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三菱一号館が竣工した1894年を軸に約140点を紹介 『1894 Visions ルドン、ロートレック展』開幕

ぴあ

20/10/26(月) 18:00

19世紀末の華やかな喧騒が感じられるロートレックの作品群

三菱一号館美術館で、10月24日より、2021年1月17日まで『開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展』が開催されている。2010年に開館した三菱一号館美術館の開館10周年の最後を飾る展覧会だ。

三菱一号館美術館エントランス

1894年は、ジョサイア・コンドルが、日本初のオフィスビル三菱一号館を創建した年。本展はこの1894年という年に焦点を当て、ルドンとトゥールーズ=ロートレックを中心に、同時代に活躍した芸術家たちの活動を、日本人作家を含めて紹介していく。ルドン作品の豊富なコレクションで知られる岐阜県美術館の珠玉のコレクションを見られるのも同展の魅力の一つだ。

19世紀末の時代、印象派に影響を受けた若き芸術家たちは、それぞれの芸術を追い求めていた。展覧会は、1894年の少し前の美術から丁寧に追っていく。当時、モネやルノワール、ピサロら印象派と呼ばれる画家たちが台頭し、多くの芸術家たちに影響を与えていた。

左 エミール・ベルナール《ポンタヴェンの市場》(1888)、 右 クロード・モネ《草原の夕暮れ》(1888) 同じ年に描かれているものの、、大きく趣の異なる作品

ルドンやロートレックらも、印象派の画家たちの影響を大きく受け、独自の表現を模索し続けた。ルドンは木炭で描かれた黒い作品を描き続け、トゥールーズ=ロートレックはモンマルトルの喧騒を、そのころ勃興してきたカラー・リトグラフ(多色石版画)という新しい技術で表現するようになっていく。

ルドンが模索し続けた黒色の世界。この時代の画家たちは、新しい表現主題のひとつとして、版画に注目し積極的に制作していた。
ロートレックが幾度となく描いた、当時大人気のシャンソン歌手、アリスティッド・ブリュアン。音声ガイドでは彼の歌声も聴くことができる。
ロートレックのポスターには、熱狂的なファンが多く、宣伝文句や文字を入れたバージョンのほかに、保存版として同じ絵柄で文字のないものが制作されることも多かった

なお、三菱一号館美術館の至宝とも言われる《グラン・ブーケ》をはじめ、ルドンが美しい色に目覚め、次々に作品を発表していくのは、展覧会タイトルにもなっている1894年以降から。1894年の個展ではじめて色彩の作品を発表し、さらに独自の表現を追求していったという。

パステルや油彩など、ルドンはさまざまな画材を用いて、神秘的な作品を制作していく
ルドンは屏風など立体的な作品も手掛けている。
オディロン・ルドン《グラン・ブーケ (大きな花束)》。もともとはルドン最大の支援者、ドムシー男爵の発注で、城館の食堂にあった壁画と描かれたもの。

展覧会は、ルドンやロートレックのほか、タヒチの文化を木版画や油彩で表現しようと試みたゴーギャンや、スイス生まれの画家・ヴァロットン、そしてパリで学んだ山本芳翠の作品など、同時代の画家たちの作品も数多くならぶ。

オディロン・ルドン《グラン・ブーケ (大きな花束)》。もともとはルドン最大の支援者、ドムシー男爵の発注で、城館の食堂にあった壁画と描かれたもの。

三菱一号館が生まれた1894年がどのような時代なのかを多角的な視点で捉えることのできる展覧会だ。

なお、本展は当初は現代美術作家のルドンとトゥールーズ=ロートレック、そして現代美術作家のソフィ・カルを加えた「開館10周年記念1894 Visions ルドン、ロートレック展」として開催される予定であった。しかし、全世界的なコロナ渦によりソフィ・カルの出展は取りやめとなり現在の形になっている。展覧会会場内に掲載されているカルのコメントによると、2024年頃に三菱一号館美術館にてなんらかの展示が行われるようだ。こちらにも期待をしたい。

取材・文:浦島茂世

【開催情報】
『開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展』

10月24日(土)~2021年1月17日(日)、三菱一号館美術館にて開催
https://mimt.jp/visions/

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