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幻想の銀河 山本基×土屋仁応

20/6/28(日)

人の命が数字で報じられることに慣れてしまわないように。一つ一つの輪っかがつながって大きな渦巻きとなったような、山本基(もとい)が塩で描いたインスタレーション《たゆたう庭》を見て、そこにはそれぞれの人生があるのだとあらためて思った。山本は1994年には妹を、2016年には妻を病で亡くしている。此岸と彼岸に路(みち)をつくり、会期を終えた後は塩を海に還すインスタレーションは、記憶をたどる旅でもある。 その繊細かつ壮大な銀河を渡る鹿の群れ。初コラボレーションとなる土屋仁応(よしまさ)による木彫の《鹿》が、あらゆる境界を超える自由な存在として点在する。見晴台から見下ろすと、こちらを振り向いているように見えるものもいる。鹿に生者の祈りを託してみる。壁際には群れを見守る「鹿の王」もいる。 もともと天井に備え付けられていた鏡に合わせて、床にも鏡を設置して塩で描いているため、見晴台から見上げると永遠に続く銀河のように見える。また、壁には、鏡面にアクリル絵具で渦を描いた作品が掛けられ、覗き込むと鹿が見える。土屋が初めて制作した木彫の《月》も含め、壁面に映る影は森のよう。写真で見るより空間は小さいが、幻想が幻想を呼ぶ。他界した者も生者を支えているように思う。

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