Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

TENDRE『LIFE LESS LONELY』が放つ繊細で多面的な魅力とは 新井和輝(King Gnu)、Ryohu、三浦透子の証言などから紐解く

リアルサウンド

20/9/26(土) 12:00

 河原太朗のソロプロジェクト、TENDREの2ndアルバム『LIFE LESS LONELY』が9月23日にリリースされた。マルチプレイヤーとして、プロデューサーとして、セッションミュージシャンとして、シンガーとして。多方面で活躍を見せるTENDREの才気が迸っており、グルーブや歌の魅力がさらなる深みを帯びた作品に仕上がっている。前半と後半、アルバムの色合いが変わっていくのも大きな聴きどころだろう。

 そんなTENDREを囲むミュージシャンたちには、彼の音楽性・人間性はどのように映っているのだろうか。本作にも参加している新井和輝(King Gnu)、Ryohu、以前TENDREが楽曲提供を行ったこともある三浦透子からのコメント、そして音楽ライター・三宅正一のレビューを通して、『LIFE LESS LONELY』の魅力を紐解いていきたい。(編集部)

新井和輝(King Gnu)コメント

TENDREのTENDREらしさ、アイデンティティがさらに進化され詰め込まれた一枚。大それたそこらのアーティストより確実に身近に寄り添って聴き手の生活を彩ってくれる、TENDREの音楽はそのようなモノだと思います。

何よりベーシストである前にコンポーザー、コンポーザーである前にベーシストであるということを思い知らされる、ツボを押さえた絶妙なベースラインは、いちベーシストとして嫉妬すら覚えます。

この作品に関われたことに最大の感謝と敬意を。

Ryohu コメント

TENDREさんとは何度も曲を作っているので、今回もスムーズに制作できました。

彼の楽曲に参加するのは初めてだったので新鮮さはありましたし、アルバム通して最高なので、最初から最後までしっかり聴きましょう。

俺には、TENDREの魅力がもう一つ増えたような、そんな気がしました。

また一緒に音楽したいです。よろしく。

三浦透子 コメント

自然体で柔らかな雰囲気の中に感じる、核心と隙間をつく鋭い目線。その不思議な存在感に、ぐっと心を掴まれました。

楽曲提供していただいた「おちつけ」は、歌っていてなかなか難しい曲でもあったのですが、 完成してみると、TENDREさんのフィルターを通して聴いた自分の声がびっくりするほど自然で、それでいて新しい発見もいっぱいありました。私らしさの、ちょっと先の景色を見せてくださったんだと思います。ありがたい出会いでした。

新しいアルバム、耳に残る気持ちいいメロディの中にわくわくする刺激がたくさん散りばめられていて、最高です!

“ポップスとしての核心”を露わにする、歌の普遍性

 河原太朗のソロプロジェクト=TENDREの2ndフルアルバム『LIFE LESS LONELY』は、プロデューサーでありマルチプレイヤーとしても多方面で才気を発揮している彼が、シンガーソングライターである自身の核心を浮き彫りにした作品であるーー。いや、思えば2年前の1stフルアルバム『NOT IN ALMIGHTY』も、昨年リリースしたEP『IN SIGHT』もそういう性格を持っていたし、あるいは河原にとってそれは、「自らがソロアーティストとして日本語で綴るポップスを歌う」という意味でずっと対峙する命題と言えるのかもしれない。同時代を生きるマルチプレイヤーというと、たとえば現代ジャズを起点にフライング・ロータス主宰の<Brainfeeder>発でビートミュージックとしての意匠を拡張させていったテイラー・マクファーリンやルイス・コール、精緻なトラックメイキングを基軸にモダンなブラックミュージックを提示するフランスのFKJやオーストラリア出身でロンドンを拠点に活動するジョーダン・ラカイなど、さまざまな海外アーティストを想起できる。実際、河原もきっと彼らの作品群を愛聴しているだろうし、TENDREの今作においてもそれらとオンタイムで共振するグルーブを感じさせる。

 共有すべき音像や音色の潮流における一つのメルクマールとして、海外アーティストと時差のない“鳴り”をキャッチする。そのうえで河原が外部プロデュースやサポート仕事で出会い、自らがハブとなって音楽的な感度を交歓できる仲間たちと枝葉のように広がっていく繋がりを重んじながら、自らの声で歌うべきポップスを探求する。そうして、ほとんどの楽器を自らの手で演奏しビートメイクを含めたプログラミングも手がけてみせるTENDREの軌跡は、作品を重ねるごとにただ洗練され洒落ただけでは終わらない、もっと言えばライトにリスニングしようと思っていたリスナーを立ち止まらせる生々しさと、普遍性を両立した歌の強度を高めていっているように思う。

 「LIFE」に始まり、「LONELY」で終わる全10曲。立ち返るべき“孤”とまだ見ぬ“個”を見つめながら、『LIFE LESS LONELY』であると解くための歌を編み、リスナーにシェアする。本作は親密なムードの中でドラマティックな展開を見せていく楽曲が、互いに呼応するように並んでいる。ミックスを担当した小森雅仁と佐藤慎太郎の手腕も光る。

TENDRE – LIFE(Official Music Video)

 メロウでありながら説得力に富んだダイナミズムがあふれるグルーブに、〈永遠が在るなんて/考えも歌にさえもしなかった/鮮明さ 人生は〉〈終わりには敵わない/それでいい それまでが見せ場なんだ/月が見えた 朝日が見えた〉というフレーズが刺さってくる「LIFE」。続く「WINDY」からはオランダのポップマエストロ、ベニー・シングスとの共演から吸収し昇華したエッセンスをそこはかとなく感じ取ることもできる。Ryohu(KANDYTOWN)を客演に招き、AAAMYYYもコーラスを添える「FRESH feat. Ryohu」では、もはや黄金のトライアングルとも言うべき布陣で互いの成長と原点を分かち合い、フリーフォームなファンクネスとポップネスを融合させている。新井和輝(King Gnu)とツインベースで戯れるインストナンバー「DUO」では、ハイブリッドなジャズフィーリングを響かせていたり(とてもリモートで制作したとは思えない迫力に満ちている)、ビートコライトにShin Sakiuraを迎え、生のハイハットとリムを荒田洸(WONK)が提供した「JOKE」は、ボーカルチョップが印象的に施されたフューチャーファンクといった趣だ。

 ここまでの流れは河原が絶対的な信頼を置く仲間との共鳴によってポップスの色合いと振幅を広げているが、M6「NOT EASY」からラストの「LONELY」までは、TENDREのソウルミュージックを指し示すようにすべての音を自ら奏でながら、歌の深度をグッと増幅させていく。「NOT EASY」はどこか子守唄のような牧歌性があり、「HOPE」はクワイアに接近する旋律を帯び、「LADY」では孤独を慈しむようにエレピを引き連れ、「TAKE」はピアノの余韻と行間にも歌の心を滲ませるクラシカルなバラードだ。そして、ラストの「LONELY」では、本作の核心を象徴するようにTENDREの現在地を映し出す独立したポップスとしての核心をおおらかに解放している。

 そう、TENDREの歌はきっとここからさらに大きな地平に向かっていく。2ndフルアルバム『LIFE LESS LONELY』は、そんなことをどこまでもナチュラルな様相で感じさせてくれる音楽作品でもある。

(文=三宅正一)

■作品情報
TENDRE『LIFE LESS LONELY』
9月23日(水)発売 ¥2,500+税

<収録曲>
01 LIFE
02 WINDY
03 FRESH feat. Ryohu
04 DUO
05 JOKE
06 NOT EASY
07 HOPE
08 LADY
09 TAKE
10 LONELY

■ライブ情報
『TENDRE “REMIND”』
9月27日(日)20時〜配信スタート
詳細はこちら

・見逃し配信:10月3日(土)23時59分まで
・チケット販売期間:10月3日(土)21時まで
※チケット購入はこちら(ADV¥2,500/DOOR¥3,000)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む