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VTuberユニット HIMEHINAが注目集める理由 笑いで幸せを与え、歌で愛を伝える2人の魅力に迫る

リアルサウンド

20/4/15(水) 12:00

 元日に放送されたNHK『バーチャル紅白歌合戦』への出場、昨年9月に東京・EX THEATER ROPPONGIで1stワンマンライブ『心を叫べ』を開催するなどで注目を集めている人気VTuberのHIMEHINAが、4月15日に待望の1stアルバム『藍の華』をリリース。VTuberには珍しいデュオスタイルで、ロック、ラップ、バラードと多彩な歌声を聴かせている。

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■YouTubeデビューわずか2年、急成長の2人組

 田中ヒメと鈴木ヒナの2人組VTuberユニット・HIMEHINAは、2018年初頭に開設したYouTube公式チャンネル『HIMEHINA Channel』をベースに活動を開始。ゲーム実況、トーク、歌配信などを行い、ハイテンションな2人のかけ合いで人気を集め、現在チャンネル登録者数は56万人を突破し勢いに乗る。特徴のある笑い声と髪型から“ゲラだんご”との異名を持つ田中ヒメ、クールながら田中に負けずとも劣らぬボケ力を発揮する鈴木ヒナ。一旦走り出したら止まらないアンストッパブルなトークは中毒者急増で、「マーン」や「鈴木刑事」などさまざまな名言も生み出した。

 そんなお笑いモードから一転、ユーザーを魅了する圧倒的な歌唱力もHIMEHINA人気の一因になっている。YouTube公式チャンネルを開設以来、ゲーム実況などの他に多くの歌も配信し、2018年8月に人気ボカロ曲のカバー「劣等上等」をアップするや、その圧倒的な歌の上手さとMVのクオリティの高さが話題になった。3DCGやモーチョンキャプチャーを駆使した質の高い映像と、個性的で表現力の高い歌声は、数あるVTuberのなかでも群を抜く。「劣等上等」の再生回数は現在1200万回を超えており、VTuber四天王の一人=キズナアイの「AIAIAI (feat. 中田ヤスタカ)」の1100万回超、輝夜月の「Dance With Cinderella !」の136万回超と比べても、人気とクオリティの高さが伺えるだろう。以降「太陽系デスコ」や「ロキ」などボカロ曲のカバーで人気が急上昇した。

 2019年には「ヒバリ」「ヒトガタ」といったオリジナル曲を発表している。ボカロ曲由来のトリッキーなサウンドと中毒性のあるメロディ、物語性のある考察しがいのある歌詞、そして異なる個性を持ちながら絶妙なバランスを誇る2人の歌声がファンのハートを掴んだ。その勢いで昨年9月に東京・EX THEATER ROPPONGIで1stワンマンライブ『心を叫べ』を開催し、年末にLOFT9Shibuyaに開催された『第1回VTuber楽曲大賞』では、リスナー投票により楽曲部門とMV部門で「ヒトガタ」が大賞に選ばれた。

■参加ミュージシャンによる生演奏で聴かせる『藍の華』

 このアルバム『藍の華』は、数多くの新曲を収録した他、「ヒトガタ」「ヒバリ」「うたかたよいかないで」「琥珀の身体」といった人気配信曲やインタールードなど全19曲を収録。層の厚い参加ミュージシャンによる生演奏で、アーティストHIMEHINAの全身全霊が詰め込まれたものになった。

 表題曲の「藍の華」は、2月にEX THEATER ROPPONGIで開催したワンマンライブ『田中音楽堂オトナLIVE 2020 in TOKYO「歌學革命宴」feat.鈴木文学堂』の最後にお披露目をしたアッパーのロックチューン。ソリッドなギターサウンドに絡むエモーショナルなボーカルが実に格好良く、随所に放り込まれるラップも楽曲のフックになっている。まるでバトルものアニメのテーマソングのようなアツさとキャッチーさは、アニメテーマソングを担当するのが夢というHIMEHINAらしい1曲だ。この楽曲にはi☆Risなど声優、アニソン、ゲームなどの音楽を手がける馬渕直純(G/All other instruments )、広瀬すず主演の映画『一度死んでみた』の劇伴への参加、SCREEN modeのライブサポートなど行う二家本亮介(Ba)、GRANRODEOのサポートなどを行っているSHiN(Dr)がレコーディングに参加。ロックスピリットが溢れまくった1曲になっている。

 NHK『バーチャル紅白歌合戦』でも披露した「ヒトガタROCK ver.」もしかり、もともと打ち込みで作られたK-POP風の人気ヒップホップナンバー「ヒトガタ」(957万回再生)が、バキバキのロックサウンドにリアレンジされた。参加ミュージシャンはAKB48などのレコーディングにも参加しているDORA/沢頭たかし(Gt)、The Super Ballのライブサポートなどで活躍するSETUNACREWSの安達さとし(Ba)、ジャニーズからハロプロまで多彩なレコーディングに参加する元SUPER EGG MACHINEの今村舞(Dr)が参加。圧倒的なサウンドにまったくひけをとらない、2人のボーカルのパワーが凄まじく、「ヒトガタ」の新たな魅力が開花した。

 水樹奈々の「Birth of Legend」や関ジャニ∞「月曜から御めかし」の作曲を手がけ、「ヒトガタ」のオリジナルバージョンのアレンジを手がけた南田健吾による「溺れるほど愛した花」も秀逸だ。切なく深遠な世界観のロックバラードで、ピアノとアコギのサビは、エモーションが爆発するような激しさだ。また同様にバラードの「夢景色」も聴き応えがある。JAM Projectのライブにも参加している西村奈央によるピアノをバックにせつせつと歌うヒメのボーカルは実にソウルフルかつ繊細で、知らなければあのゲラだんごと同一人物とは思えないだろう。

 またラストの「My Dear」は、まるで月灯りの下で歌っているような幻想的でしっとりした雰囲気。歌詞はネットという深淵なる世界に生まれ、多くの人の支えでここまで来られたことへの感謝が伝わってくる。今にも泣き出しそうに歌う2人の歌声は、きっと聴いた人の胸を掴んで離さないだろう。さながら「HIMEHINA Channel」のエンディングテーマで、配信を見て大笑いした最後にこの曲を聴きながら眠りにつけたらどんなに幸せだろうかなどと想像が広がる。

 笑いで幸せを与え、歌で愛を伝えるHIMEHINA。今月末から予定されていたZeppツアーは中止となったが、アルバム『藍の華』を聴けば、2人がいかにホンモノであるか分かるはず。昨年9月に配信リリースされた「うたかたよいかないで」の〈まってて まってて 未来で笑ってまってて〉という歌詞が今ふと頭をよぎる。2人の切なる願いと、この熱い気持ちを胸に抱いて、その日を心待ちにしたい。(榑林史章)

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