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コロナ禍でのライブ活動、海外シーンの動向は? アーカイブ配信、無観客、バーチャル……新たな4つのアプローチを探る

リアルサウンド

20/6/29(月) 12:00

 コロナウイルスによる自粛期間が始まってから数カ月が経った今、多くの人々が、そしてミュージシャンや様々な音楽関係者が、「現場」を渇望している。国内外の大型音楽フェスティバルやツアーがほぼ全てキャンセルとなり、まもなく迎えようという夏フェスの時期のカレンダーも完全に白紙となってしまった。この状況下で、現在、世界中の音楽関係者がコロナウイルスの影響下におけるライブ活動の在り方について模索を続けている。今回は、現在行われている4つのアプローチを軸にその様子をまとめていく。

(関連:『PlayOn Fest (Music is NOT Cancelled)』の様子

1. コンサート・フェスティバルのアーカイブ配信
 自粛期間が始まりたての頃、ライブ・フェスティバルが軒並み中止となる中で、まずどうするべきか? という問いへの回答として実施されたのが、過去のコンテンツを使い、擬似的にライブ気分を味わうという取り組みである。国内でも3月時点で、LDHが所属アーティストのライブ映像を大量に公開しており、プレミア公開やコメント欄などのYouTubeの機能を活用することで擬似ライブを実現している。

 国外でも、エド・シーランやColdplayらを擁するワーナー・ミュージック・グループは、これらのコンテンツを使った「初のバーチャル音楽フェスティバル」として、”Music is Not Cancelled”と銘打った『PlayOn Fest』を4月25日から72時間にわたりYouTube上で開催した。

 この方式は、年内の国内外のフェスティバルがほぼ全てキャンセルになった代替案としても活用されており、米国の大型音楽フェスティバル『The Governor’s Ball Music Festival』は6月25日から26日にかけて、トラヴィス・スコットやポスト・マローンなどの過去のパフォーマンスをライブ・ストリーミングするが、これはあくまで2020年のフェスティバルとして開催されるのだ。同様に日本の『SUMMER SONIC』も『SUMMER SONIC 2020』と銘打って過去のパフォーマンスの配信を実施しており、恐らく同じくキャンセルとなった他のフェスティバル、例えば『コーチェラフェスティバル』などでも同様に行われることになるだろう。

2. 無観客コンサート・フェスティバルの開催
 ライブ活動が出来ないのは、狭い空間に観客が密集するため、あるいは合唱やボーカルのパフォーマンスによるウイルスの拡散を防ぐためである。ならば観客がいなければ良い。というシンプルな発想から、自粛期間に突入してからは、「無観客ライブ」という形式が広まるようになっていった。国内でもBAD HOPやsyrup16gといったアーティストがコンサート自体の中止を余儀なくされる中で、代替案として無観客ライブを行い、最近ではサザンオールスターズが大規模な無観客ライブを横浜アリーナで開催している。

 音楽ライブを含むアメリカのバラエティ・ショー(”The Tonight Show”や”Jimmy Kimmel Live”など)では、少人数で収録された自宅や屋外でのパフォーマンスを放送するようになり、ポーター・ロビンソンによる『Secret Sky Festival』や、EDCなどの大型ダンスミュージックフェスティバルを主催するInsomniacによる『Virtual EDC Las Vegas Livestream 2020』のように、中継を繋いだオンラインフェスティバルを開催するという試みも行われるようになる。国内でも『Music Unity 2020(MU2020)』で同様の取り組みが行われているが、フェスティバル形式の場合は多くの場合DJが主体となっているのが興味深いところだ。

3. バーチャル空間上でのライブパフォーマンス
 一方で、「そもそもリアル空間でライブが出来なくても、現代の技術があればバーチャル空間上でライブが出来るのではないか」という発想もあり、特にオンラインゲームを活用したライブパフォーマンスはその最たる例と言えるだろう。先日、トラヴィス・スコットのライブパフォーマンスを実現した『Fortnite』では、現在も”Party Royale”というモードを活用して、スティーヴ・アオキやヤング・サグ いったDJやラッパーのライブパフォーマンスを配信している。さらに今後は映画の上映会も予定しており、その第1弾として6月26日に『インセプション』などのクリストファー・ノーラン監督作品の上映が行われている。

 また、同じく巨大なプラットフォームである『Minecraft』でも同様の取り組みが行われており、4月11日には人気ロックバンドAmerican Footballをヘッドライナーに据えたオンライン・フェスティバル『Nether Meant』が開催された。誰もがオンラインゲームを遊ぶ現代において、このような試みはコロナウイルスが収束した後も広く行われていくのではないだろうか。

4. ソーシャル・ディスタンスを保った観客ありライブ
 とはいえ、画面越しのパフォーマンスを眺め続けていると、むしろ現場に行けない事の辛さが高まっていくというのも正直なところであり、それはアーティスト側にとっても同様である。ビジネス面でも厳しいところがあり、多くの利益を生んだと噂される『Fortnite』とのコラボレーションについても大物アーティストだからこそ実現出来るものであり、誰もが取れる選択肢ではない。物販などでの収入を考慮しても、可能な限り早く旧来のライブの在り方に戻る必要がある。そこで、今は多くのアーティストが感染リスクを抑えた上でいかに観客を入れたライブを実現出来るかを模索するフェーズに突入している。

 サイケデリックロックバンドのThe Flaming Lipsは、バルーンの中に入るパフォーマンスを行うことがあるのだが、先日、アメリカのテレビ番組『The Late Show with Stephen Colbert』内でのライブでは、なんとこれを活用して観客もメンバーも全員バルーンの中に入ることで、見事にソーシャルディスタンシングを保ち続けたライブを実現することに成功した。

 また、屋外の会場で車に乗ったまま映画を鑑賞する『ドライブインシアター』という形式を活用する例も増えており、例えば韓国ではK-POPのコンサートがこのドライブイン形式で行われるようになってきた。国内でも人気の高いIZ*ONEもドライブインコンサートを実現している。ファンも車のライトをサイリウム代わりに光らせることで場をさらに盛り上げており、この形式ならではのライブを楽しんでいることが分かる。

 世界最大手となるコンサートプロモーターのLive Nationもこのドライブインコンサート形式に大きな関心を抱いており、7月にはナッシュビルにて、ネリーらを招いた米国では初のドライブインフェスティバルとなる『Live from the Drive-In』の開催を予定している。

 しかし、ドライブイン形式は多くの車を収容出来る会場を必要とするため、非常に人気の高いアーティストか、フェスティバル形式でなければ開催することが出来ない。ライブハウスを拠点に活動するアーティストにとっては厳しい現状が続いている。ライブハウス内でソーシャルディスタンシングを保とうとすると、動員が大幅に減ることになり、利益を生むことが困難になるためである。

 この現状を打破する試みとして、韓国のインディーロックバンドであるSe So Neonは7月11日、12日の2日間、『X/X GUIDE LINE』と題したライブを野外会場となるSusan Sports Parkで開催する予定だ。

 「距離を置いた状態でも、情熱を届けることは出来るのだろうか?」という問いを据えて行われるこのライブは、ポスタービジュアルが示す通り、観客側のスペースが一人あたり1.5mおきに区切られており、観客全員がフェイスシールドを着用することが義務付けられている。興味深いのは、その状況自体をビジュアルやライブ自体のコンセプトとして設定していることである。このような見せ方をすることで、ファンもこの特殊なライブを「一つの作品」として触れることが出来る。厳しい状況をポジティブに転換した一つの例と言えるだろう。

 そして何より、来る9月には『SUMMER SONIC』を主催するクリエイティブマンによる、(実現すれば)コロナウイルス以降世界初となる、世界中のアーティストが集まる音楽フェスティバル『SUPERSONIC』の開催が予定されている。感染対策費用(場内のサーモグラフィーや消毒液などの設備投資)を補うためのクラウドファンディングは僅か数日で1000万円のゴールを達成しており、正直、直前まで開催可能なのか断定出来ない状態が続くことになるかとは思うものの、仮に無事に開催されることになれば、このフェスティバルがコロナ以降の音楽フェスティバルの一つの基準となるはずだ。

 すでに国内でも多くのライブハウスやクラブの閉店のニュースが相次いでおり、一刻も早くマネタイズ出来る状況を生み出さなければならないなかで、今後も様々な形式でのライブが行われることになるだろう。一人の音楽ファンとして、可能な限りそれらの試みをサポートすることで、以前のようにライブを楽しめる日まで耐え続けていきたい。(ノイ村)

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