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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

BLACKPINKを支持する三つのクラスタ グループが生み出す熱狂の先に広がるもの

リアルサウンド

19/10/18(金) 19:00

 今年12月からの日本でのドームツアーを前に、BLACKPINKの周辺がにわかに騒がしくなってきた。まずは10月16日にリリースされた『KILL THIS LOVE -JP Ver.-』。同作は、今年4月にワールドリリース及びストリーミング配信されたEP『KILL THIS LOVE』の日本語バージョン5曲とオリジナル5曲の全10曲収録。10月18日にはリニューアル1回目の放送となる『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)3時間スペシャルに出演。2年前の時点でオリコン週間ランキングで1位(ミニアルバム『BLACKPINK』)を獲得し、昨年には単独ドーム公演(京セラドーム大阪)を成功させてきたにもかかわらず、意外にも同番組への出演は今回が初めて。すでに日本でもすっかりトップアーティストの一員として絶大な人気を誇るBLACKPINKだが、今回のリリースと番組出演を機に、さらにムーブメントは加速していくだろう。

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 日本でBLACKPINKを支持しているクラスタは、大きく三つに分けることができるだろう。一つは、どのクラスタよりも早くBLACKPINKに注目して、どのクラスタよりもBLACKPINKの活動の詳細に通じている熱心なアジアのポップミュージック・ファン。

 もう一つは、これは自分自身もそこに属していることになるのだろうが、欧米のポップミュージックやラップミュージック、つまりは洋楽(という言葉は時代遅れなのであまり使いたくないのだが)を中心に聴いているリスナーからの支持だ。今夏の『SUMMER SONIC 2019』(千葉・ZOZOマリンスタジアム・幕張メッセ)でもスタジアムメインのマリンステージを熱狂させたBLACKPINKだが、あの空間のマジョリティを占めていたのがこの層ということになる。そのクラスタにとってのBLACKPINKの他の女性グループにはない魅力は(もちろん完璧にグローバライズされたその高度なプロダクション、歌唱、ラップ、ダンスは前提として)、彼女たちが『コーチェラ・フェスティバル』のような世界でも最も注目されているフェスにチャイルディッシュ・ガンビーノやカニエ・ウェストやアリアナ・グランデやビリー・アイリッシュのようなアーティストと並んで出演しているだけでなく、その現場でとても自由で楽しそうに欧米のアーティストと交流をしていることだろう。10月15日現在、Spotifyで最もよく聴かれているBLACKPINKの曲が(「Kill This Love」を僅差で上回って)デュア・リパとのコラボ曲「Kiss and Make Up」であることに象徴されているように、彼女たちはただ世界を舞台に活躍しているアジアのグループではなく、今や世界のポップカルチャーの一部分となっている。

 そして、日本で最も多くのリスナーがいて、また一つ目のクラスタの予備軍でもある膨大な数の若年層を含んでいるのが、三つ目のクラスタ。日本のポップミュージックと韓国のポップミュージックを当たり前のように並列のものとして聴いている層だ。今回リリースされたニューアルバム『KILL THIS LOVE -JP Ver.-』、そして『ミュージックステーション 3時間スペシャル』で初披露される「Kill This Love -JP Ver.-」のターゲットのど真ん中にいるのは、その三つ目のクラスタと言える。すでにYouTubeでも6億1000万回以上再生されている2019年を代表する“大ヒット曲”が、こうして改めて日本語バージョンでリリースされて、熱心にプロモーションされる最も大きな理由は、まだ潜在的な需要がそこにあるからだ。

 もちろん、一つ目のクラスタに属していても二つ目のクラスタに属していても、今回の『KILL THIS LOVE -JP Ver.-』を手に取る人は少なくないだろう。個人的に、BLACKPINKの音楽に最も中毒性を覚えるのは、韓国語の破裂音を多く含む独特の響きによる抑揚のはっきりしたフローと、ラップミュージックのビートとの相性の良さからくる気持ち良さにある。そういう点では、表題曲の「Kill This Love -JP Ver.-」はオリジナルのフローとの変化がポイント。一方、カップリングのメロディ主体のEDMチューン「Don’t Know What To Do -JP Ver.-」やライブではシングアロングが起こりそうなミディアムチューン「Hope Not -JP Ver.-」は日本語バージョンになったことではっきりと親しみやすさが増している。また、「Kill This Love」同様にビート主体の曲ではあるものの「Kick It -JP Ver.-」は音の隙間も多く日本語詞がはっきりと聞き取れることもあって、日本語バージョンならではの魅力を称えている。

 今年、コーチェラで最高のステージを披露し、世界4大陸を巡るワールドツアーを成功させたBLACKPINK。正直、オリジナルのリリースから約半年後に『KILL THIS LOVE -JP Ver.-』がリリースされると最初に聞いた時は「今の彼女たちにとってこのリリースはどういう意味があるんだろう?」とも思ったが、少なくとも日本の(特に三つ目のクラスタに属する)オーディエンス、リスナー、視聴者にとって本作には大きな意味がある。今やBLACKPINKが生み出す熱狂の“エリア”の先に広がっているのは、アジアのポップミュージックの最前線だけではなく、日本の音楽シーンが見失って久しい世界のポップカルチャーの最前線なのだから。(宇野維正)

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