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キャンディーズからBABYMETALまで 「アイドルとロック/メタル」の40年史を読み解く

リアルサウンド

14/3/4(火) 17:01

BABYMETAL – メギツネ – MEGITSUNE (Full ver.)

 初めて首にコルセットをした。BABYMETAL初の武道館公演の1日目、「赤い夜 LEGEND “巨大コルセット祭り” ~天下一メタル武道会~」で、コルセット着用を義務づけられた観客の1人になったのである。記憶に残る熱演だった。

 昨年末の幕張メッセ公演も見たが、あの時は巨大女神像や十字架への磔という演出が凄かった半面、骨バンドによるエア演奏が大半を占め、白塗りの神バンドによる生演奏は多くなかった。BABYMETALがヘヴィ・メタルであることを掲げている以上、大会場のライヴでは生演奏の音圧がもっと欲しいと思った。

 その点、武道館では魔法陣風のステージが中央に組まれ、炎が上がることはあったものの、大がかりなセットや演出はなかった。その代わり、神バンドが冒頭から登場し、“ライヴ”感を前面に出した。終盤でのYUIMETALのステージ落下にはひやりとしたが、ラストの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」で無事にまた踊っている姿を見て本当にほっとした。全体的には、SU-METALの真っ直ぐな歌声、YUIMETALとMOAMETALの可愛らしいパフォーマンスが光るよいライヴだった。翌日の武道館で、彼女たちが海外へ武者修行の旅に出ると発表されたことも喜ばしい。

 武道館といえば、ディープ・パープルが名盤『ライヴ・イン・ジャパン』(1972年)のジャケットに武道館公演の写真を使って以来、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの一つの聖地になっている。その場所にBABYMETALが出演したことに感慨を覚える。

 BABYMETALはアイドルとメタルの融合をコンセプトにしているが、日本の女性アイドルとメタルの関係を考えた場合、70年代のキャンディーズがパープルの「ブラック・ナイト」をカヴァーしていたことが思い出される。これは、洋楽への憧れがまだ強かった時代に、キャンディーズがあれこれ外国曲をとりあげたなかの1曲だった。

 女性アイドルの側が、ロックの要素を意識的にとりいれて成功した例で最初に思い浮かぶのは山口百恵だろう。「ロックンロール・ウィドウ」(80年)が典型的だが、彼女は作曲者にダウン・タウン・ブギウギ・バンドの宇崎竜童を迎え、ロック寄りのハードな曲で強い女を演じ、当時の他のアイドルと一線を画した。

 80年代には、本田美奈子がブライアン・メイ(クイーン)やゲイリー・ムーアの曲を歌ったほか、MINAKO with WILD CATSというガールズ・バンドを結成し、忌野清志郎作曲「あなたと熱帯」(88年)を発表した。また、小泉今日子がKYON2名義で高見沢俊彦作でハード・ロック調の「ハートブレイカー」(85年)を歌った。これらは、山口百恵的なありかたを受け継いでいた。

 アイドルが可愛い面だけではなく、ヤンキー的な顔、強さの一面を見せようとする時、ロック的でハードな曲調が重宝されてきた。

 一方、ヴィジュアルのおどろおどろしさ、サウンドの重さ、極端な速弾き、デス・ヴォイスなど、時代を経るにつれてメタルの過剰さをネタとして楽しむ傾向も出てきた。その過程で山瀬まみ『親指姫』(89年)という傑作も生まれた。これは、普通のアイドル歌手からバラドルにシフトした山瀬が、デーモン小暮、奥田民生などの作曲、筋肉少女帯に在籍した横関敦や三柴理などの演奏でロックを歌った内容だった。なかでも、山瀬まみ作詞の「かわいいルーシー」は飼い犬のうんこを歌った怪作で、アイドルと笑いとハード・ロックのミスマッチが面白いアルバムだった。

 企画ものでメタル要素を活用した成功例では、アニメソングをメタル化したアニメタルのシリーズがあり(97年から)、女性アイドルとの関連では、70年代後半にピンク・レディーで活躍したミーが歌った『アニメタルレディー』(97年)があった。

 以上のように一般的にいって、女性アイドルとロック、メタルの関係は、可愛いだけではない強さの象徴、あるいは、過剰な要素の取り込みに伴うユーモアという二つの面がある。例えば、ももいろクローバーZ「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」におけるマーティ・フリードマンのギター・ソロは、強さとユーモアの両面にまたがった響きに聴こえる。

 武道館公演直前にリリースされたBABYMETAL初のアルバム『BABYMETAL』には、これまでのシングルと3つの新曲が収められていて、やはり強さとユーモアの要素がみられる。「メギツネ」では「なめたらいかんぜよ」と夏目雅子か南野陽子かという強いセリフが飛び出す一方、パパに媚びを売る「おねだり大作戦」にヘヴィなリフが入るミスマッチ感は笑いを誘う。

20140305-baby-thumb.jpgBABYMETAL『BABYMETAL(通常盤)』(トイズファクトリー)

 BABYMETALの場合、アイドルの多面性における一要素としてメタルを導入するのではなく、ヴィジュアル、ステージ演出、サウンドの全面でメタル的なものを展開している。『BABYMETAL』には、X JAPAN的なツイン・リード・ギターの様式美、ラップ・メタル、デス・ヴォイス、派手なシンセを使ったピコリーモなどメタルの様々なヴァリエーションが並ぶなかに、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」など、いかにもなアイドル・ポップスと合体したメタルが混じっている。

 また、彼女たちのライヴでは定番であるスクリーンでの紙芝居では、「メタルは正義、そしてカワイイも正義」の名文句もあった。可愛さの代わりにメタルで強さや笑いの一面を見せるというのではなく、可愛いままメタルなのがBABYMETALなのだ。彼女たちは、悪夢、十字架、破滅、死、暗黒などおどろおどろしい要素でできたメタルのイメージを背負いながら、可愛いうえに前向きというアイドルらしさと両立させている。

 SU-METALはアイドルとしては優れた歌唱力を持っているが、それだけでは
BABYMETALは成立しない。アイドルとメタルの融合が可能になったポイントは、主にダンスやラップを担当するYUIMETALとMOAMETALの存在だろう。BABYMETALでは、神や悪魔など洋風のゴスの雰囲気を和風に置きかえた部分がある。キツネ様がいる設定をはじめとする民話的、昔話的な雰囲気、「メギツネ」などにみられるYOSAKOI的な曲調や祭りのかけ声のような合いの手。そうしたなかで凛とした声で熱唱するSU-METALが少女であるのに対し、中学生だが子どもっぽい声を発するYUIMETALとMOAMETALは、役回りとしては幼女だ。

 鬼ごっこを歌った「Catch me if you can」の「まあだだよ!」という子どもっぽい声を聴いていると、座敷童子のような童子神、子どもの精霊が連想される。この幼女性が、和風のゴスムードを高めている。

 そして、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」に代表される通り、BABYMETALはネガティヴで暗いモチーフを扱いながらも、それをポジティヴで明るい方向へひっくり返す。インタヴュー記事ではデス・メタルにひっかけて「です。」を「DEATH!」に置きかえるBABYMETALだから、YUIMETALとMOAMETALが歌う「4の歌」には、死の歌という含みもある。だが、同曲では「失敗の4」であると同時に「死ぬじゃない4」、「喜びの4」と歌われる。メタルらしく黒い衣裳を着ていても、アイドルらしく前向きなのだ。それが、彼女たちに悪魔的なものではなく、善き童子神を思い浮かべる理由でもある。

 強くあろうとする少女といたずらな童子神たちというBABYMETAL3人の今の構図は、年齢のこともあるし、長期のものではありえない。そのことは、彼女たちの側もファンも予感しているはず。だからこそ、限りあるであろう時間を精一杯駆け抜けてほしい。まずは、ヨーロッパでの活動に期待したい。

■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。

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