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清水尋也が語る、“FLOATING”する自由と責任 「選んだ道を後悔しないで生きる」 

リアルサウンド

20/7/24(金) 10:00

 『渇き。』『ソロモンの偽証』『ちはやふる』と話題の映画に相次いで出演し、ドラマ『anone』では、第11回コンフィデンスアワード・ドラマ賞新人賞を受賞。2019年には映画『貞子』、『パラレルワールド・ラブストーリー』、『ホットギミック ガールミーツボーイ』の好演が評価され第11回TAMA映画賞 最優秀新進男優賞を受賞。今年は『青くて痛くて脆い』『妖怪人間ベラ』『甘いお酒でうがい』と出演映画の公開が続々と控える実力派若手俳優・清水尋也が初となる写真集『FLOATING』を発売した。

関連:【写真】インタビュー中の清水尋也

 同作に収められた写真は、清水が留学先に選んだロサンゼルスで全編撮影された。留学中に書いた日記、そして20年の人生を振り返るインタビューと共に、素の清水を覗き見ることができる贅沢な1冊だ。リアルサウンドブックでは、同作について清水にインタビューを実施。撮影時の話、留学中に変わったという人生観について、さらに誕生日に行われたネットサイン会についても訊いた。(編集部)

■留学中のありのままの姿を写してほしい

――「まさか自分が写真集を出すなんて」と、思われていたそうですね。

清水:自分の写真集が出ることについての感想は……驚きと同時に、なんだかおもしろかったですね(笑)。家族も笑っていて、母親が「息子が写真集を出すなんて、ほんとウケるよね」と言うから、「それな」みたいな(笑)。でも、作品を観てすごく喜んでいましたね。ふだんから応援してくれているし、「ファンの方が喜んでくれる、いい写真集だと思う」と言ってくれて、ありがたいですね。

――ご自身は写真集をご覧になっていかがですか?

清水:自分の顔ばかり写ってるなぁ、と思います(笑)。当たり前なんですけど(笑)。でも、今しかない20歳、しかも貴重な留学期間を写真に残せたことは財産にもなるし、人生において良い経験になりました。

――写真集が店頭に並んでいる様子は、ご覧になりましたか?

清水:まだ実際は見られていないです。ちょっと怖いんですよ……自分の写真集だけ売れ残って山積みになっていたら、どうしようって(笑)。

――お気に入りの写真はありますか?

清水:ビーチの写真がすごく好きですね。ロサンゼルス感があって、夕焼けのグラデーションと、奥行きと。構図的にも、写真としてすごく素敵だなと思っています。

――撮影前に“こんな写真集にしたい”との思いはありましたか?

清水:事前に打合せもさせて頂いて、留学中のありのままの姿を写そうと、ドキュメンタリーっぽい写真集にしたいねと皆で意見が一致しました。

――イメージ通りの作品になった?

清水:100%“素”だと思います。撮られてるっていう意識がなかったんですよね。「どこで撮ろうか~?」と言いながら車を走らせて、「あそこら辺いいじゃん」と車を降りて撮影するような感じで。カメラマンの赤木(雄一)さんと会話していたり、ご飯を食べていたり……本当に素でしたね。

■留学で人生が“変わった”

――留学から少し時間が経ちましたが、振り返ってみていかがですか?

清水:一生、忘れないと思います。宝物ですね。1カ月以上親元を離れるのも初めてでしたし、色々な人に会って、いろんな価値観を共有して、ガラッと人生が変わったと思います。留学先でできた友達とは今でも連絡取り合っているし、一生つるんでいるんだろうなと。本当に一秒一秒が、僕の人生において重要なものになったと思います。

――具体的に、どんな風に人生観が変わった?

清水:変な気負いがなくなりました。日本にいると“芸能人”というフィルターをかけられるけど、僕は“芸能人”という言葉が好きではないんです。“公務員”とかと同じように、本来はカテゴリーの区切りでしかない言葉なのに、「芸能人だから」とか「芸能人なのに」と言われることにずっとハテナがあって。でも、ロサンゼルスでは「何やってるの?」と聞かれて「アクターだよ」と答えても「へぇ~、がんばれよ」みたいに、すごくフラットなんですよ。

 学校には警察官もいたし、タトゥーアーティストもいたし、フォロワーが300万人いる韓国の俳優もいました。でも、みんな同じ人間だし、すべてを取っ払っていいと思えたので、肩の荷が下りたというか。

――日本に帰れば状況は変わらないわけですが、それでも“生きやすくなった”と。

清水:そうですね。これまでは、自分自身がそれを意識していたところもあって。もちろん節度のある生活を心がけていますけど、過度な色眼鏡によって生まれる偏見みたいなものは、一切気にならなくなりました。僕は、僕の人生を楽しく生きる。役者である前にひとりの人間なので、人として充実していないと、仕事に精は出せない。楽しく生きることが、芸の肥やしにもなると思っています。お金を稼ぐためだけなら、ほかにも色々方法はあるんですよね。それじゃあ、なんで役者をやっているのかと考えた時、「お金ではないところに理由があるからだ」と、ロサンゼルスでふと思って。圧が抜けた気がして、そこから楽になりました。

――役者を続けている理由が気になります。

清水:今、やりたいからやっているだけですね。今はこの仕事がしたいので、良いお芝居を届けようと、毎作品とにかく全力でやっています。この先も、「やりたい」と思うだろうとは思っているけど、マネージャーさんには「やりたいことが変わったら辞めます」と言っています(笑)。

 ひとつのことをやり遂げるのは大事だし、素敵なことだけど、新しくやりたいことが出てくる可能性はゼロではないし、否定もしたくない。僕は、その時々の感受性に従いたいんです。“今日を幸せに生きる”を積み重ねていけば、10年後もきっと幸せに生きていけると思っているし、それが僕の理想。人生にセーブはないので、毎日毎日をいかに満足して生きていくかしかないじゃないですか。

――まさに“FLOATING”ですね。

清水:もちろん“10年後までに全国ロードショー作品の主演”とか、目標を立てるのはいいと思います。でも、それを決めちゃうと、5年後までにこうしないといけないから、3年後までにこうしないといけなくて、そのためには半年後までにこうしないといけないって、自然とプロセスが決まっちゃうんですよね。そうなると、自分がこの先歩む道が見えてしまうので、おもしろくないなと思っていて。計画性はないし、安定もないけど、目の前にある選択肢のどちらが魅力的かを考える。そして、選んだ道を後悔しないで生きることが責任だと思うんです。

 たとえば、僕は中高一貫の学校を受験したのですが、『アウトサイダー』(2018年/Netflix)に出演するには出席日数が足りなくて、学業を選ぶか作品を選ぶかの選択に迫られたことがあったんです。結果、『アウトサイダー』をとって、高校は転校をしたのですが、その時に後ろめたさはあったけど、それに押しつぶされたら“『アウトサイダー』(2018年/Netflix)に出ること”を選択した意味がなくなってしまう。僕には『アウトサイダー』で何かを得て、次につなげて、後悔しないようにしないといけないという責任がありました。結局、高校の友達とは今でも仲が良いし、先生も僕のことを応援してくれているし、学校を転校して良かったなと思っています。結果はそのとき次第だけど、悔いなく選択すれば、結果にも絶対に悔いはないはずだから。

■責任は自覚して行動する

――一見、自由な生き方ですが、そこには責任が伴うということですね。

清水:母親からも「好きなだけ遊んで良いよ。でも、やることはやりなさい」と、小さな頃からずっと言われていました。まさに自由と責任だと思うんですけど、何をするにも責任は伴うし、やることが大きければ大きいほど、責任も大きくなっていく。それは常に自覚して行動するようにしています。

――留学も、行きたいと思ってもなかなか行けるものではありませんよね。行動力がなければ、実現できなかったかもしれません。

清水:事務所には、「留学したい」ではなく「留学するので、お休みをください」と1年くらい前から話していて、「ここなら」と言ってもらえたので「じゃあ、そこで」とすぐに決めました。タイミング的にも、よい巡り合わせだったなと思っています。

 昔から、行動力があるというか、頑固なんです。母親にも「よくも悪くも、言うことを聞かない」と言われていました。まだまだ未熟ですけど、成人して大人の仲間入りはしたので、ひたすら駄々をこねているだけでは仕方ないことは理解しています(笑)。それでも変わらず、やりたいことをやらないと気が済まないというタイプではありますね。

――タイトルは、『FLOATING』の他にも候補があったのですか?

清水:生まれ変わるという意味で、『REBORN』は少し考えました。小学校6年生からこの仕事をしてきて、僕の覚えている記憶のほとんどは、この世界にいたんですよ。だからこそ留学で“役者”ではなく“ひとりの人間”として接してもらえる感覚が、とても新鮮だったんですよね。でも、今回得たものはそれだけじゃないし、しっくりこなくて。基本的には『FLOATING』が気に入っていて、ほとんど一択でした。我ながら、いいタイトルだと思っています!

――写真集内のロングインタビューでは、“一番古い、最初の記憶”からお話しされていますね。

清水:懐かしかったですね。でも、その思い出も“自分が見た景色の記憶”じゃなく、“客観的に見ている記憶”なんですよ。たとえば自分が父親に怒られている記憶も、親父が椅子に座っていて、僕がその横に立っているのを部屋の斜め上くらいから見ている感覚。そういうことが結構多い、変なヤツなんです(笑)。

――すごく役者さんらしい感じがしますよ。

清水:たしかに演じていても、どこかで客観的に構図を見ているというのはありますね。そうじゃないと、アドリブは生まれないので。アドリブはパッと出ることもあるけど、カメラに被っちゃいけないし、そこまでできなければプロではない。もちろん役の心情や主観もあるし、本番中に意識しているわけじゃないけど、今思えばそんな気がしますね。

――ロングインタビューを機に、半生を振り返ってみていかがでしたか?

清水:すごくいい人生だと思います。たくさん失敗もしてきたし、人を傷つけたこともあるし、逆に裏切られたこともあったけど、それ以上に楽しい思い出もたくさんあります。それにネガティブなことも、次につながる要素が絶対にあるので、総じてプラスだと思っているんです。傷つけられて心が痛んだら、自分の周りの人に同じ思いをさせないようにしようって。

 あとは、すごく出会いに恵まれていると思います。周りが自分のことをたくさん愛してくれるので、自分も自分が好きでいられる。だからこそ、その人たちをより笑顔にしたいし、幸せを分けたい。それがモチベーションになっているっていうのはありますね。

――ちなみに、今やりたいと思っていることの選択肢はある?

清水:直近は…特にはないですね。徐々にお仕事も再開してきて、新しい作品のお話も出てきているので、目の前の作品に集中しています。コロナや留学で仕事をしていない期間もあったので、その分、熱も入っています。芝居は好きでやっていることなので、“趣味は読書”という人が4カ月間、本を読んでいなかったのと一緒ですね。今はいっぱい現場を踏んで、いろんな人とコミュニケーションをとって、自分を高めていきたいという意識が強いので、ひたすらお芝居に力を注いでいきたいなと思っている次第です!

■ファンの人たちも含めて“清水尋也”

――21歳のお誕生日(6月9日)には、写真集のネットサイン会を開催されたんですよね。

清水:ありがたい限りですし、純粋におもしろかったです。ふだんのインスタライブとは、ちょっと違う感じでしたね。写真集を出すのも初めてなので、サインを書くというのもすごく新鮮でしたし、対面とは違う良さがあったと思います。色々な方が観てくれたので、ライブ感もあって楽しかったです。

――たくさんの方に応援されているという実感も?

清水:ありましたね。最初に写真集の話が出た時に、「僕じゃ売れないと思いますが……」と言ったんですよ(笑)。本当に需要がないと思っていたし、売れなかったら申し訳ないじゃないですか。でも、実はネットサイン会の予約時に、専用サイトのサーバーが落ちちゃったみたいなんです。心の底から自信がなかったので、好評で、反響があって、ありがたかったです……。

――人気を自覚する、良い機会になりましたね(笑)。

清水:本当に恵まれているなと思いましたし、自分が今までやってきたことは間違ってなかったんだと思えました。

――改めて、清水さんにとってファンの存在とは?

清水:常に、平等な存在だと思っています。僕は、ファンの人たちも含めて“清水尋也”だと思っているんですよ。ファンの方たちがいるから僕もがんばれるし、お仕事をもらえて、評価していただける。僕がいなかったら“清水尋也”はいなくなるけど、ファンの方がいなくなっても“清水尋也”はいなくなっちゃうんです。どちらも欠けてはダメで、両方があって“清水尋也”。離れたところにいる感じはしないし、仲間ですね。

(文・取材=nakamura omame/写真=髙橋慶佑)

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