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花譜、「粉雪」カバーでも注目集める15歳バーチャルシンガー リスナーを魅了する歌声の特徴は?

リアルサウンド

19/10/11(金) 7:00

 バーチャルシンガー・花譜が、10月3日に公開されたダンロップ『ROAD TO YOU』シリーズの第3弾となる短編アニメーション『ROAD TO YOU ~記憶に舞う粉雪~』でレミオロメン「粉雪」をカバーしている動画公開後には、花譜に歌に対する感想がコメント欄に多数寄せられ、透明感がありながらも、生命力の強さを感じることのできる歌声が好評を博している。

参考:YuNiが語る、バーチャルシンガーを貫いて得た音楽活動の充実「Vと現実の架け橋になりたい」

 2Dもしくは3DCGの仮想アバターを用いて楽曲投稿を中心に配信を行うバーチャルシンガーの中でも、花譜は編み込みおさげにした淡いピンクの髪に、触角のある紺色のフードを被った印象的な姿だ。昨今増加するバーチャルシンガーの一人ではあるが、彼女が纏うミステリアスな雰囲気は、唯一無二の存在感を放っている。

■15歳のバーチャルシンガー・花譜とは?

 2018年10月18日、14歳だった花譜は、自身のYouTubeチャンネルに「#01」を投稿。同年12月6日にボカロP・カンザキイオリによるオリジナル楽曲「糸」を公開した。「糸」以降のオリジナル楽曲は、全てカンザキイオリが制作している。オリジナル楽曲「夜が降り止む前に」は、映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』の主題歌に抜擢された。

 また、花譜を優しく包み込んでいるのは、カンザキイオリのほか、運営チームの存在。彼らは、花譜公式Twitterアカウントのツイートにて、彼女とは13歳の時に出会ったこと、東京からは遠方に住んでいること、彼女の両親が顔出しすることに強い抵抗感を持っていたことを明かし、「バーチャルシンガー」としての形でなんとか音楽活動を開始することができた経緯を公表した(参考:花譜ファーストワンマンライブ「不可解」につきまして)。

 本来、バーチャルユーチューバーが実年齢を公表する風習はないことから、リスナーも花譜に生身の人間に近い感覚を覚えたのだろう。実際に高校受験を控えていた彼女は、オリジナル曲「忘れてしまえ」を最後に、約一カ月半、活動を休止。2019年3月20日に「#16「活花」-復帰&“雛鳥”予告編-」を投稿して復帰した。

 また、クラウドファンディングを行い、8月1日にワンマンライブ『不可解』を開催。クラウドファンディング開始から83秒で500万円の目標を達成し、結果4,000万以上の支援額を集めたうえに、ライブ当日は「#花譜不可解」が世界トレンド1位を獲得するなど、大きな話題を呼んだ。歌譜は、カンザキイオリをはじめとしたクリエイター、運営チーム、観測者(ファンの総称)のバックアップによって、今、急成長しているバーチャルシンガーなのだ。

■生身の人間を彷彿とさせるセンチメンタルな歌声

 例えば、美波、ずっと真夜中でいいのに。、ヨルシカを中心として、自身の鬱屈とした感情を、情緒に訴えるような歌声で届けるアーティストが注目を集めている。それらに共通するのは、指一本触れた途端に崩れてしまうような危うさのある、繊細な歌声でありながら、根っこの部分には、限りなく真っ直ぐに思いを伝えようとする強靭な意志がうかがえるところだ。花譜の歌声にもそれ同様の匂いがするのだが、15歳という年齢なだけに、全てが未成熟なものとして映りやすい。ゆえに、みずみずしい。例えば、淡々と語りかけるような歌詞が続く「不可解」。一番のAメロ〈そう思えばなんだか人間全てが汚く思えてくるな。〉から顕著になる、震えるような歌声は、彼女の魂から自然と湧き出たもののよう。取り繕うことのない歌声が波となり、リスナーの心に押し寄せ、巨大な感動を生み出すのだ。

 また、カンザキイオリのほかにも、Eveやずっと真夜中でいいのに。の楽曲MVを担当したアニメーション作家・Wabokuが、「夜行バスにて」のアニメーションを制作するなど、花譜はボカロ界隈との繋がりも強い。今注目を集めるクリエイターとのタッグは、ファン層を広げるとともに、奥行きのある作品を生むひとつの理由となる。

 歌を届けるバーチャルシンガー/バーチャルYouTuberは、、アイドル要素が強い傾向があるのに対し、花譜の場合はアーティスト色が強い。もともとは、シンガーソングライターとしてのデビューを考えていたところも大きいのだろう。バーチャルという形が、花譜にとってはひとつの手段に過ぎなかったとしても、そのあり方が彼女をより神秘的なものにしているのは紛れもない事実。特異な存在として、新たな表現/アーティスト像を見せてくれる可能性は大いにあるのではないだろうか。

 一般的に顔出しをしない歌い手シーンは、女性のようなハイトーンボイスを持つ男性、あるいは男性のようなイケメンボイスを持つ女性が活躍するなど、男女の垣根をなくした。同様にバーチャルシンガーシーンも、様々な事情を持った人の可能性や表現活動を広げるためのひとつの手段となっている。バーチャルでありながらも、生身の人間を彷彿とさせるセンチメンタルな歌声を放つ花譜が、シーンの常識、イメージをガラリと変える先駆者となるのは、時間の問題だろう。(小町 碧音)

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