるし、猫も杓子も。誰々ミックス誰々プロデュースがもてはやされて、あっという間に飽きられて忘れられちゃう。最近はそういう感じのヴァイブは世の中からなくなったんで良かったですけどね。誰がリミックスしようが誰がプロデュースしようが、そもそもCD売れねえや、みたいな(笑)。そんな時代になってるんで。

ーーさっきテイさんは、自分が自然に作ると暗いものになる、とおっしゃってましたよね。それと、耳に残るようなポップなものを、という考えはどうやって折り合いをつけてるんでしょうか。

テイ・トウワ:ソロになってから20年やってきて7枚のアルバムを出してきて、それとは別にSweet Robots名義で出しましたよね。あれを出したとき、本名のテイ・トウワ名義から離れて自由にやりたいという気持ちがあったんです。この気持ちの変化に今までのファンはついてこられないかもな、っていう時にSweet Robotsの名前を使ったんですけど、今やどれも一緒というか。全部テイ・トウワでいい気がするんですよ。ただ人に聞かせるものだし耳に入れるものだから、音響公害にはしたくないというか.

ーーつまりナチュラルに出来てくるものは、そのままでは人に聞かせるようなものにはならないということですか。

テイ・トウワ:いや、今はなりますよ(笑)。20年もやってると、ある程度はね。最近ようやく自信が持てたというか。僕は何もないところから次々と新しいものを作れるような才能はないから、作曲にしてもリミックスひとつにしても長い時間をかけてやってたんですけど、最近は短い時間でできるようになってきた。自分なりの<テイ・トウワ印>を押せそうなものが、手際よくできるようになってきたんですよ。それは長く経験を積んで続けてきたことで出来てきた自信だと思いますね。

ーーツボがわかってきた、ということですか。

テイ・トウワ:わかったようでいて、そのツボを繰り返したくないから、時間がかかるんですけどね。まったく同じことはやりたくないから。でもまあ…なんとかここまでやれてきて。感謝の気持ちで一杯なんですけど、これからはよりわがままになって、より仕事を選んでいこうかと。

ーーでも今回のベスト盤を聞かせていただいて、古いものも新しいものもまったく違和感がないですね。曲順は時系列逆に並んでますけど、まったく気にならなかった。一貫したものがあるんだなと。

テイ・トウワ:嬉しいなあ。僕もそう思ったんで、そうしました。もともとDJなんでね、曲順考え出したらキリがないというか、どうにでもなっちゃうんですよ。で、どうせなら新しいものから順に並べていこうと。でも最後の「甘い生活」(『Future Listening!』収録)が終わって、ループ再生でまた最初の「Apple」(『LUCKY』2013年収録)にいくところは違和感なく聴けるように、とは考えましたね。

ーーなるほど。ループ再生のことまで考えて。

テイ・トウワ:考えてますよ(笑)。ふふふ。…てことにしといてください(笑)。

(取材・文=小野島 大)

■リリース情報
『94-14』
発売:2014年9月3日
価格:¥2,800(税抜)
Artwork:Barry MacGee
〈収録曲〉
1.Apple
with Ringo Sheena
2.Radio
with Yukihiro Takahashi & Tina Tamashiro
3.The Burning Plain
with Yukihiro Takahashi & Kiko Mizuhara
4.Marvelous
with Yurico
5.Mind Wall
with Miho Hatori
6.A.O.R.
with Lina Ohta
7.Taste of You
with Taprikk Sweezee
8.Sometime Samurai
with Kylie Minogue
9.Milky Way
with Yukalicious, Joi Cardwell & Ryuichi Sakamoto
10.Latte & Macaron
11.Mars
with Ikuko Harada(Clammbon)
12.Butterfly
with Ayumi Tanabe & Vivien Sessoms
13.Let Me Know
with Chara
14.Happy
with Vivien Sessoms, Bahamadia & Bebel Gilberto
15.Time After Time
with Amel Larrieux & Vivien Sessoms
16Luv Connection
with Joi Cardwell & Vivien Sessoms
17.Technova
with Bebel Gilberto
18.Amai Seikatsu
with Maki Nomiya

『94-14 COVERS』
発売:2014年9月3日
価格:¥2,600(税抜)
Artwork:TOMOO GOKITA
〈収録曲〉
1.Last Century Modern ~ Technova(94-14)
with INO hidefumi[* New Recordings]
2.Hold Me Tighter In The Rain
with Vivien Sessoms[* New Recordings]
3.Mars(94-14)
with Aoi Teshima & Ikuko Harada[* New Recordings]
4.Siesta(94-14)
[* New Recordings]
5.Get Myself Together
with Taprikk Sweezee
6.Free
with Rozz, Vivian Sessoms & Juiceman
7.My Sharona
with Tycoon Tosh & Buffalo Daughter
8.Last Century Modern(94-14)
[* New Recordings]
9.Funkin’ For Jamaica
with Joanne, Les Nubians, Wizdom Life & Tom Browne
10.Forget Me Nots
with Joi Cardwell & Vivien Sessoms
11.Batucada
with Bebel Gilberto
12.Private Eyes(94-14)
with Bebel Gilberto[* New Recordings]

■20TH ANNIV. SPECIAL SITE
http://wmg.jp/towatei20th/

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