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水瀬いのりは歩を進め始めるーーさらなるアーティストとしての発展を期待させた日本武道館公演

リアルサウンド

19/7/18(木) 18:00

 6月28日・29日、日本武道館にて『Inori Minase LIVE TOUR 2019 Catch the Rainbow!』の東京公演が開催。そのうち本稿で公演の模様をお届けするDay2は、持ち前のみずみずしい歌声や安定したボーカル力はそのままに、構成やステージパフォーマンスにおける“魅せ方”への意識への向上などで成長を感じさせる公演に。さらにはこの日だからこそ湧き上がってきた感情も素直にみせ、観る者の心を掴んでいた。

 ライブ全体としては、ツアータイトルにも冠した最新アルバム『Catch the Rainbow!』を軸にした公演。そのなかで今回は、数曲のブロックごとにコンセプトを定めての構成となっていた点が特徴。序盤「Kitty Cat Adventure」から「Future Seeker」まではダンスナンバーを中心に、歌以外にもダンスも交えて視覚面も含めてファンの心を掴み、続けて「君色プロローグ」「水彩メモリー」と聴かせるミドルバラードを並べる。元々豊富になっていた持ち歌のバリエーションを生でも披露。1stツアー以上に広くなった、アーティストとしての幅を生で提示してくれた。

 また、終盤「TRUST IN ETERNITY」から本編ラストまでの4曲にはストリングスの映える楽曲を固め、実際生のストリングス隊も従えての披露。コンセプトを定めることで音の面からもステージ演出のねらいが明確になるという、相乗効果を生んでいた。

 魅せ方という面では、ステージ演出以外にも水瀬のパフォーマンスも注目すべき点が多い。楽曲に合わせての身振り手振りや表情変化は昨年の1stツアーでも取り組まれていたが、中でも今回明確にその進化が見て取れたのが、ダンスである。「Kitty Cat Adventure」ではタイトル通り猫を連想させるような、じゃれつくような振付を愛らしさをもってまっとうしていたし、「ココロはMerry-Go-Round」でも客席に向けた指をくるくるっとさせてファンを引き込んだりと軽快なディスコチューンに合わせてファンを魅了。そのダンスを、公演中のMCで自ら “苦手”と口にしていた点から彼女の理想の高さのほどがうかがえたのは、筆者だけだろうか。その意識もあいまって、ダンスは今後の彼女にとって、生での表現の幅をより広げてくれる存在に発展する予感さえ感じられた。

 また、ステージ上で膨らんだ想いが思わずこぼれた点も、このツアーファイナルをかけがえのないものに。特に本編ラスト曲「harmony ribbon」では、後奏での美しいペンライトの輝きとファンの合唱とで胸に熱いものがこみ上げると、この日のなかでいちばん大きく自らも手を振り返す。その声のもとにマイクを向けて声を受け止めつつ、最後に自らもフェイクでそのなかに加わったことで、直前のMCで語った武道館に“温かい輪”を完成させたというのも実に美しい光景だった。その後アンコールで歌われた、自ら歌詞を手がけた「Catch the Rainbow!」で、ファンとともにいることで胸を弾ませ幸せを感じるという歌詞通りの世界観を現実のものにしていたというのも、実に素敵なことだったように思う。

 Wアンコールとして歌われたデビュー曲「夢のつぼみ」の中の〈未来に虹を架けよう〉というフレーズを、アルバムと公演自体をもって見事に回収。さらにその先に向けて、水瀬いのりは歩を進め始める。観る側としてもこの公演を通じて彼女のさらなるアーティストとしての発展への期待は自然と湧き上がってきたし、「TRUST IN ETERNITY」で2階席の高さまでリフトアップしてオレンジの光が灯るアリーナを見下ろしながら堂々と歌う姿からも、今後のシーンを引っ張っていってくれるであろう力強さも感じさせられた。MCで語った「またこの場所でみんなと一緒に歌いたい」という大きな夢も彼女なら叶えてくれるだろうし、その先にはさらに大きな場所で、この日と同じように私たちと想いを通じて繋がり、幸せな輪を形作ってくれるはずだ。

(写真=加藤アラタ、堀内彩香)

■須永兼次(すなが・けんじ)
アニメソング・声優アーティスト関係を中心に活動するフリーライター。大学の卒論でアニソンの歌詞をテーマにするほど、昔からのアニソン好き。現在は『リスアニ!』『月刊ニュータイプ』や『TV Bros.』等に寄稿。

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