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BUMP OF CHICKEN、25周年経てなお燃え続ける“炎”の煌めき

リアルサウンド

21/3/9(火) 12:00

 BUMP OF CHICKEN(以下、バンプ)が、結成25周年を迎えた。バンプは藤原基央によるソングライティングや歌声に注目が集まることの多いバンドだが、おそらく旧友であり同志であるこのメンバーでなければ彼の才能も最大限には活かされなかっただろう。彼らの演奏には技術力や表現力というような尺度では測れない「言葉に表せない何か」が宿っているように感じて、それが多くの人の心を掴んだのだと思う。そして音を鳴らすことを心の底から楽しんでいることが伝わってくる。それが魅力的なのだ。

 作品を出すごとにバンドの進化を感じ取れることも、彼らの魅力である。インディーズ時代の1stアルバム『FLAME VEIN』はシンプルで青臭い演奏ながら、勢いと若さに溢れていた。2ndアルバム『THE LIVING DEAD』は全編物語形式の歌詞で1枚の作品としても物語性のあるコンセプトアルバムを制作した。そしてメジャーデビュー後最初のアルバム『jupiter』では、より大衆に向けて作り込まれたポップな楽曲が増え、プロのバンドとしての高いレベルへと進化した。『ユグドラシル』ではその方向性にさらに磨きをかけ、ロックバンドとしての確固たる地位を築いた。いつしかバンプは邦楽ロックシーンを牽引するバンドになり、影響を受けたフォロワーバンドが続々と出てくるようになった。「邦楽ロックバンドといえばこういう音楽」という雛形を作ったとも言える。確実にバンプが登場しヒットする以前と以降で音楽シーンは変わった。

『FLAME VEIN』
『THE LIVING DEAD』
『jupiter』
『ユグドラシル』

 しかしそれ以降もバンプは進化し続けている。配信限定リリースされた「ray」では初めてフィーチャリングアーティストとして初音ミクを招いた。ロックバンドとボーカロイドを接近させたことは日本の音楽シーンにおいて大きな影響を与えた。2021年現在、ボカロ文化を経由したネット発アーティストのヒットが続いていたり、それらの音楽が邦ロックと親和性のある音楽になっていることにも繋がる出来事の一つである。

BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」

 また打ち込みの音やシンセサイザーの音も積極的に使うようになり、音楽性の幅を広げたことも注目すべきポイントだ。「虹を待つ人」ではシンセサイザーの音がバンドの演奏と溶け合うように組み合わさっている。「Butterfly」では打ち込みの音がリズムの要となっており、それによってバンプの個性を生かしつつも、今までとは違う新鮮さを感じる音楽になった。新曲やアルバムをリリースするごとに新しい挑戦をして進化し続けているのだ。2019年にリリースされたアルバム『aurora arc』はそれらの集大成的な音色の曲が多く、ロックとしてもポップスとしても新しさと高いクオリティを持った作品になっている。

「虹を待つ人」
「Butterfly」
『aurora arc』

 これらの新しい挑戦が成功したのも、4人の鳴らす音楽や大切にしていることの軸がブレていないからだ。初音ミクと一緒に歌っても、打ち込みやシンセサイザーを使ったとしても、どこからどう聴いてもBUMP OF CHICKENの音楽になる。むしろ外部の音を取り入れることで、バンドの演奏の味わいや個性を感じる。4人の信頼関係とブレない軸とそれに対する強い想いと自信があるから、結成25年目とキャリアを重ねても常に新しい挑戦ができるのだ。

 2月11日には新曲「Flare」をリリースした。現在活動休止中の直井由文を除く3人で演奏されている。近年のバンプの楽曲としては珍しく、音数が少なくシンプルな演奏で優しい音色の曲だ。シンプルな演奏だとバンドの根幹にあるものが際立つ。そこにはあらゆる進化や変化を経ながらも、『FLAME VEIN』の頃から変わらず確かに燃え続ける“炎”の煌めきがあった。やはり彼らの軸はブレない。大切なことを大切にし続けてくれたから、多くの人にとってバンプは大切なバンドになったのだ。

BUMP OF CHICKEN「Flare」

■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。‬ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
ブログ:https://www.ongakunojouhou.com/
Twitter:https://twitter.com/houroukamome121

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