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城田優、J-POPカバーアルバム『Mariage』から溢れ出す“自分の世界” その瞬間の感情が乗る歌声の深み

リアルサウンド

20/12/9(水) 19:40

 城田優が歌うと、その曲は、すぐに城田優の歌になる。例えそれが、世代を超えて長く愛されてきたスタンダードナンバーや数多くの人がカバーしている名曲でもあっても、彼が口を開き、あの甘くも哀感のある声を発すると、一瞬にして、それはまるで彼にしか歌えない曲であるかのように聴こえる。しかも、同じ曲であっても聴くたびに少し印象は変わる。メロディラインとテンポは変わっていない。ピッチは安定しているし、リズムも正確だが、常に“今、この瞬間”の感情が乗っかっているのだ。32歳と34歳で違う歌声になるだけでなく、昨日と今日という短いタームでも間違いなく違う響きを湛えているし、明日はまた、今日の経験を加えた昨日とは違う城田優にしか歌えない曲になる。だから、彼の歌は何度でも聴きたくなるし、彼がどんな日々を送り、どんな人に出会い、どんな作品と向き合ってきたのかも気になってくる。

 日本人の父とスペイン人の母との間に生まれたダブルである城田優。彫りが深く端正な顔立ちと190センチの高身長という恵まれた見た目。そして、俳優、歌手、演出家、監督、プロデューサーと活動の幅を広げ続ける才能の豊かさから、生まれながらにもった資質を存分に活かした天性のエンターテイナーという印象を受ける人もいるかもしれない。だが、その経歴を振り返ってみると、素晴らしい作品や才能のあるクリエイターとの出会いや縁を大切に育みながら、一歩一歩、着実に歩みを進めてきたことがわかるだろう。

 2003年にミュージカル『美少女戦士セーラームーン』の地場衛/タキシード仮面役(2代目)で、17歳で俳優デビューを果たした彼は、2005年には2.5次元舞台の人気に火をつけたミュージカル『テニスの王子様』に出演。2004~2008年までは若手俳優集団「D-BOYS」に所属し、ドラマ『ROOKIES』や『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』『ハケンの品格』などに出演。25歳を迎えた2010年にはミュージカル『エリザベート』に出演し、トート役で帝国劇場の舞台に立ち、芸術祭新人賞受賞。翌年の2011年にミュージカル『ロミオ&ジュリエット』のロミオ役を山﨑育三郎とWキャストで出演し、同年にはU名義で歌手デビュー、2015年にはドラマ監督、2016年にはミュージカルの演出家としてデビュー。2018年には舞台『ブロードウェイと銃弾』で菊田一夫演劇賞を受賞し、同年にキャリア初となるミュージカルアルバム『a singer』を発売すると、6年半ぶりにシンガーとしての活動を再開した。

 ミュージカルデビューからの15年の集大成ともいえるミュージカルアルバムから2年。2020年12月2日には、J-POPの名曲をカバーしたカバーアルバム『Mariage(マリアージュ)』をリリースした。前作が、彼がこれまでにどんな物語や役柄と出会ってきたのがわかる作品であったとするならば、本作は彼が10代の頃からどんな曲を聴き、歌ってきたのかがわかる1枚となっている。

 「ヒロイン」(back number)はオルガンが左右に揺れるオルタナティブR&Bマナーのサウンドで片想いしている“君”を思わせる女性コーラスが入っている一方、まだベットの中に一緒にいるはずの「I LOVE YOU」(尾崎豊)には男性コーラスのみで、やがてくる悲恋や孤独を想起させる。ドラムがブラシで4ビートを刻むジャズアレンジの「少年時代」(井上陽水)、ピアノとスナップのみのサウンドに静謐なエレクトロニカのようなSEが入る「even if」(平井 堅)、外出自粛期間中にSNSを通して交流が生まれたGLAY本人がリアレンジした「カーテンコール」(GLAY)、自身による多重コーラスを収録した「Butterfly」(木村カエラ)……。誰もが知っている楽曲ばかりだからこそ、彼がその曲に対してどんな解釈をし、シンガーとしてどう表現したいかがリアルに伝わってくるはずだし、どの曲も2020年、まもなく35歳になる今の彼にしか歌えない曲になっている。

 前作では、聴き手に元気や勇気を与え、夢を追う大切さを教えてくれたが、本作では彼の人柄そのものや内面が垣間見せる。明るくて自由奔放で、誰とでも仲良くなれる人懐っこさをもち、心から歌うことを楽しんでいる姿勢だけではなく、以前よりも柔和さが増し、セクシーさではなく、大人の艶のようなものも獲得している。アルバムの最後には、耳元で永遠の愛を誓ってくれるようなオリジナルのラブバラード「Mariage~君に贈る歌~」が収録されているが、いい意味でより“自分の世界”を漏らし始めているようだ。ミュージカルカバー、J-POPカバーを経て、今度は、城田優の内面をよりさらけ出し、その時の自分を刻み込んだオリジナルアルバムを聴きたいという気になっている。

■永堀アツオ
フリーライター。音楽雑誌「音楽と人」「MyGirl」、ファッション雑誌「SPRiNG」「Steady」「FINEBOYS」などでレギュラー執筆中。「リスアニ!」「mini」「DIGA」「music UP’s」「7ぴあ」「エンタメステーション 」「CINRA」「barks」「EMTG」「mu-mo」「SPICE」「DeVIEW」などでも執筆。

■リリース情報
12月2日(水)発売
Cover Album 『Mariage』
・初回生産限定盤 
SRCL-11493~4  ¥4,200+税
※CD+DVD、三方背ケース・写真集付
・通常盤
SRCL-11495 ¥2,880+税
※CD only 
<収録曲(曲順未定)>
even if(平井堅)
First Love(宇多田ヒカル)
Butterfly (木村カエラ)
カーテンコール (GLAY)
I LOVE YOU (尾崎豊)
指輪(Navy & Ivory)
少年時代(井上陽水)
ヒロイン(backnumber)
Pretender(Official髭男dism)
エピローグ(コブクロ)
Mariage~君に贈る歌~
(全11曲)
城田優ソニーニュージックホームページ(商品概要はこちらから)

■その他最新情報
ミュージカル『NINE』
〜12月13日(日)まで
梅田芸術劇場メインホール

映画『新解釈・三國志』
12月11日(金)公開

BS-TBS『Sound Inn “S”』
『NiNE』

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