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深川麻衣と高良健吾が語る嘘と真実「正直であることと、嘘をつかないことは違う」

ぴあ

高良健吾、深川麻衣 撮影:高橋那月

写真には、その人の人生が写っている。1月29日(金)公開の映画『おもいで写眞』は、写真がつなぐ人と人との絆、そして人生の滋味に心が豊かになる珠玉の佳篇だ。

メイクアップアーティストの夢に破れ、東京から故郷へと帰ってきた結子(深川麻衣)は、幼なじみの一郎(高良健吾)の勧めで、町に住む老人たちの遺影写真を撮る仕事を始める。遺影写真なんて縁起が悪いと最初は老人たちから受け入れてもらえなかった結子。しかし、初めての客となった山岸(吉行和子)が、遺影写真ではなく“おもいで写眞”と名づけたことから、結子はこの仕事の意義を見出していく。

「実はこのお話をいただく前から私は写真が趣味で。フィルムカメラを持って、よく撮影もしていました。写真の魅力は、自分が残しておきたいと思った瞬間をそのまま残しておけるところ。私のケータイのカメラロールは、友人たちや犬の写真でいっぱいです(笑)」(深川)

「僕も自分で撮ったりはしないけど、写真自体はいいものだなと思います。そのときその瞬間のその人が写っていることで、あとで見返したときに、ふっと撮ったときの空気や気持ちを思い出せる。何かを残しておきたくて、人は写真を撮りたくなるんだろうなと」(高良)

老人たちは、それぞれの人生の思い出の場所で記念の1枚を撮る。けれど、“おもいで写眞”の評判が広まっていくうちに、思い出を偽る老人たちが現れる。真実を写す写真に込められた嘘。その嘘が、この映画により奥深い味わいを与えている。

「たとえ事実じゃなくても、そこに真実が写っているなら、その写真はいい写真なんだと思います。正直であることは大切だけど、正直であることと、嘘をつかないことは違う。嘘ってズルいものだと思われているけど、中にはズルくない嘘もあって。たとえ嘘であっても、そこには他の人にはわからない何かがある。それがその人にとって大切で、その人にとって真実であるなら、誰にも批判なんてできない。人が信じているものを雑に扱っちゃいかんと、この映画を経て改めて思いました」(高良)

「私も、ついてもいい嘘はあるって考えているタイプです。映画の中で『目に見えないけど、そこにあったりいたりするものってあるんじゃないかな』という台詞が出てきますけど、世の中にはそんなふうに正しいとか間違っていると簡単に切り分けられないものがある。この映画は、そういう白と黒の間にあるものに目を向けるきっかけになりました」(深川)

撮影中、先輩である高良からアドバイスをもらったという深川。けれど、その具体的な内容はあえて自分の胸の中だけにとどめておきたいと言う。そんなところに深川の人柄がにじみ出ている。

「私がもらった言葉って、きっと高良さんが今までいろんな経験をした中で得たもので。それを私が自分の言葉にして言ってしまうと、高良さんが大切にしているものが間違って伝わっちゃう気がするんです。だから、何を言われたかは内緒。独り占めにさせてください(笑)」(深川)

「本当に大切にしたいものって案外誰にも言わないものだと思うんですよね。でも、さっきの話じゃないですけど、言わないからって正直じゃないわけじゃない。むしろ深川さんはすごく素直な人なんだなと、今の話を聞いて思いました。人によっては、ちょっと言葉を変えたりして、近いニュアンスで伝えようするところを、深川さんはあえてそうしない。そういう男前なところがある人なんです」(高良)

ロケ地は富山。風光明媚な町並みが、観る人の心を癒してくれる。

「撮影で使わせていただいた金屋町が鋳物の街と言われていて、もう町並みから風情たっぷり。撮影は去年の初夏だったのですが、軒先に風鈴が吊るされていて、風が吹くとちりんちりんって音が鳴るんです。その音がとっても綺麗で癒されていました」(深川)

物語は、結子が帰郷するところから幕を開ける。誰にとっても故郷は特別なもの。最後に、故郷を愛するふたりに地元自慢をしてもらった。

「私の地元は静岡なんですけど、緑がたくさんあって、緑茶がめちゃくちゃおいしいです。あと、人が温かい。自転車をなくしたり、落とし物をしても高確率で返ってきます。道を聞いてもみんな優しく教えてくれるし、人のぬくもりでいっぱいなので、ぜひ遊びに来てください」(深川)

「僕の地元の熊本も人の温かさでは負けません。自然も豊かだし、あとは何よりご飯がおいしい。市内の水道水は全部地下水だし、魚も肉も野菜も果物も、口に入れるものはどれも絶品。食のレベルの高さは、熊本の自慢ですね」(高良)

心に傷を負ったとき、そっと受け止めてくれるのが故郷だ。この映画もまた、そんな故郷のような大きな温かさで、観る人を包みこんでくれるだろう。

『おもいで写眞』
1月29日(金)全国公開

撮影:高橋那月、取材・文:横川良明

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