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『Nizi Project』『I-LAND』……アジアから世界賑わすオーディション番組 SKY-HI『THE FIRST』にも期待

リアルサウンド

20/11/3(火) 12:00

 ラッパーのSKY-HIが、今年9月にマネジメント&レーベルの新会社「BMSG」を設立した。アーティストやアイドルが“自分のまま”でいられる空間を作りたいとの思いから、“Be My Self Group”の頭文字をとって名付けたという。SKY-HIは引き続きavexにアーティストとして籍を置きながら、新鋭レーベルのCEOとして二足の草鞋を履くこととなる。

 2020年11月現在の所属アーティストはSKY-HI自身のほか、実力派若手ラッパーとして近年注目を集めているNovel Coreの2人。そしてそれに続くのは、来年開催予定のオーディション『THE FIRST』で決まるボーイズグループになるという。クリエイティブファースト、クオリティファースト、アーティシズムファーストという3つのスローガンを掲げた『THE FIRST』は、これからの時代を担うボーイズグループを生み出すため、SKY-HIがアーティスト人生を懸けて臨むと宣言。さらにオーディション番組としての放映が決定しているというのだから、これは注目せずにはいられない。

 ところでアイドルグループのオーディション番組といえば、最も盛んな国が韓国だ。日本版も放送された『PRODUCE 101』シリーズ、TWICEを生み出した『SIXTEEN』、多くのスター歌手を輩出した『スーパースターK』や『K-POPスター』、WINNERの『WIN:WHO IS NEXT』にiKONの『MIX&MATCH』など枚挙にいとまがない。そしてこれらの番組から数多のスターが世界に羽ばたいていったのだ。

 まさに『THE FIRST』も世界に台頭するK-POPと並び、同じアジアから共に世界へ新しい風を巻き起こすグループを生み出すため企画されたもの。人知れず眠っている才能を発掘し、その才能が正しく輝ける場所を作るためSKY-HIが一肌脱いだのだ。本稿ではこれまで放送されてきたオーディション番組をいくつか振り返りながら、『THE FIRST』への期待を膨らませてみたい。

 まずは日本で大きな注目を集めた『Nizi Project』。K-POP界を代表する芸能事務所のJYPエンターテインメントとソニーミュージックが制作した共同プロジェクトで、今年1月から約半年に渡って放送された。「日本から世界へ発信できるガールズグループの誕生」を目標に、JYPの代表を務めるJ.Y. Parkが主体となって審査。デビューを目指して必死に練習を重ねる少女たちが、J.Y. Parkの厳しくも愛情のこもったアドバイスを受けながら成長していく姿は多くの視聴者の心を打った。そして1万人を超える応募者の中から最後まで勝ち残った9名が、ガールズグループ・NiziUとしてデビューの道をつかんだのである。

 これまでのK-POPオーディション番組と『Nizi Project』が大きく異なるのは、やはり日本市場をターゲットにした点だろう。オーディションへの応募条件に日本語で意思疎通ができることを掲げ、J.Y. Parkもこのために日本語を習得。番組の大半を日本語で進行し、それまで特にK-POPや韓国のオーディション番組に興味のなかった日本の視聴者層も多く獲得した。

 この番組の恩恵を最も多く受けたのは、ほかでもないJ.Y. Park自身だろう。現役アーティストとしても活躍する彼が、プロならではの的確なアドバイスを、愛と情熱をもって少女たちに届ける。そんな彼の姿は多くの視聴者を魅了し、今年10月には彼自身の日本で初のベストアルバムリリースが実現した。もちろんNiziUもプレデビューソング「Make you happy」のMVが公開から4カ月で1億5千万回再生を突破するなど、新人としては破格の人気ぶりを見せている。

NiziU 『Make you happy』 M/V

 続いては今年6月から9月まで放送されたボーイズグループのオーディション番組『I-LAND(アイランド)』。最近米ビルボードHOT100で初登場1位を記録したことが話題のBTSが所属するBig Hit EntertainmentとCJ ENMが手掛けた番組だ。設備の充実した大型施設“I-LAND”の中で合宿生活をしながらデビューへの道を競い合う内容で、通常よりも残酷なサバイバル方式が視聴者を常にハラハラさせた。

 14~22歳の志願者23名は、全員デビューできるのではないかと思えるほどの実力者揃い。しかしその中から“I-LAND”に行けるのは12名のみで、残りのメンバーは外にある格下の施設に移動することとなる。志願者たちは“I-LAND”を目指して数々のミッションを乗り越え、最終回で選ばれる7名のみがデビューへの切符を手にできる。

 『I-LAND』では施設の中で生活する姿がすべて映し出されるため、日常のハプニングや友情を育んでいく様子を見守るのも醍醐味のひとつだ。『Nizi Project』ではJ.Y. Parkをはじめとする審査員によって合格者が決まっていったのに対し、『I-LAND』では視聴者投票も取り入れていたため、個々人のキャラや人間関係などもデビューへの明暗を分ける。視聴者が感情移入すればするほど、それが各メンバーへの票に繋がっていくからだ。

 ちなみに今ではK-POPグループに外国人メンバーがいることが珍しくなくなったが、『I-LAND』にも日本、ベトナム、台湾から志願者が参加した。そして視聴者投票に至っては、なんと171カ国から投票が集まったという。これだけ見ても、いかに世界がK-POPに注目しているかが分かるだろう。

[I-LAND/최종회] 모두, 함께 아이랜드로 ♬Into the I-LAND Final Ver. 200918 EP.12

 最後はちょっと変わり種になるが、ラップサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY』を紹介したい。2012年より毎年下半期に放送されている長寿番組で、この10月にシーズン9がスタートしたばかり。毎年入れ替わる審査員は、全員が現役の人気ラッパーやヒップホッププロデューサー。そのためビジネス的な視点というより、純粋にアーティスト目線での「かっこよさ」「うまさ」が評価されていく。

 ラップバトルというと1対1のフリースタイルバトルを想像する人も多いかもしれないが、この番組では作詞能力やラップスキルをチェックする個人審査から始まり、チームワークによる楽曲制作、ソロステージ制作、サイファー対決、チーム戦のディスバトルなど様々なミッションで競い合う。そのため勝ち残るにはラップがうまいだけでなく、ステージ上で見せるカリスマ性やチームワークにおける協調性までもが必要になってくるのだ。

 『SHOW ME THE MONEY』ではプロアマ問わず全員が同じ土俵でバトルする。ラップを始めて間もない小・中学生、人気アイドルグループのメンバー、トレンドの先端にいるスターラッパー、キャリア20年超えのOGラッパーなど参加者の顔ぶれは実に多様だ。バトルの内容もアーティシズムとバラエティ性の両方を兼ね揃えているため、ヒップホップファンに限らない幅広い視聴者層から人気を集め、結果として同番組は韓国におけるヒップホップの大衆化に大きく貢献した。

[ENG] [SMTM9] PRODUCER CYPHER MV I 10월 16일 (금) 밤 11시 첫.방.송 EP.0 201016

 以上、系統の異なるオーディション番組を3つ振り返ってみたが、SKY-HIが主催する『THE FIRST』はどうだろうか。BMSG自体がこれまでの日本の音楽業界の常識を打ち破るために設立されたレーベルであることを考えると、これまでのオーディション番組とはひと味もふた味も違ったものとなるだろう。オーディション番組大国・韓国の成功事例を踏まえてどのような盛り上がりを見せてくれるのか、非常に楽しみである。

 『THE FIRST』への参加は11月30日まで募集しているとのこと。ボーイズグループのメンバーとしてSKY-HIと共に新たな時代を築きたい者は、ぜひ応募してみてほしい。

■鳥居咲子
韓国ヒップホップ・キュレーター。ライブ主催、記事執筆、メディア出演、楽曲リリースのコーディネートなど韓国ヒップホップにおいて多方面に活躍中。著書に『ヒップホップコリア』。 運営サイト「BLOOMINT MUSIC」/ Twitter

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