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山崎育三郎×古川雄大「船頭可愛いや」の麗しき響き 『エール』が描く“夢を背負う”覚悟

リアルサウンド

20/6/26(金) 12:30

 歌をこよなく愛する“プリンス”久志(山崎育三郎)と、“スター”御手洗(古川雄大)がしのぎを削った『エール』(NHK総合)第13週「スター発掘オーディション!」。2人だけではなく、大型新人として期待されている寅田熊次郎(坪根悠仁)らが美声を披露したコロンブスレコードの新人歌手オーディションから一夜が明け、ついに合格者が発表される……と思ったら、なぜか第65話は鼻血を出している久志のアップで始まった。

 その発端は、容姿端麗で「帝都ラジオ」元代表取締役の父を持つ寅次郎が合格したこと。久志か御手洗、どちらかが選ばれると思っていた2人はコロンブスレコードに乗り込み、秘書の杉山(加弥乃)に納得がいかないと詰め寄っていた。その裏で、にこやかに話し込む寅次郎と廿日市(古田新太)。追ってきた裕一が怒る久志と御手洗をなだめていると、熊次郎が鼻で笑ったような口調で絡み出し、御手洗を一瞥して容姿を馬鹿にした。すると、あれだけ争っていたにもかかわらず、久志が御手洗をかばう。

 「人の痛みが理解できないやつに、歌を歌う資格があるのか」と問いかける久志の言葉には、かつて“男らしさ”を押し付けられ、傷ついてきた御手洗の境遇を理解しているかのようだった。しかし、逆上した熊次郎から久志は頭突きを受ける。冒頭で鼻血を流していたのは、これが原因だったのだ。

 そんな久志を見て、「お前は逃げなかったんだな」と鉄男(中村蒼)は重要なことを指摘。思い返せば、久志は子供の頃から逃げ足が速く、周囲の人間が気づけば忽然と姿を消していた。コミカルなシーンとして表現されていたが、鉄男が指摘するように、そこには厄介な出来事から身を交わし、自分自身を守る久志の“逃げの姿勢”が表れていたのかもしれない。しかし、流しの歌手として歌った酒場で子供から喜んでもらえた経験から、プライドを捨ててオーディションに臨んだ。本気で夢を追った久志は、切磋琢磨した御手洗が馬鹿にされることを許せなかったのだろう。

 結果としてオーディション合格は叶わなかったが、久志は廿日市から研究生としての契約を提案された。ただ、新人の鞄持ちや、デモ用仮歌を歌ったりと最初は雑用を行うことになる。いくら未来にデビューが待っているとはいえ、さすがに“プリンス”として音楽学校でスターの扱いを受けた久志が裏方の役割を果たせるはずがない。しかし、ライバルである御手洗の「あなたは選ばれたの、選ばれた以上輝かなきゃ」という言葉が断ろうとする久志の心を変えた。

 両親を亡くしたことで人生を振り返り、コーチとしてのキャリアをかなぐり捨ててでも最後のチャンスに賭けた御手洗。その歌声は見事なもので、存在感もあったが、廿日市は御手洗ではなく久志の才能を選んだ。歌手や作曲家、作詞家、小説家……『エール』には華やかな世界を目指す登場人物がたくさん登場するが、そこで成功できるのは一握りの人だけという現実がある。絶え間ない努力と才能が必要で、全員が夢を叶えられるわけではない。だからこそ、選ばれた人間は御手洗のように、夢を叶えられなかった人たちの想いも背負う覚悟が必要なのだ。御手洗の熱い気持ちを受け取った久志は必ずデビューすると誓い、2人はかたい握手を交わした。

 その夜、一文無しの御手洗は帰りの電車賃を稼ぐために、久志と共に酒場で「船頭可愛いや」を披露。放送終了後の『あさイチ』では、ハモリの練習を重ねる山崎育三郎と古川雄大の姿が映し出された。ゲスト出演した古川は「僕は自由自在にハモれないんですが、育三郎さんは瞬時にハモれる」と事務所の先輩である山崎の実力について言及。また、御手洗を演じる上で新宿のバーを訪れ、トランスジェンダーの方にインタビューしたことを明かした。仕草や振る舞いをそこで学んだ古川は、「御手洗先生で雄大を知った人は、普段の雄大をみると驚くと思う」と山崎に言われるほど、普段とのギャップがある御手洗役を熱演。御手洗が裕一に自分の過去を語ったシーンでは、“私たちみたいな人を救ってほしい。あなたにはその才能がある”という思いで裕一にエールを送ったという。

 そして、物語終盤。お茶の間で裕一家族と、久志が和やかなやりとりを繰り広げていると、ある若者が家を訪ねてくる。「僕を弟子にしてくれないでしょうか?」。そう頭を下げた若者の正体は、昨日6月25日に新たな出演者として発表された岡部大(ハナコ)演じる田ノ上五郎だ。彼は裕一と同様、小山田先生(志村けん)の作曲入門を読み独学で作曲を学んできた役柄。次週からは一旦、出演者の副音声と共に第1話から本編が再放送されるが、五郎が第14週以降の展開にどんな影響を与えるのか楽しみだ。(苫とり子)

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