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いま、最高の一本に出会える

『フローズン・ビーチ』 撮影:桜井隆幸

KERAの代表作『フローズン・ビーチ』を鈴木裕美が演出

ぴあ

19/7/17(水) 10:00

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の代表作『フローズン・ビーチ』が演出に鈴木裕美、そしてキャストに鈴木杏、ブルゾンちえみ、花乃まりあ、シルビア・グラブを迎えて新たに上演される。シアタークリエでの本公演の幕開けを前に7月12日~14日、杜のホールはしもと・ホール(神奈川県相模原市)でプレビュー公演が行われた。

KERAに第43回岸田國士戯曲賞をもたらし、1998年の初演、2002年の再演と、過去2度にわたりKERAが主宰を務めるナイロン100℃が上演してきた本作は、女たちが織りなす愛憎の物語。今回、〈KERA CROSS〉と銘打って、KERAの数々の作品を才気あふれる演出家たちがシアタークリエで連続上演していくシリーズ企画が始動。その第一弾として鈴木演出による『フローズン・ビーチ』が実現した。

舞台は大西洋とカリブ海の間にある、リゾート開発が進む島の別荘の一室。千津(鈴木杏)と友人の市子(ブルゾンちえみ)は、千津の幼なじみの愛(花乃)とその双子の姉・萌(花乃2役)の父の所有する別荘に遊びに来ていたが、そこへ旅行中だった愛と萌の継母の咲恵(シルビア)が予定よりも早く帰ってきて……。

『フローズン・ビーチ』撮影:桜井隆幸

登場人物5名で全員女性。だからこそ、個々のキャラクターとその関係性が重要になってくるが、4人の女優たちは、それぞれに様々な業や思いを抱えた20代、30代の女たちを見事に体現している。

近年、映像作品のみならず、舞台で高い評価を得ている鈴木杏に、お笑い出身のブルゾンちえみ、元宝塚トップ娘役の花乃にミュージカルで百戦錬磨のキャリアを誇るシルビア。それぞれに出自の異なる4人がそれぞれの持ち味をいかんなく発揮し、初演時に“サスペンス・コメディ”と形容された通り、女たちの憎しみ、怒り、殺意、謀略、愛情、女同士だからこその理解や共感が、随所に笑いを交えつつ描き出されていく。

『フローズン・ビーチ』撮影:桜井隆幸

特に、初演と再演で犬山イヌコ(※当時・犬山犬子)が演じた市子は、メンタルを患っての入院した過去を持ち、直情的で突飛な発言や行動で場をかき乱すトリックスターとも言える役回り。そんな“爆発力”や“違和感”が求められる役柄を、本作が舞台初挑戦となるブルゾンが堂々と演じており、市子がボソッと漏らすひと言や空気を読まない言動に客席は笑いに包まれる。

『フローズン・ビーチ』撮影:桜井隆幸

もうひとつ、本作の大きな見どころのひとつが、物語の背景として描かれる時代性の部分。第1場が1987年、第2場が1995年、第3場が2003年と“8年ごとの女たち”を描くのが本作の特徴であり、社会をにぎわせた芸能・文化ネタや世間を震撼させた事件などについての言及もある。

1998年の初演時、2002年の再演時には“未来”であった第3場の2003年は、現在から見ると16年前の過去の出来事。基本的にセリフや、言及される事件や人物名、その顛末などは初演時の脚本のままとなっており、これぞ初演から20年もの時を経ての上演ならではの面白さ(80年代パーマで登場し、時代ごとに身も心も急激な“変身”を遂げる千津を演じた鈴木杏を見ているだけでも笑いがこみ上げてくること必至!)。特に30代、40代以上の観客は現実の2003年との相違などを楽しみつつ、時代の流れ、4人の女たちの姿に様々な思いを抱くことだろう。

思い描いた理想どおりの人生を歩むことはできなかったかもしれないけど、かといってそれは、不幸とは限らない。殺したいほどの憎しみや拒絶が時間と共に赦しや理解へと形を変えていき……その先に女たちは何を見るのか――? 2019年という“未来”から決して色あせることのない女たちの生態をのぞき込んで見てほしい。

取材・文:黒豆直樹

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